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市街化調整区域内の分家住宅の敷地の評価について

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 財産評価基本通達(以下、「評価通達」)によれば、市街化調整区域内に存する宅地の評価方法は、その土地の固定資産税評価額に、国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて評価することは皆さんも御存じのことだと思います。
 それでは、市街化調整区域内に存する以下の2つの土地について、評価通達による評価方法を検討したいと思います(なお、評価倍率は1.1 倍とします)

●A地について
 A地はいわゆる「線引き前宅地」であり、この場合、評価通達による評価額は以下のようになります。
 10,000 千円 × 1.1 倍 = 11,000 千円
 なお、「線引き前宅地」とは特に法令上の規定はないが、線引き前から建築物の敷地で既存宅地以外の宅地をいい、第三者であっても同一用途の建て替えが認められます。
●B地について
 B地はいわゆる「分家住宅の敷地」であり、「分家住宅の敷地」とは、市街化調整区域において、継続して生活の本拠を有する世帯の二男、三男等が分家する場合の線引き後の宅地をいいます。「分家住宅の敷地」は建て替え等の法規制が厳しく、原則として、親族のみ建て替えが認められます。つまり、上記のA 地(線引き前宅地)に比べて市場性が著しく劣る土地といえます。
 この場合、評価通達によれば「分家住宅の敷地」だからといって、評価減される規定はありません。評価通達に定める市街化調整区域内に存する宅地の評価方法は、あくまでも、「その土地の固定資産税評価額に倍率を乗じる」と規定されており、市場性が著しく劣るという減価要因は固定資産税評価額で考慮されているという建前をとっています。
 従って、「分家住宅の敷地」を評価する場合、特に注意しなければならないのが、対象不動産(本件でいえばB地)の固定資産税評価額がどのようにして決定されているかです。つまり、固定資産税評価額に「分家住宅の敷地」という減価要因が反映されているか調査する必要があります。
 仮に、本件におけるB土地の固定資産税評価額に「分家住宅の敷地」という減価要因が反映されているならば、評価通達による評価額は以下のようになります。
 10,000千円 × 1.1倍 = 11,000千円
 これに対して、B土地の固定資産税評価額に「分家住宅の敷地」という減価要因が反映されていない場合はどのように評価をしたらいいでしょうか?
 この点、評価通達にこのような場合を想定した評価方法が明確に規定されていませんが、当事務所では以下のように評価できるのではないかと考えています。
 10,000千円 × (1-30%) × 1.1倍 = 7,700千円
 上記の算式の下線部分は30%の評価減をしたという意味になります。この30%の評価減の根拠は、平成16年7月5日付の「資産評価企画官情報 第3号」に規定する「市街化調整区域内の雑種地の評価」に記載された評価方法で、家屋の構造・用途に制限を受ける場合、一律に30%を「しんしゃく割合」として評価するのが相当であるとされています。
 当該「しんしゃく割合」については、評価通達27-5(区分地上権に『準ずる地役権の評価』)を踏まえて定められています。
 なお、繰り返しになりますが、上記の30%の評価減をした評価方法は、評価通達に明確に定められている評価方法ではなく、あくまでも、「市街化調整区域内の雑種地の評価」を準用しています。従いまして、当該評価方法を採用する場合は、税務調査官に説得力ある意見書等の提出がない場合、当該評価方法が「否認」されるリスクがあります。
 当事務所では、相続税土地評価等のアドバイスも行っております。特に本件のような「分家住宅の敷地」の減価規定については、市町村ごとに取扱いが異なっていますので、詳細な調査が必要となります。また、これ以外にも市街化調整区域の土地評価については、複雑な法規制が絡んでおり、広大地や建築不可、家屋の用途制限を受ける法規制がある場合、大幅な評価減ができる可能性があります。もし判断に迷われるような案件がございましたらお気軽にご相談ください。

執筆者情報

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沖田豊明

沖田不動産鑑定士・税理士事務所

埼玉県川口市にて平成11年に開所して以来、不動産オーナー様の相続案件に特化してまいりました。土地評価についてお悩みの税理士先生のための税理士事務所として、税務のわかる鑑定士として、同業者の皆様方と協業して、不動産オーナー様の相続問題解決に日々取り組んでおります。

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2019.06.13 16:21:09