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労働保険の申告書は何をどうすればいいの?

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労働保険申告書

あゆみ:こういうものが届いたんだけど。

ケン:労働保険の申告書ですね。あゆみ社長は初めてですよね。

あゆみ:これは何を申告するものなの?

ケン:以前、労働基準監督署に労働保険の「保険関係成立届」、ハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出したと思います。

あゆみ:そうそう、会社設立当初に税務署に提出する書類と一緒に郵送したわ。

ケン:これは労災保険と雇用保険の概算保険料を納付するための申告書です。労災保険は全額会社負担で従業員が勤務中に事故などで怪我や病気になったときに保険を申請するものです。雇用保険は一部を従業員自ら負担し、従業員が退職した後に次の職場が見つからない場合にはその方に失業保険が給付されます。従業員を雇ったら必ずしなければならない手続きです。

申告書の提出・保険料の納付

あゆみ:申告と納付はいつまでにしなければならないの?

ケン:今年度は6月3日(月曜日)から7月10日(水曜日)までに行うことになっています。納付する際は申告書に下に納付書がありますので、納付書を切り離さずに申告書と一緒に金融機関に提出し納付すると申告書も提出したことになります。納付が遅れると国から納付額が賦課され、さらに追徴金を納付額の10%分納めなければならないことになっていますのでご注意ください。なお、口座振替の方法でも納付できることとなっており、この場合の申告書は管轄の労働局や労働基準監督署等に提出することになります。口座振替による納付にする場合には口座振替申込用紙を厚生労働省ホームページ若しくは管轄の労働局等から入手し必要事項を記入して金融機関の窓口へ提出してください。

申告書の記載事項

あゆみ:申告書には何を記載しなければならないの?

ケン:はい、前年度の確定額と今年度の概算額です。まず、前年分(平成30年度分)に確定した従業員の給料の合計額とそれに対する確定保険料を計算し「⑧保険料・一般拠出金算定基礎額」欄と「⑩確定保険料・一般拠出金額」欄に記載します。そして今年度分の従業員の給料の概算額とそれに対する概算保険料を計算しに「⑫保険料算定基礎額の見込額」欄と「⑭概算・増加概算保険料額」欄に記載します。納付額は前年の概算額から確定額を差し引き、その金額に今年度の概算額を加算した金額です。確定保険料の計算については、同封の「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」を利用して計算すると便利です。

あゆみ:なるほど。そうすると私の会社は今年の1月に設立だから今回は今年の1月から3月までの確定額と今年の4月から来年3月までの概算額を納めればいいというわけね。

ケン:その通りです。

保険料の納付回数

あゆみ:私の会社は、今回保険料が多額になるわよね。これは1回で納付しなきゃいけないものなの?

ケン:概算保険料が40万円以上となった場合は3回に分けて納付することが出来ます。第1期の納期限は7月10日です。第2期は10月31日、第3期は来年の1月31日です。口座振替の場合の保険料の引き落とし日は第1期9月6日、第2期11月14日、第3期2月14日です。申告書に「⑰延納の申請」欄があり、3回に分けて納付する場合は納付回数を「3」と記載してください。申告書の下に「㉒期別納付額」欄がありますので、この欄で3回に分けた場合の納付額を計算することができます。

保険料の充当・還付

あゆみ:分かったわ。今回は去年の概算額がないから関係ないけど、来年の申告で来年の3月までの確定額が今回計算した概算額よりも低くなった場合はどうなるの?

ケン:はい、申告書の下の方に「㉚充当意思」という欄があります。こちらに労働保険のみ充当する場合は「1」、一般拠出金のみ充当する場合は「2」、両方ともに充当する場合は「3」と記載します。「1」または「2」と記載した場合は7月10日までに労働保険料または一般拠出金を納付しなければなりません。「3」と記載した場合は7月の納付はなしとなりますが、金額によっては第2期、第3期の納付はあります。3回の納付すべてに充当してもなお充当しきれない金額がある場合には還付となりますので、「労働保険料・一般拠出金還付請求書」を併せて提出すれば還付されます。

あゆみ:ところで、この一般拠出金って何なの?

ケン:石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てるため、平成19年4月1日より事業主が負担すると法律により決まっているものです。申告書名にも「石綿健康被害救済法一般拠出金」の文言があります。

あゆみ:分かったわ。申告書を作成している最中に分からなくなったらまた聞いていい?

ケン:はい、いつでもどうぞ。

執筆者情報

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清水 透

清水透税理士事務所 所長 税理士(登録番号104689)

平成18年2月税理士登録
大手税理士事務所に勤務しつつ、平成25年4月~平成28年1月の間みずほ銀行に出向。
平成28年2月独立開業
法人税・消費税・所得税・相続税の申告業務の中でも、法人オーナーに対する相続税約1億円を節税する株式承継の提案や個人の不動産オーナーに対する相続税約5,000万円を節税する提案などの経験。
また税制改正や事業承継の全国でのセミナー、全国のお客様に対し法人の株式承継対策や個人の方々の相続税対策の提案に毎日奔走中。
「気がつけばあなたも相続税?」2011.9(共著)出版
協力:株式会社実務経営サービス
https://www.jkeiei.co.jp/

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あゆみ:こういうものが届いたんだけど。ケン:労働保険の申告書ですね。あゆみ社長は初めてですよね。あゆみ:これは何を申告するものなの?ケン:以前、労働基準監督署に労働保険の「保険関係成立届」、ハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出したと思います。あゆみ:そうそう、会社設立当初に税務署に提出する書類と一緒に郵送したわ。ケン:これは労災保険と雇用保険の概算保険料を納付するための申告書です。労災保険は全額会社負担で従業員が勤務中に事故などで怪我や病気になったときに保険を申請するものです。雇用保険は一部を従業員自ら負担し、従業員が退職した後に次の職場が見つからない場合にはその方に失業保険が給付されます。従業員を雇ったら必ずしなければならない手続きです。
2019.06.07 16:01:20