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一般社団法人の制度基礎解説

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1 一般社団法人とは

 一般社団法人を理解するためのイメージは、紳士クラブです。
 クラブなので、構成員の決議で組織の運営について自由に決めることになります。また、解散することも自由に決定できます。
 人の集まりに法人格を持たせた一般社団法人には、構成員である社員が経費を負担する義務を定款で定めることができます(一般社団法27)。株主に経費の負担を求めることができない株式会社にはない特徴です。
 一般社団法人は、登記のみで設立することができます(一般社団法22)。社員が最低2人で設立が可能であり、社員となる資格には制限はなく、誰でも社員になることができます。
 また、株式会社と異なり資本制度を持たないことから、資本金の払込みを要せず、設立に際して金銭の拠出も必要としません。財産的基盤強化に資する趣旨で、基金制度が設けられていますが、任意の資金調達制度であるため強制されることはありません(一般社団法131)。
 そして、一般社団法人の一番大きな特徴は、持分がない、つまりオーナーのいない法人だということです。株式会社制度が、株主を通じた法人所有財産の間接支配という性格を帯びているのに対して、一般社団法人の所有する財産は、構成員たる社員の所有に属するわけではありません。
 その意味で、一般社団法人では、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは無効です(一般社団法11②)。一般社団法人には出資持分が存在しないので当然の規定ともいえますが、わざわざ条文が設けられた趣旨として、社員が、剰余金の分配を受けることを目標に、一般社団法人を運営すると、株式会社と同じになってしまうからで
す。このように、剰余金の分配を目的としない個性を非営利といいます。決して金儲けをしてはならないという意味ではありません。
 しかし実は、法の趣旨に反して、一般社団法人に蓄積した内部留保は、最終的に、社員に引き渡すことが可能です。解散により残余財産を誰に帰属させるかは、定款において定めることができますが、定款に定めがなければ、社員総会で決議します。この場合には、社員に残余財産を引き渡す決議も認められるので、仮に節税目的で設立した一般社団法人が蓄積した
財産も、最終的には取り戻すことも可能というわけです。

2 公益法人制度改革と一般社団法人

 主務官庁の許可によって設立された旧民法の公益法人についての抜本改革として公益法人制度改革が行われ、平成20年12月1日、以下の3つの法律が施行されました。
・「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」
・「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」
・「 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」
 これらの法律に基づき公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人、一般財団法人の設立、管理、運営等が規律されています。
 公益社団法人、公益財団法人はそれ自体を設立するのではなく、一般社団法人、一般財団法人が公益認定を受けることにより公益社団法人、公益財団法人となります。
 公益認定を受けない場合については、法人の目的には制限がなく、違法でない限りどのような事業を営むことも可能です。したがって、事業承継、家族の財産管理や節税対策への利用にも一切制限はありません。

3 機関設計

 一般社団法人の最低限の機関設計は、社員総会に加え、業務執行機関としての1人の理事です(一般社団法60)。社員は設立時には2人必要ですが、設立後は1人になってもかまわないとされています(一般社団法148四)。定款に定めることで、理事会、監事又は会計監査人を置くことができます。
 理事会を設置する場合と会計監査人を設置する場合には、監事を置かなければなりません(一般社団法61)。なお、大規模一般社団法人は、会計監査人を置かなければなりません(一般社団法62)。
 一般社団法人の機関設計は、会計参与の制度がないことを除くと株式会社と同じと考えていいでしょう。社員総会と、1人の理事による最低限の機関構成は、株式会社の株主総会と取締役1人という旧有限会社型の機関設計に対応しています。
 したがって、仮に夫婦で親族の財産管理を目的とする一般社団法人を設立するのであれば、旧有限会社型の機関設計で充分だといえます。
 そして、理事会を設置する場合には、3人の理事と1人の監事が必須になります(一般社団法65③)。これは、取締役会を設置する場合に監査役の設置が必要な株式会社と同様です。
 ただし、株式会社のように定款で定めることで任期の伸張ができる制度設計にはなっていないため(一般社団法66、67)、少なくとも理事改選により2年ごとに登記が必要となる点には注意が必要です。

このコンテンツの内容は、平成30年12月1日現在の法令等によっています。



資料提供(出典)

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書名:改訂増補/相続贈与・資産管理・事業承継対策に役立つ! 実践/一般社団法人・信託 活用ハンドブック

発行日:2019年1月31日
発行元:株式会社 清文社
規格:A5判 312頁

著者:税理士 白井一馬、税理士 内藤忠大、税理士 村木慎吾、税理士 濱田康宏、税理士 岡野訓、司法書士 北詰健太郎

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 一般社団法人を理解するためのイメージは、紳士クラブです。 クラブなので、構成員の決議で組織の運営について自由に決めることになります。また、解散することも自由に決定できます。 人の集まりに法人格を持たせた一般社団法人には、構成員である社員が経費を負担する義務を定款で定めることができます(一般社団法27)。株主に経費の負担を求めることができない株式会社にはない特徴です。 一般社団法人は、登記のみで設立することができます(一般社団法22)。社員が最低2人で設立が可能であり、社員となる資格には制限はなく、誰でも社員になることができます。 また、株式会社と異なり資本制度を持たないことから、資本金の払込みを要せず、設立に際して金銭の拠出も必要としません。財産的基盤強化に資する趣旨で、基金制度が設けられていますが、任意の資金調達制度であるため強制されることはありません(一般社団法131)。 そして、一般社団法人の一番大きな特徴は、持分がない、つまりオーナーのいない法人だということです。株式会社制度が、株主を通じた法人所有財産の間接支配という性格を帯びているのに対して、一般社団法人の所有する財産は、構成員たる社員の所有に属するわけではありません。 その意味で、一般社団法人では、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは無効です(一般社団法11②)。一般社団法人には出資持分が存在しないので当然の規定ともいえますが、わざわざ条文が設けられた趣旨として、社員が、剰余金の分配を受けることを目標に、一般社団法人を運営すると、株式会社と同じになってしまうからです。このように、剰余金の分配を目的としない個性を非営利といいます。決して金儲けをしてはならないという意味ではありません。 しかし実は、法の趣旨に反して、一般社団法人に蓄積した内部留保は、最終的に、社員に引き渡すことが可能です。解散により残余財産を誰に帰属させるかは、定款において定めることができますが、定款に定めがなければ、社員総会で決議します。この場合には、社員に残余財産を引き渡す決議も認められるので、仮に節税目的で設立した一般社団法人が蓄積した財産も、最終的には取り戻すことも可能というわけです。
2019.03.25 16:45:34