HOME コラム一覧 「働き方改革関連法」の内容を教えてください(1)

「働き方改革関連法」の内容を教えてください(1)

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今日は社会保険労務士・守田先生の訪問日です。

リエ「1947年に制定された労働基準法が70年ぶりに改正されると報道されていますが、“働き方改革関連法”の具体的な内容について、教えていただけますか?」

守田「今年4月から施行される“働き方改革関連法”は、大きく以下の2つの項目に分類されます。
1.労働時間法制の見直し
2.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
実施時期は、大企業と中小企業では異なります。また、残業時間の上限規制について、猶予または除外する事業・業務があります。これらについて、具体的に見て行きましょう。」

リエ「今までは、残業時間の上限は行政指導のみで、法律上の規制はないということですが、今後どのように規制されるのですか?」

守田「まず労働時間法制の見直しについて、法律では労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法が改正され、以下の8項目が制定されます。残業時間の規制は下記(1)のようになります。

(1)残業時間の上限の規制
 残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6ヵ月までです。

(2)年5日間の年次有給休暇付与の義務づけ
 使用者が労働者の希望を踏まえて時季を指定、年5日の付与が義務化されます。

(3)高度プロフェッショナル制度の創設
 高度専門職を労働時間規制から外し、新たな規制の枠組みが創設されます。制度導入には法律に定める企業内手続きが必要です。

(4)フレックスタイム制の拡充
 労働時間の調整が可能な期間(清算期間)が、1か月から3か月に延長されます。

(5)勤務間インターバル制度の導入(努力義務)
 1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。

(6)労働時間の客観的な把握の義務づけ
 裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が、客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務づけられます。

(7)産業医・産業保健機能の強化
 事業主から産業医への情報提供や産業医等による労働者の健康相談等が強化されます。

(8)月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ
 大企業では既に義務付けられていますが、2023年4月から中小企業の割増賃金率が引上げられます。(25%→50%)」

リエ「“労働時間法制の見直し”のご説明、ありがとうございました。次回は、“雇用形態に関わらない公正な待遇の確保”、及び改正法の実施時期と残業時間上限規制の猶予・除外業務等についてうかがいます。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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今日は社会保険労務士・守田先生の訪問日です。リエ「1947年に制定された労働基準法が70年ぶりに改正されると報道されていますが、“働き方改革関連法”の具体的な内容について、教えていただけますか?」守田「今年4月から施行される“働き方改革関連法”は、大きく以下の2つの項目に分類されます。1.労働時間法制の見直し2.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保実施時期は、大企業と中小企業では異なります。また、残業時間の上限規制について、猶予または除外する事業・業務があります。これらについて、具体的に見て行きましょう。」リエ「今までは、残業時間の上限は行政指導のみで、法律上の規制はないということですが、今後どのように規制されるのですか?」守田「まず労働時間法制の見直しについて、法律では労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法が改正され、以下の8項目が制定されます。残業時間の規制は下記(1)のようになります。(1)残業時間の上限の規制 残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6ヵ月までです。(2)年5日間の年次有給休暇付与の義務づけ 使用者が労働者の希望を踏まえて時季を指定、年5日の付与が義務化されます。(3)高度プロフェッショナル制度の創設 高度専門職を労働時間規制から外し、新たな規制の枠組みが創設されます。制度導入には法律に定める企業内手続きが必要です。(4)フレックスタイム制の拡充 労働時間の調整が可能な期間(清算期間)が、1か月から3か月に延長されます。(5)勤務間インターバル制度の導入(努力義務) 1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。(6)労働時間の客観的な把握の義務づけ 裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が、客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務づけられます。(7)産業医・産業保健機能の強化 事業主から産業医への情報提供や産業医等による労働者の健康相談等が強化されます。(8)月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ 大企業では既に義務付けられていますが、2023年4月から中小企業の割増賃金率が引上げられます。(25%→50%)」リエ「“労働時間法制の見直し”のご説明、ありがとうございました。次回は、“雇用形態に関わらない公正な待遇の確保”、及び改正法の実施時期と残業時間上限規制の猶予・除外業務等についてうかがいます。」
2019.03.11 17:24:45