用途変更の場合の消費税の取扱い
リエ「黒田さんに質問があるのですが………。」
黒田「どんなことですか。」
リエ「消費税についてお聞きしたいのですが。個人事業を営んでいる友人のAさんが戸建てを購入したので、今まで住居として借りていたマンションを自分の事業用の事務所として使用することになったのですが、その場合、その家賃は課税取引として仕入税額控除することができるのでしょうか。」
黒田「この場合は、契約当事者間で住宅以外の用途に変更した旨の契約変更を交わしているかで判断することになります。
消費税法において、住宅の貸付けが非課税となるのは、契約において人の居住の用に使用することが明らかにされている場合に限られています。今回友人のAさんが、居住用と定められた契約のまま、事務所等の居住用以外の用途に使用していたとしても、契約で用途変更しない限り仕入税額控除の対象とすることができません。」
リエ「居住用として契約している場合は、課税取引にならないのですか。私は思い違いをしていました。契約当事者間で居住用として使用するものとして契約をしていても、借りている側が実際に事務所として使用している場合は、その家賃は課税仕入に該当し仕入税額控除ができると思っていました。」
黒田「実体に基づいて課税するという原則からそう考えても無理はありませんが、これは住宅の貸付を非課税とする法令の関する基本通達に明記されていますので、これに反する取扱いをした場合は、税務調査等で指摘されてしまいます。」
リエ「そのようにならないためにも、用途変更した場合には、契約で使用目的を明らかにしておく必要があるのですね。」
黒田「家賃を仕入税額控除の対象にされたいのであれば、おっしゃる通り契約変更が必須となります。ただご注意頂きたいのは、一般的に用途変更に応じない貸主も多いですし、用途を変更するという合意のないまま借主が勝手に用途を変更したのが明らかになってしまえば、契約違反による退去を求められる可能性もあります。
さらに、家賃を支払う側で仕入税額控除を行うということは、受取る側が消費税の課税事業者であれば、その消費税納税額が増えるということですから、当然に家賃の金額を消費税分値上げされる可能性が高いです。そのようなリスクがありますので、仕入税額控除だけに捉われず慎重に行動されることをお勧めします。」
リエ「はい、今のお話を伝えます。」