事業報告を兼ねる有価証券報告書、関係省庁が記載例の試行案を公表
内閣に設置された日本経済再生本部は2018年12月28日、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組の支援について」を公表した。これは、会社法に基づく事業報告及び計算書類(以下「事業報告等」)と金融商品取引法に基づく有価証券報告書の一体的開示を行おうとする企業(企業名は明らかにはされていない)の試行的取組を、内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省及び投資家が連携して支援した結果を記載例として汎用的なものになるよう当該企業の個別情報を除いて作成したもの。
今回公表された一体書類の記載例は2種類あり、一つは有価証券報告書をベースとして、それに事業報告等の要素(従来、作成企業が事業報告等にのみ記載していた事項であり、事業報告等と記載を共通化するため追加したもの=記載例の網掛け部分)を取り込んだ「有価証券報告書兼事業報告書」(一体書類の記載例1【別紙1-2】)、もう一つは事業報告をベースとして、それに有価証券報告書の要素(作成企業が従来の有価証券報告書においてのみ記載していた事項であり、有価証券報告書と記載を共通化するため追加したもの=記載例の網掛け部分)を取り込んだ事業報告(一体書類の記載例2【別紙2】)となっている。
有価証券報告書をベースとする一体書類の記載例1は、有価証券報告書の項目と項目順ベースで事業報告等の記載内容を含む一体書類となっており、株主総会提出の事業報告等としても、有価証券報告書としても、使用することが可能。会社法上の株主総会招集通知発送期限までに開示することを想定している。なお、試行版を作成した企業からは、一体書類のページ数は、既存の有価証券報告書のページ数とそれほど変わらないとの感想も寄せられている。
一方、一体書類の記載例2では、事業報告等を、これまでの構成を大きく変えずに作成して、株主総会招集通知発送期限までに開示し、株主総会後に有価証券報告書の全項目の記載内容を追加して一体書類を作成し、有価証券報告書として開示する段取りを想定している。
なお、【別紙1-4】には一体書類の記載例1をベースにした一体書類作成スケジュール例が記載されており、一体書類を作成し終えるまでの具体的なスケジュール感が把握可能となっている。決算日後1か月を過ぎたあたり(3月決算の場合、5月上旬・中旬)の作業負担は現状よりも増加するものとなっており、働き方改革の流れの中、経理・開示担当部門の社内リソースを十分に確保できるのかどうかも、事業報告等と有価証券報告書の一体化を採用するかどうかの判断基準になりそうだ。