HOME コラム一覧 Q&A 投資目的で保有するビットコインを売却した

Q&A 投資目的で保有するビットコインを売却した

post_visual


Q&A 投資目的で保有するビットコインを売却した

Q 私は、総合商社に勤める会社員です。今年から投資目的で取引所に口座を開設し、ビットコインを保有しています。最近はビットコインの相場が高騰しているため、そろそろ売却を考えていますが、税務上はどのように扱われますか?

A 所得税法では、ビットコインの売却によって得た利益は課税所得として認識されます。継続的な取引ではなく、投資目的であれば雑所得として確定申告が必要となる場合があります。


解説

1.所得税法上の取扱い

 所得税法における所得とは、一定期間において納税者が稼得した経済的利益であるとされており、その所得の性格によって、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10 種類に分類されます。
そして、この10 種類の所得のいずれに該当するかによって確定申告をする際の計算方法が異なります。
 そこで、ご質問のようなケースにおいて保有するビットコインを取引所や販売所で売却した場合に、10 種類の所得のいずれに該当するかということですが、これについては国税庁が以下の回答を示しています。
 「ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。
 このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。」(国税庁タックスアンサー№1524)
 したがって、ご質問のような会社員の方が投資目的で保有するビットコインを取引所や販売所で売却した場合には、事業または事業に付随して行う取引ではないことから事業所得には該当せず、雑所得となります。
 では、ビットコインの売却による利益または損失をどのように計算するかですが、計算式は以下のとおりとなります。
  ビットコインの売却金額-ビットコインの取得価額
  =売却益(マイナスの場合は売却損)
 上記の計算式を具体的な事例に当てはめると、以下のとおりとなります。
 (1) 前提条件
  2017年7月に1BTCを購入(1BTC=30万円)
  2017年9月に1BTCを売却(1BTC=55万円)
 (2) 売却損益の計算
  55万円-30万円=25万円(雑所得の金額)
 上記の計算式でいう売却金額は、ビットコインを売却した金額となります。これに対して、ビットコインの取得価額はビットコインを購入した時の金額となります。
 ここで、ビットコインを1 度しか購入していなければ計算は単純ですが、仮にビットコインを複数回にわたって購入した場合に、取得価額はどのように計算したらいいのかという問題が生じます。
 複数回にわたって購入した場合における取得価額の計算方法については、国税庁個人課税課より平成29 年12 月1 日に「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」として公表されています。
 これによると、仮想通貨の取得価額は、「同一の仮想通貨を2 回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)」とされています。
 つまり、移動平均法を妥当としていますが、継続して適用することを要件に、総平均法も認められていますので、複数回にわたってビットコインを購入している場合には、移動平均法または総平均法のいずれかを用いて計算することとなります。
 繰り返しになりますが、総平均法は継続適用が要件とされていますので、ご注意ください。
 結果として、売却により利益が出た場合は雑所得に該当することとなりますが、会社員の方で1か所からのみ給与の支払いを受けており、年末調整が完了している場合には、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20 万円以下であれば、確定申告が不要になります。
 ただし、住民税においては給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20 万円以下であれば申告が不要となる制度はありませんので、住民税の申告は原則として必要になります。
 これに対して、ビットコインの売買により損失が出ていた場合には、同一所得内での損益の相殺は可能となりますので、他に年金等の雑所得がある場合には、ビットコインの売買による損失と年金等の雑所得については、相殺(いわゆる内部通算)が可能となります。
なお、給与所得との損益通算を行うことはできません。

2.消費税の取扱い

 消費税法において、消費税の課税対象とは原則として、以下の4 つの要件についてすべてを満たすものとされています。
 (1) 国内における取引であること
 (2) 事業者が事業として行うものであること
 (3) 対価を得て行われるものであること
 (4) 資産の譲渡及び貸付ならびに役務の提供であること
 ご質問の場合において、会社員の方が行うビットコインの売買となりますので、事業者が事業として行うものには該当しないことから、消費税の課税対象とはなりません。

資料提供(出典)

profile_photo

書名:事例で学ぶ ビットコインの会計・税務Q&A50選

発行日:2018年4月5日
発行元:(株)清文社
規格:A5判224頁

著者:税理士 延平昌弥/山田誠一朗/髙橋健悟/藤原琢也/田村光裕/山中朋文

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

税務解説集

記事の一覧を見る

関連リンク

取引相場のない株式と株価

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2018/img/thumbnail/img_04_s.jpg
Q 私は、総合商社に勤める会社員です。今年から投資目的で取引所に口座を開設し、ビットコインを保有しています。最近はビットコインの相場が高騰しているため、そろそろ売却を考えていますが、税務上はどのように扱われますか?A 所得税法では、ビットコインの売却によって得た利益は課税所得として認識されます。継続的な取引ではなく、投資目的であれば雑所得として確定申告が必要となる場合があります。
2018.11.07 16:01:50