「月額表甲欄適用の給与等に対する税額の電算機計算の特例等」
リエ「黒田さんこんにちは。いつもありがとうございます。今月の監査は終わりましたか? お手すきなら教えていただきたいことがあるのですが。」
黒田「リエちゃんこんにちは。ちょうど終わったところですよ。どうしたのですか?」
リエ「子育てがひと段落したので、パートで働きに出始めた親戚のお姉さんがいるのですが、彼女が自分で計算した給料と会社から支給される給料が違うと言っているのです。」
黒田「給料を間違えるのは問題ですね。どのように違うのですか?」
リエ「月の給料が8万8000円未満なので、源泉徴収税額表でみますと源泉所得税はかからないはずなのに、所得税が引かれているというのですよ。どうしてなのでしょうか?」
黒田「ああ、それは『月額表の甲欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算の特例等』を適用しているのではないでしょうか。」
リエ「その特例はどういう方が対象で、どのようなものとなりますか?」
黒田「給与計算を電子計算機などの事務機器により処理している場合で、月額表の甲欄適用者、つまりは給与所得者の扶養控除申告書を提出している人に支払う次の給与等が対象となります。
(1)支給期が毎月、毎半月、毎旬又は月の整数倍の期間ごとと定められている給与
(2)前月中に通常の給与を受けていない人に支払う賞与
(3)前月中の通常の給与の10倍を超える賞与となります。」
リエ「月額表で計算した場合とどのくらい違うのでしょうか。」
黒田「では、8万7000円で計算してみましょうか。基礎控除のみとしますね。国税庁のホームページに計算式が掲載されていますので、後ほど確認してみてくださいね。
その月の社会保険料等控除後の給与等の金額が8万7000円の場合、給与所得控除の額が5万4167円、基礎控除の額3万1667円となります。
税額の算式は (8万7000円-5万4167円-3万1667円)×5.105%となり、税額に10円未満の端数がある時は、四捨五入となりますので、税額は60円となります。」
リエ「本当ですね! 月額表とは一致しないのですね。」
黒田「税額表の税額は、その月の社会保険料控除後の給与等の金額を一定の階級ごとに区分し、その中間値を基にして計算しますが、この特例では、その月の金額そのものを基として計算されていたり、扶養控除等の数が7人を超える場合やその月の社会保険控除後の給与等の金額が86万円を超える場合の計算基準が違うので税額表による税額とは必ずしも一致しないんですよ。」
リエ「えっ、ではどちらかが損をするということになるのでしょうか?」
黒田「損得はありませんよ。最終的にその差異は年末調整で精算されることになりますから。ただ、この特例を適用することによって、年末調整時の過不足税額を抑えられたり、エクセルなどで比較的容易に給料計算ができるようになるようです。」
リエ「そうなんですね。でもわが社は市販の給与ソフトを使用しているのであまり関係ないですね。」
黒田「市販の給与会計ソフトでも選択できることもあるようなので、今度確認してみたらどうですか。そうそう、乙欄の方はこの特例の対象とはなりませんが、その場合の計算式も国税庁のホームページに掲載されているので、合わせて確認してみてくださいね。」
リエ「はい、わかりました。ありがとうございます。」