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外国人を雇用する際のポイント

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Q:当社では、慢性的な人手不足を解消するために、留学生を含む外国人を採用しようと考えています。外国人を雇用する際の手続きのポイントや注意すべき点を教えてください。

A:採用しようとする外国人の在留資格によって、就労資格の有無や就労可能な業務の内容に違いがあるので、まず、この点を確認する必要があります。また、実際に外国人を雇用する際には、雇用対策法に基づく届出等、日本人にはない特別の手続きが義務づけられています。その一方で、雇入れ後は、外国人にも日本人と同様の労働関係法令が適用されるほか、労働保険や社会保険の取扱いにも共通する部分が多いことに、注意が必要です。

1 就労資格の有無・内容の確認

 外国人の採用を検討する際には、まず、日本国内における就労資格の有無を確認する必要があります。就労資格は、入管法によって定められた一定の在留資格の取得が前提とされていますので、まずは在留カードを示してもらい、その外国人の在留資格を確認してください。
 在留資格が「永住者」「日本人の配偶者等」または「定住者」の場合は、従事する職務内容(職種)に制限はありません。また、在留資格が「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興業」「技能」「技能実習」のいずれかの場合は、従事する職務内容がその在留資格に該当するものであれば就労が可能です。
 これに対し、在留資格が「留学」や「家族滞在」の場合には注意が必要です。これらの場合は、その外国人が「資格外活動許可」を取得している場合に限り、同許可の範囲内でのみ就労が認められているからです。資格外活動許可の有無は、在留カードの裏面の「資格外活動許可欄」の記載で確認することができますが、この許可には通常、職種、就業時間や就労期間について一定の制限が付されていますので、その点にも注意が必要です。

2 留学生を採用する場合の注意点

 外国人留学生の在留資格は、おそらく「留学」であると思われます。すでに述べたとおり、この在留資格には原則として就労資格がありませんが、入管法に基づく「資格外活動許可」を地方入国管理局で得ている場合に限り、例外的に就労が可能とされています。ただし、この場合でも、通常は次のような制限つきの許可とされている点に注意が必要です。
 まず、就労することが可能な期間は、その留学生が、日本の学校に在籍している間に限られるということが重要です。就労する時間についても、「留学」活動の邪魔にならない範囲での就労のみが認められるという考え方なので、原則として1週について28時間を超えて働くことはできないという制限があります(どの曜日から1週を起算した場合でも常に1週について28時間以内である必要があります)。例外的に、在籍する教育機関の定める長期休業期間には1日8時間までは働くことが可能とされていますが、日本人とは異なる規制がなされている以上、外国人の就労時間は特に正確に管理する必要があるでしょう。また、就労することのできる業種としては、風俗営業が営まれている営業所で就労することは、制限されています。
 以上の規制に反し、雇主が資格外活動許可を得ていない外国人を就労させた、あるいは資格外活動許可の就労時間の範囲を超えて就労させた場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(入管法73の2)に処せられるおそれがあります。近年、資格外活動に従事する労働者の数が増加し、一種の社会問題化していることを踏まえれば、雇主はこれらの規制の遵守を徹底することが、より重要になっているといえます。

3 雇入れ手続きのポイント

 実際に外国人を雇用することになった場合には、その者の氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍、資格外活動許可の有無、住所、雇入れまたは離職に関係する事業所の名称および所在地、賃金その他の雇用状況に関する事項を確認して、これらの事項を公共職業安定所に届け出る必要があります。これは、外国人の不法就労を防止するために雇主に外国人の雇用状況届出を行う義務を負わせたもので、採用時だけでなく退職時にも適用されます(雇用対策法28①、雇対規10)。
この届出をしない場合、または虚偽の報告をした場合には、30万円以下の罰金に処せられることがありますので、注意が必要です(雇用対策法40①二)。

4 雇入れ後の法令の適用

 外国人の労働者を雇用した場合、労働契約法、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの労働保護法規は、在留資格の点で適法な就労か違法な就労かにかかわらず適用されます。また、法律上、国籍や人種による差別は厳格に禁止されており、外国人労働者は日本人の労働者と平等に取り扱うべきものとされています(労働基準法3)。同様に、職業安定法・労働者派遣法における罰則の適用もあることを押さえておきましょう。
 さらに注意を要するのは、雇主は外国人労働者に対しても、日本人労働者に対するのと同様に、安全配慮義務(労働契約法5)を負うことです。たとえば、工場内で作業に従事している外国人が工作機械で負傷をした場合、その事故が機械の操作方法や正しい作業手順を説明されていなかったことが原因で起きたときは、雇主に損害賠償責任が発生することがあるのです。この点に関し重要なのは、たとえば機械の操作方法や正しい作業手順が、その外国人労働者にとって実質的に理解できるような方法で説明されていたかどうかです。確かに、雇主には、就業規則や雇用契約書等を外国人労働者の母国語で作成する義務はありません。しかし、危険を伴う作業に外国人労働者を従事させる場合には、安全確保に必要な事項について、使用言語に留意した説明を行うことや、労働者の母国語を用いたマニュアルの整備をすることなどが必要となるでしょう。

5 労働保険・社会保険等の取扱い

 労働保険・社会保険等についてはどうでしょうか。
 まず、労働保険(労災保険および雇用保険)について説明すると、労災保険は適法な就労か違法な就労かにかかわらず適用されます。雇用保険についても、雇用関係の終了と同時に帰国することが明らかな者を除き、在留資格のいかんを問わず原則として被保険者として取り扱うこととされているので、基本的に日本人の労働者と同様の手続きをとることが求められています。また、社会保険(厚生年金保険および健康保険)についても日本人同様の取扱いが要求されます。ただし、国民年金および国民健康保険は、加入について居住に関する要件が加わりますし、年金は、そもそも被保険者たる期間が長期にわたって要求されるので、実際上は、外国人の労働者には適用されない場合も多いと考えられます。

 このコンテンツの内容は、平成30年1月1日現在の法令通達によっています。

資料提供(出典)

書名:中小企業必携 労務対応マニュアル

発行日:2018年2月5日
発行元:株式会社 清文社
規格:A5判/304頁

編著者:リソルテ総合法律事務所

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2018.07.18 17:53:26