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遺言と異なる遺産分割は可能か

相続
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旭課長「黒田さんに聞いてもらいたいことがあるのですが、いまお話ししても大丈夫ですか。」

黒田「はい、どんなことでしょうか。」

旭課長「友人から相続に関する相談をされまして、その内容が遺言と異なる遺産分割が可能なのかと聞かれまして、返答に困ってしまいました。」

黒田「なるほど。」

旭課長「友人の話だと、遺言書に記載のないその他の財産を長男(友人)に相続させる旨の公正証書遺言が残されていたそうですが、遺言書に記載のないその他の財産を調査したところ、多額の預貯金があることが判明したそうです。友人は、その財産を相続人間で分割することを提案したところ、相続人全員が同意してくれたそうです。この場合、遺言と異なる遺産分割は可能でしょうか。」

黒田「遺言と異なる遺産分割を行うのは基本的に可能です。ただ遺言の内容によって注意が必要です。まずその遺言の内容が『特定遺贈』なのか『包括遺贈』なのかによって、手続きがことなります。」

リエ「『特定遺贈』と『包括遺贈』とどう違うのですか。」

黒田「『特定遺贈』というのは、例えばこの土地はAさんに、別の土地はBさんにといったように、特定の遺産を特定の人に譲り渡す、という形の遺言に基づいて遺産を与えることです。そして『包括遺贈』というのは、全ての遺産の3分の2をAさんに、3分の1をBさんに、といったように、遺産を割合で指定して譲り渡すことです。今回のケースは『特定遺贈』のケースだと思われます。その場合は、(1)遺言により遺産を取得するよう指定された者(受遺者)と、相続人全員の同意があること、(2)遺言で遺言と異なる遺産分割を禁止していないこと、(3)遺言執行者の同意を得ること、といった要件を満たすことができれば、遺言内容と異なる遺産分割は可能です。」

旭課長「今回のケースは『特定遺贈』で間違いないと思いますし、それらの要件も満たしていると思いますが、何か手続きが必要ですか。」

黒田「受遺者の同意というのは、言い換えますと遺言により遺産を取得する権利を放棄することを、他の受遺者や相続人に対して意思表示することです。後々の争いを防ぐ意味で覚書や内容証明郵便等で明確にしておくことをお勧めしますが、法令等で手続き方法が決まっているわけではありません。そして相続人全員の同意というのは『遺産分割協議書』で明確になると思います。次の遺言で遺言と異なる遺産分割を禁止していないこととは遺言書で明らかになりますので、遺言書にそういった記述がなければ問題ありません。最後の遺言執行者の同意を得るというのは、厳密には要件とまではいえませんが、遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者が行う相続財産の処分、その他遺言の執行を妨げる行為をすることができないとされているため、遺言執行者の合意を得ておかないと、相続人の知らないとこで遺言通りの名義変更等が行われることも想定されることから、二度手間を防ぐ等の意味で遺言執行者の合意を得ておくことをお勧めします。」

旭課長「今回の私の友人のケースでは、そもそも受遺者=相続人だと思いますし、遺言執行人がいるということも聞いていませんので、この場合でしたら、遺産分割協議書があるだけで、受遺者と相続人の合意があったことが明らかになり、先程の要件全てを満たすと思いますがいかがでしょうか。」

黒田「遺産分割協議書に相続全員が遺言を確認済である旨の記述はあったほうがいいかもしれませんが、恐らくは仰る通りかと思います。」

リエ「ちなみに『包括遺贈』だと何が違うんですか。」

黒田「基本的な流れは同じですが、『包括遺贈』を放棄するには『相続放棄』と同様に、原則相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所における手続きが必要になります。この点が大きくことなります。」

旭課長「なるほどわかりました。今教えて頂いたことを友人に説明してみます。ありがとうございました。」

執筆者情報

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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旭課長「黒田さんに聞いてもらいたいことがあるのですが、いまお話ししても大丈夫ですか。」黒田「はい、どんなことでしょうか。」旭課長「友人から相続に関する相談をされまして、その内容が遺言と異なる遺産分割が可能なのかと聞かれまして、返答に困ってしまいました。」黒田「なるほど。」旭課長「友人の話だと、遺言書に記載のないその他の財産を長男(友人)に相続させる旨の公正証書遺言が残されていたそうですが、遺言書に記載のないその他の財産を調査したところ、多額の預貯金があることが判明したそうです。友人は、その財産を相続人間で分割することを提案したところ、相続人全員が同意してくれたそうです。この場合、遺言と異なる遺産分割は可能でしょうか。」黒田「遺言と異なる遺産分割を行うのは基本的に可能です。ただ遺言の内容によって注意が必要です。まずその遺言の内容が『特定遺贈』なのか『包括遺贈』なのかによって、手続きがことなります。」リエ「『特定遺贈』と『包括遺贈』とどう違うのですか。」黒田「『特定遺贈』というのは、例えばこの土地はAさんに、別の土地はBさんにといったように、特定の遺産を特定の人に譲り渡す、という形の遺言に基づいて遺産を与えることです。そして『包括遺贈』というのは、全ての遺産の3分の2をAさんに、3分の1をBさんに、といったように、遺産を割合で指定して譲り渡すことです。今回のケースは『特定遺贈』のケースだと思われます。その場合は、(1)遺言により遺産を取得するよう指定された者(受遺者)と、相続人全員の同意があること、(2)遺言で遺言と異なる遺産分割を禁止していないこと、(3)遺言執行者の同意を得ること、といった要件を満たすことができれば、遺言内容と異なる遺産分割は可能です。」旭課長「今回のケースは『特定遺贈』で間違いないと思いますし、それらの要件も満たしていると思いますが、何か手続きが必要ですか。」黒田「受遺者の同意というのは、言い換えますと遺言により遺産を取得する権利を放棄することを、他の受遺者や相続人に対して意思表示することです。後々の争いを防ぐ意味で覚書や内容証明郵便等で明確にしておくことをお勧めしますが、法令等で手続き方法が決まっているわけではありません。そして相続人全員の同意というのは『遺産分割協議書』で明確になると思います。次の遺言で遺言と異なる遺産分割を禁止していないこととは遺言書で明らかになりますので、遺言書にそういった記述がなければ問題ありません。最後の遺言執行者の同意を得るというのは、厳密には要件とまではいえませんが、遺言執行者がいる場合、相続人は遺言執行者が行う相続財産の処分、その他遺言の執行を妨げる行為をすることができないとされているため、遺言執行者の合意を得ておかないと、相続人の知らないとこで遺言通りの名義変更等が行われることも想定されることから、二度手間を防ぐ等の意味で遺言執行者の合意を得ておくことをお勧めします。」旭課長「今回の私の友人のケースでは、そもそも受遺者=相続人だと思いますし、遺言執行人がいるということも聞いていませんので、この場合でしたら、遺産分割協議書があるだけで、受遺者と相続人の合意があったことが明らかになり、先程の要件全てを満たすと思いますがいかがでしょうか。」黒田「遺産分割協議書に相続全員が遺言を確認済である旨の記述はあったほうがいいかもしれませんが、恐らくは仰る通りかと思います。」リエ「ちなみに『包括遺贈』だと何が違うんですか。」黒田「基本的な流れは同じですが、『包括遺贈』を放棄するには『相続放棄』と同様に、原則相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所における手続きが必要になります。この点が大きくことなります。」旭課長「なるほどわかりました。今教えて頂いたことを友人に説明してみます。ありがとうございました。」
2018.05.14 16:44:53