個人間売買による住宅ローン控除の注意点
営業の赤木さんが経理課へやってきました。
リエ「あれ! 赤木さん、経理課に来るなんて珍しいですね。どうされました?」
赤木「実は、この度マイホームを購入したんだ。住宅ローン控除っていうのがあるって聞いて、どうやってやるのか教えてもらえないかな?」
リエ「そうだったんですか! おめでとうございます。」
赤木「中古の物件だけどね。価格と立地が良かったので購入を決めたよ。」
リエ「初年度はご自分で確定申告を行ってください。2年目からは年末調整で控除できますよ。」
赤木「どのくらい控除されるのかな?」
リエ「たしか最大で年間40万円×10年間の控除だったと思いますよ。黒田さんがいらしているので聞いてみますね。」
黒田「話は聞こえていました。赤木さん。何か詳しい内容がわかる書類はありますか?」
赤木「売買契約書のコピーを持ってきました。」
黒田「ありがとうございます。住宅ローン控除の適用要件には全て該当しているようですね。」
赤木「それでは今後10年間は毎年40万円が控除されるのですか!?」
黒田「いえ。40万円の控除というのは特定取得の場合の控除限度額です。残念ながら赤木さんの場合は特定取得に該当しません。」
リエ「えっ! 特定取得に該当しないっていうのは消費税額等が5%の時に取得した場合だけではないのですか?」
黒田「特定取得とは、住宅の取得等の対価の額または費用の額に含まれる消費税額等が8%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます。赤木さんの場合は中古住宅の個人間売買ですよね。」
赤木「売り主とお会いしたことはないですけど、たしかに売買契約書を見ると売り主は個人の方ですね。」
黒田「例えば売り主が個人の方でも、その方が個人事業を行っており事業用資産を売却したような場合は、消費税額等が8%の税率で課されているので特定取得に該当すると考えられますが、通常、個人間売買にはそもそも消費税等が課されていませんので特定取得には該当しません。」
リエ「本当ですね! 売買契約書の金額には消費税等の記載がありませんね。」
黒田「特定取得に該当しない場合の各年の控除限度額は20万円となります。」
赤木「そうだったんですか。まぁ控除限度額は下がるけど、購入時に消費税分を得していると考えるようにします。」