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平成28年の「都道府県地価調査」について

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  「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成28年は全国21,675地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内にある28地点及び熊本地震により甚大な被害を受けた熊本県においては宅地3地点で調査を休止しました。

 調査全体の概要としましては、平成27年7月以降の1年間の地価は、全国平均では、全用途平均は下落しているものの下落幅の縮小傾向が継続し、三大都市圏では、住宅地は東京圏・名古屋圏で小幅な上昇を継続しており、名古屋圏では、上昇基調の鈍化が見られます。また、商業地は総じて上昇基調を強め、特に大阪圏では上昇基調を強めています。一方、地方圏では、地方四市では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇を示し、特に商業地では上昇基調を強めています。また、地方圏のその他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小しています。

以下では、東京圏の住宅地、商業地における地価動向を見ていきたいと思います。

≪住宅地≫
 東京23区は、全体で2.7%上昇となりました。昨年と同様に23区内での住宅地の需要は根強く、全ての区が上昇を続けています。上昇率が最も高かったのは千代田区の10.0%で、目黒区の6.1%がこれに続いています。都心区部では高級戸建住宅地やマンション適地の需要が堅調であるのに対し供給が希少で、高い上昇率を示しています。
 神奈川県は、全体で▲0.2%となりました。一方、横浜市、川崎市は共に0.9%の上昇となっています。両市とも都心への交通利便性が優れた地域の需要は総じて堅調であり、川崎市麻生区を除き上昇を続けています。
 相模原市は0.1%の上昇となっており、東京都心部や横浜市中心部への交通利便性が良好な駅徒歩圏を中心に需要が堅調で、概ね上昇基調が継続している。
 埼玉県は全体で▲0.1%となりました。さいたま市は0.9%の上昇となっており、市南部などでは上昇幅が昨年より拡大した区が見られ、特に東京都心への交通利便性が良好な駅徒歩圏を中心に需要が堅調で、上昇を続けています。その他東京区部に近接する市やさいたま市に近接する市では、概ね上昇基調が継続しています。
 千葉県は、全体で±0.0%となりました。千葉市は0.2%の上昇となっており、JR総武線沿線の交通利便性が良好な住宅地を中心に需要が堅調で、中央区、花見川区、稲毛区で上昇を続けています。木更津市は2.8%、君津市は2.4%上昇しています。両市とも土地区画整理地内や住環境が比較的良好な郊外の住宅地では、東京湾アクアラインを介した県外からの需要も見られ、総じて戸建住宅地の需要が堅調で、上昇を続けています。その他JR総武線沿線、JR常磐線沿線では、東京都心への交通利便性が良好な駅徒歩圏を中心に需要が堅調で、概ね上昇基調が継続しています。
≪商業地≫
 東京都23 区は、全体で4.9%上昇となりました。景気回復基調を反映したオフィス拡張需要の顕在化、大規模な再開発事業等の進捗、外国人観光客の増加に加え、堅調なマンション素地としての需要を反映し、全ての区が上昇となりました。上昇率が最も高かったのは中央区の10.4%で、千代田区の7.3%、渋谷区の6.6%がこれに続いています。
 神奈川県は、全体で1.3%の上昇となりました。その中でも横浜市は2.5%上昇しており、再開発事業の進捗への期待感や根強いマンション素地としての需要から全ての区で上昇となりました。
 埼玉県は、全体で0.2%上昇となりました。その中でも、さいたま市は2.4%上昇しており、中心商業地では、店舗賃料が上昇傾向にあることに加え、オフィス、店舗等の投資用不動産の需要やマンション素地としての需要も引き続き堅調で、上昇を続けています。
 千葉県は、全体で0.8%上昇となりました。その中でも千葉市は1.2%上昇しており、千葉駅周辺では再開発事業が進捗しており、オフィス、賃貸マンション等の投資用不動産の需要も相応に見られ、上昇幅が昨年より拡大しました。
 以上、前回の地価調査と同様に、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えに加え、金融緩和による資金調達環境が良好なこと等もあって住宅地及び商業地ともに総じて堅調に推移して、上昇ないし下落幅の縮小が見られます。この堅調な住宅需要を背景に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られるなど、現在までマンション業者が触手しなかった土地であっても、立地条件等によっては、マンション業者の需要が見込まれるような事象が生じる可能性がありますので、広大地の判定に際して、今後はさらに新築マンションの建設動向にも十分ご注意下さい。

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沖田豊明

沖田不動産鑑定士・税理士事務所

埼玉県川口市にて平成11年に開所して以来、不動産オーナー様の相続案件に特化してまいりました。土地評価についてお悩みの税理士先生のための税理士事務所として、税務のわかる鑑定士として、同業者の皆様方と協業して、不動産オーナー様の相続問題解決に日々取り組んでおります。

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  「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成28年は全国21,675地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内にある28地点及び熊本地震により甚大な被害を受けた熊本県においては宅地3地点で調査を休止しました。  調査全体の概要としましては、平成27年7月以降の1年間の地価は、全国平均では、全用途平均は下落しているものの下落幅の縮小傾向が継続し、三大都市圏では、住宅地は東京圏・名古屋圏で小幅な上昇を継続しており、名古屋圏では、上昇基調の鈍化が見られます。また、商業地は総じて上昇基調を強め、特に大阪圏では上昇基調を強めています。一方、地方圏では、地方四市では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇を示し、特に商業地では上昇基調を強めています。また、地方圏のその他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小しています。 以下では、東京圏の住宅地、商業地における地価動向を見ていきたいと思います。
2018.03.26 09:28:35