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3階建ての賃貸マンションの敷地が更正の請求により広大地として是認された事例

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 今回の事案の事実事項を確認しますと、評価対象地は東京都内に所在し、最寄駅より徒歩10分程度、用途地域は第一種中高層住居専用地域と第一種低層住居専用地域に跨っており、基準容積率が112%、地積1,122㎡で、被相続人が所有する3階建の賃貸マンションが建っています。評価対象地の周辺には、一般住宅や賃貸共同住宅を中心に、月極駐車場や農地等も散見される地域です。

 本件のポイントとしては、3階建てのマンションの敷地が広大地に該当するか、という点です。

 平成16年6月29日の「資産評価企画官情報第2号」では、広大地に該当しない例として「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」等が掲げられていました。このため、賃貸マンションの敷地は広大地に該当しないという認識が一般的となっていました。しかし、平成17年6月17日付の「資産評価企画官情報第1号」では、その判断基準として、建築の有無にかかわら
「その地域の土地の標準的使用といえるかどうかで判断する」と補足されました。
 したがって、広大地に該当するかどうかの判断は、現に3階建の賃貸マンションとして有効に利用されているかではなく、その地域における標準的使用と合致しているかどうかで決まる事になります。
 標準的使用が賃貸マンションかどうかの判定方法としては、その地域に賃貸マンションが何件存在するかではなく、賃貸マンション用地として土地が売買されるような地域であるかどうかです。一般的には、土地を購入した上で賃貸共同住宅経営をして採算が成り立つのは、都心の駅前や高度利用が可能な地域等、賃貸需要が非常に旺盛な地域に限定されるため、賃貸マンションが標準的使用となることはほぼありません。
 本件においても、周辺には賃貸マンションが存在しましたが、登記簿謄本で調査してみると、土地が賃貸マンション用地として売買された事例はなく、地主の土地の有効活用としての建築でしかありませんでした。さらに調査を進めると、周辺には戸建分譲地として売買された事例が多数存在し、標準的使用が戸建分譲である事も認められました。
 以上の事から、評価対象地は3階建ての賃貸マンションが建っていますが、その地域における標準的使用と合致しないので、広大地に該当するものと考えられ、更正の請求を行った結果広大地として是認されました。
 また、財産評価基本通達24-4(広大地の評価)の(注)において、『「その広大地の面する路線の路線価」はその路線が2以上ある場合には、原則として、その広大地が面する路線の路線価のうち最も高いものとする。』と定められており、複数の路線価が設定されている場合は基本的には高い方の路線価を使って評価することになります。
 本件の場合、路線価が高い道路には約3m接道しており、接道義務の長さである2mを満たしているため、一見すると当該道路からの影響を受ける度合いが著しく低いとまではいえないとも考えられます。しかし、図2の様な区画割を想定した際には、ほとんどの画地が路線価の低い道路か開発道路に接することとなり、いずれも路線価の低い道路の価格水準を中心とした値付けがされるものと考えられます。

 したがって、評価対象地は路線価の高い道路からの影響は著しく低いと考えられる為、低い路線価を用いて評価することを主張したところ、これも是認されました。
 本件の様に、広大地や明確に数値化されていない評価に関しては、課税当局にどのように説明するかによって結果が変わってくると思われます。一見するだけでは広大地に該当しない土地でも、周辺の状況や事例を検討することにより広大地に該当する土地も存在します。もし、広大地や土地評価に関して判断に悩まれることがございましたら、お気軽にご連絡ください。

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沖田豊明

沖田不動産鑑定士・税理士事務所

埼玉県川口市にて平成11年に開所して以来、不動産オーナー様の相続案件に特化してまいりました。土地評価についてお悩みの税理士先生のための税理士事務所として、税務のわかる鑑定士として、同業者の皆様方と協業して、不動産オーナー様の相続問題解決に日々取り組んでおります。

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 今回の事案の事実事項を確認しますと、評価対象地は東京都内に所在し、最寄駅より徒歩10分程度、用途地域は第一種中高層住居専用地域と第一種低層住居専用地域に跨っており、基準容積率が112%、地積1,122㎡で、被相続人が所有する3階建の賃貸マンションが建っています。評価対象地の周辺には、一般住宅や賃貸共同住宅を中心に、月極駐車場や農地等も散見される地域です。
2018.02.22 09:21:21