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その強みは未来を創るか

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 コンサルティングの現場で戦略づくりをするために、自社の強み・弱みや外部環境の機会・脅威をよく分析する。「自社の強みを他社の弱みにぶつけ成長戦略を描き出す」ことが、戦略の基本の一つだからである。

 インタビューや研修などで、幹部・社員の方々に「自社の強みは何か?」と尋ねると、「わが社は○○(地域・商品)で高いシェアを持っている」、「地域密着で小回りが利いていることが評価されている」、「長年の信用と人脈だ」、「真面目な社員が多い」などの回答をいただくことが多い。

 そのような中で筆者が決まって申し上げることがある。
「その強みは未来を創ることに役に立ちますか?」

 「企業寿命30年説」と言われるものがある。一つの事業では環境変化に耐えることができず、過去の成長市場は30年を待たずに衰退事業となり、事業の再創造ができなければ倒産に至ることが多い。そのため、このような説が出てきたのであろう。

 長年存続しているだけでも、企業には強みが備わっている。ただ、日本社会が人口減少に突入する中で、多くの業界が成熟から衰退へと向かい、従来の事業だけでは多くの企業は成長戦略は描けない。すなわち、新たな成長戦略を描き出すための未来獲得能力となる強みがなければ、企業は衰退に向うのである。

 そこで既出の質問である。「その強みは未来を創るのか?」

 ヒアリングで出されている強みは、過去に培ってきた信用の内訳のようなものであり、未来を創るものではないことが多い。未来を創る強みとは「○○力」と言えるような、他の事業、商材獲得に転用可能なものでなければならない。

 「○○分野の△△の開発力」、「どんな商材でも売り切る提案営業力」、「ローコストを徹底して実現できる海外まで含めた仕入力」、「新たな商材でも受け入れられる顧客との太いパイプ・ネットワーク力」、「チャレンジする力の高い創造型の人材力」、「事業を数々立ち上げ成功させた事業開発力」など、さまざまなものが挙げられる。つまり、その「○○力」によって顧客に与える利益がわが社の強みである。

 そして、検討すべき未来創造戦略は、強みを掘り下げた新たな成長エンジンの獲得である。この先5年をいかに成長させるか、そのための強みの掘り下げを行っていただきたい。

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株式会社 タナベ経営

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 コンサルティングの現場で戦略づくりをするために、自社の強み・弱みや外部環境の機会・脅威をよく分析する。「自社の強みを他社の弱みにぶつけ成長戦略を描き出す」ことが、戦略の基本の一つだからである。 インタビューや研修などで、幹部・社員の方々に「自社の強みは何か?」と尋ねると、「わが社は○○(地域・商品)で高いシェアを持っている」、「地域密着で小回りが利いていることが評価されている」、「長年の信用と人脈だ」、「真面目な社員が多い」などの回答をいただくことが多い。 そのような中で筆者が決まって申し上げることがある。「その強みは未来を創ることに役に立ちますか?」 「企業寿命30年説」と言われるものがある。一つの事業では環境変化に耐えることができず、過去の成長市場は30年を待たずに衰退事業となり、事業の再創造ができなければ倒産に至ることが多い。そのため、このような説が出てきたのであろう。 長年存続しているだけでも、企業には強みが備わっている。ただ、日本社会が人口減少に突入する中で、多くの業界が成熟から衰退へと向かい、従来の事業だけでは多くの企業は成長戦略は描けない。すなわち、新たな成長戦略を描き出すための未来獲得能力となる強みがなければ、企業は衰退に向うのである。 そこで既出の質問である。「その強みは未来を創るのか?」 ヒアリングで出されている強みは、過去に培ってきた信用の内訳のようなものであり、未来を創るものではないことが多い。未来を創る強みとは「○○力」と言えるような、他の事業、商材獲得に転用可能なものでなければならない。 「○○分野の△△の開発力」、「どんな商材でも売り切る提案営業力」、「ローコストを徹底して実現できる海外まで含めた仕入力」、「新たな商材でも受け入れられる顧客との太いパイプ・ネットワーク力」、「チャレンジする力の高い創造型の人材力」、「事業を数々立ち上げ成功させた事業開発力」など、さまざまなものが挙げられる。つまり、その「○○力」によって顧客に与える利益がわが社の強みである。 そして、検討すべき未来創造戦略は、強みを掘り下げた新たな成長エンジンの獲得である。この先5年をいかに成長させるか、そのための強みの掘り下げを行っていただきたい。
2018.02.20 09:34:09