休業補償は所得税の課税対象?
黒田 「リエちゃん、こんにちは。今日、旭課長はいらっしゃいますか?」
リエ「旭課長は先日の大雪が降った日に取引先に向かう途中で足を滑らせて転倒してしまい、足を骨折してしまったんです。今、旭課長は入院中なんですよ。」
黒田「えっ! 骨折ですか。それは大変ですね。入院するほどの大怪我なんですか?」
リエ「今週末に退院するみたいで、来週には出社できるらしいです。就業中の負傷なので、守田社労士にお願いして労災保険の請求をしてもらいました。」
黒田「さすがリエちゃん、対応早いですね。給与計算の時、『休業補償』を支給する場合は所得税に注意してくださいね。」
リエ「えっ? いつもの給与計算と何が違うんですか?」
黒田「労働者が業務上の負傷等により休業した場合、労働者に重大な過失がなければ労働基準法第76条第1項(※1)の規定に基づき『休業補償』が支給されます。この『休業補償』は、所得税法第9条第1項第3号イ及び所得税法施行令第20条第1項第2号の規定により所得税はかかりません。ですから、労働の対価として支給される『賃金』と『休業補償』を合算して所得税の計算をしないように注意してください。」
リエ「なるほど~。給与計算の時、課税所得と非課税所得を分けるよう気をつけます。」
黒田「労働基準法第76条第1項(※1)に定める割合を超えて休業補償が支給された場合についても、民法上の損害賠償に相当するものであり、心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料として非課税所得となります。ちなみに休業補償以外に治療費等を補償する『療養補償』や身体に障害が残ってしまった場合などの補償として支給される『障害補償』なども非課税所得となります。」
リエ「『休業補償』は損害賠償金って意味合いなんですね。」
黒田「ただし、同じ『休業』でも使用者に故意過失等がなく、経営上の障害により休業する場合は労働基準法第26条(※2)の規定に基づき『休業手当』が支給されます。これは給与所得として課税対象になります。」
リエ「会社都合による『休業手当』は給料と同じ扱いなんですね。なるほど、参考になりました。」
(※1)労働基準法第76条第1項
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない。
(※2)労働基準法第26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60の手当を支払わなければならない。
この記事は2015年2月17日に掲載したものです。