相続により取得した減価償却資産の耐用年数
リエ「黒田さん、最近一段と寒くなってきましたね。今年も残すところあとわずかですね。」
黒田「あっという間に1年が終わってしまいますね。会計事務所の仕事もこれから、忙しくなります。」
リエ「繁忙期に備え、風邪をひかないようにしてくださいね。」
旭課長「黒田さん、リエちゃん、お話のところちょっとよろしいですか?」
黒田「もちろんです。」
旭課長「友人が相続によって賃貸物件を取得したのですが、来年初めて確定申告をするのだそうです。建物の耐用年数をどう計算したら良いのか私に相談にきたのです。私も自分の確定申告はやっていますが、どう答えたらいいか分からなくて。」
リエ「うーん。中古資産を購入したときと同じように、簡便法により算定したらいいのかしら?」
黒田「実は旭課長のご友人のようなケースでは、耐用年数を簡便法により算定することはできないのです。」
リエ「そうなのですか。」
黒田「はい。具体的には、相続(限定承認を除く)により取得した賃貸用の建物の減価償却費の計算における耐用年数は、耐用年数省令3条1項の中古資産に係る見積もりによる使用可能期間に基づく年数とすることができないことが、国税庁の質疑応答事例にて明らかにされています。」
リエ「どうしてでしょうか?」
黒田「相続により取得した減価償却資産の取得価額は、相続人が引き継ぎ所有していたものとみなして計算されることが所得税法60条において明らかにされています。また、同条では、譲渡所得等の金額の計算についても、相続人が引き続きその資産を所有していたものとみなすことを定めています。従って、当該規定との整合性から、耐用年数の見積り計算により算出した年数を基に減価償却費を計算することはできず、被相続人から取得価額、耐用年数、経過年数及び未償却残高を引き継いで減価償却費を計算することになります。」
旭課長「ありがとうございます。さっそく教えてあげたいと思います。」