子供のアルバイトには注意!
営業の杉山さんがリエちゃんのところへやってきました。
杉山「リエちゃん。ちょっと聞きたいことがあるのだけど、いいかな?」
リエ「杉山さん。どうされましたか?」
杉山「大学生の息子のことなんだけど、アルバイトをやっていて月々10万円くらいの稼ぎなので年収だと約120万円らしいんだ。」
リエ「あらっ! 結構頑張っているんですね。」
杉山「まったく勉強もしないで、困ったものだよ。そこでね、勤労学生控除っていうのがあるって聞いたんだけど、わかるかな?」
リエ「勤労学生控除ですか? 聞いたことはあるのですが、詳しいことはちょっとわからないので黒田さんに聞いてみますね。黒田さん。あの………。」
黒田さん「はい、話は聞こえていました。勤労学生控除ですね。勤労学生控除とは、一定の要件を満たす学生には27万円の所得控除があります。」
杉山「一定の要件というのは?」
黒田「はい。その年の12月31日の現況で以下の要件に全て当てはまる人です。」
1)給与所得などの勤労による所得があること。
2)合計所得金額65万円以下で、しかも1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること。
3)特定の学校の学生、生徒であること。
リエ「特定の学校とはどのような学校ですか?」
黒田「次のいずれかの学校のことです。」
イ) 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
ロ) 国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
ハ) 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの
杉山「全ての要件に当てはまるので勤労学生控除の適用を受けることが可能ですね。」
黒田「そうなると給与収入120万円から給与所得控除65万円を控除し、合計所得金額は55万円になります。そこから勤労学生控除27万円と基礎控除38万円を控除すると課税所得は0円になりますので、息子さんに所得税はかかりません。」
杉山「そうですか!よかった~。」
黒田「ただし、杉山さんご自身の税負担は増えます。」
杉山「えっ! どういうことですか?」
黒田「今まで息子さんを扶養親族として扶養控除の適用を受けていましたが、今年は適用を受けることができなくなってしまいました。」
杉山「息子の所得税は0円なのに扶養控除を適用できないのですか?」
黒田「はい。扶養親族の範囲とは、納税者と生計を一にする16歳以上の合計所得金額が38万円以下の者になります。息子さんの合計所得金額は55万円になりますので扶養親族の対象からは外れます。扶養控除は配偶者特別控除のように段階的に控除額が少なくなる措置がありませんので、合計所得金額が38万円を少しでも超えたら控除額は0円です。」
リエ「杉山さんの息子さんはおいくつでしたっけ?」
杉山「21歳だよ。」
リエ「そうなると特定扶養親族(19歳以上23歳未満)に該当していたので、通常の38万円の扶養控除ではなく、63万円の扶養控除を受けられるはずでしたね。」
杉山「は~。来年からはアルバイト代を103万円以下に抑えるように息子を説得します。」