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評価対象地が広大地として是認された事例

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 始めに事実事項を確認しますと、評価対象地は最寄駅より徒歩約7分の距離に存し、現況は月極駐車場である地積約1,300㎡の角地です。用途地域は第一種中高層住居専用地域、容積率は200%に指定されています。相続時点現在、評価対象地の近隣地域は、一般住宅や賃貸共同住宅、駐車場や分譲マンション等が散見される住宅地域となっています。下の図のように、評価対象地の近隣地域及び周辺地域には、分譲マンションが複数存在し、一見するといわゆる「マンション適地」と思われるかもしれません。

 そこで、本事案においては、評価対象地の典型的な需要者が、分譲マンション業者なのか、戸建分譲業者なのかを吟味した上で、税務上の広大地の適用要件の一つである「戸建分譲素地が最有効使用であること」をいかに丁寧に当局へ説明するかがポイントとなりました。
 なお、この場合の最有効使用とは、不動産鑑定評価基準によると、仮に当該土地を売りに出した場合において、競合する購入者のうち、最も高い価格を提示できる利用方法をいいますが、分譲マンション業者、戸建分譲業者、いずれの需要者もエンドユーザーの売行きに影響を与える環境条件や交通接近条件等に着目し、販売戸数に影響を与える公法上の規制や形状、規模等の画地条件について厳しく吟味した上で、投資採算性に基づいて取引の意思決定を行います。
 本事案では、上記に挙げた中でも、特に「公法上の規制」に重きを置いて、以下の観点から、分譲マンション業者が典型的な需要者とはならず、戸建分譲素地が最有効使用である旨を説明しました。
 【① 日影規制】
 日影規制とは、日影を一定の時間内に抑えるように建築物の形態を制限して周辺の居住環境を保護しようとする建築基準法上の規制です。日影規制の対象となる建築物は、用途地域毎に建物の高さや階数で決められており、対象建築物が一定時間以上続けて隣地に影を落とさないように計画することが義務付けられています。
 評価対象地についても、建築物の高さが10mを超える場合には規制対象となり、評価対象地の形状や自治体が規定するその他の建築上の制限(絶対高さ制限、高度地区、道路斜線等)を勘案した上で、実際にどの位のボリュームの建築物が建築可能か想定したところ、建築可能な建物の階層は6階程度になると予想され、さらに4階以上の階層では敷地の北側部分に居室を設けることが制限されることが判明しました。(下記、「建物想定」参照)。

 【② 実効容積率】        
 一般に、分譲マンション業者は、利益確保のために販売戸数を増やす必要があり、容積率を限度一杯まで使用して高度利用を図ることが通常です。つまり、分譲マンション業者としては、その土地にマンションを建築した場合、容積率を最大限消化できるか否かが、購入を検討する上での重要な判断要素となります。
 実際に、評価対象地周辺で、近年、分譲されたマンション事例を調べたところ、全てのマンションについて実効容積率(建築物の延床面積の敷地面積に対する割合)がほぼ200%であり、指定容積率の上限値でした。これを、本件評価対象地について見てみると、自治体の開発指導要綱による駐車場の設置義務や前記の日影規制等をも考慮すると、消化可能な容積率は約170%と約30%程少なくなることが判明しました。
 したがって、これら公法上の規制や近年の建築費の高騰等の市況も踏まえ、相続時点現在では、現実的に評価対象地上に投資採算が得られるほどの高度利用を図った高層マンションを建設することは難しく、「明らかにマンション適地と判断できるほどの条件は満たしていない」ため、評価対象地の最有効使用は分譲マンション用地ではないと判断しました。そして、その旨等の意見を記した広大地鑑定書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断されました。
 本事案のように、一見すると「マンション適地」として広大地での評価が難しいと思われる土地であっても、公法上の規制内容を精査し、建物想定を行うことで広大地として認められるケースもあります。
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沖田豊明

沖田不動産鑑定士・税理士事務所

埼玉県川口市にて平成11年に開所して以来、不動産オーナー様の相続案件に特化してまいりました。土地評価についてお悩みの税理士先生のための税理士事務所として、税務のわかる鑑定士として、同業者の皆様方と協業して、不動産オーナー様の相続問題解決に日々取り組んでおります。

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2017.10.30 10:03:10