仮想通貨の法的位置づけについて
日本発のビットコイン取引所であるMt.GOXが破綻してから4年(※1)、日本にも多くの取引所が開設され、仮想通貨という言葉がある程度世間に認知されるようになったように思われます。そのような中、本年4月1日、取引所である仮想通貨交換業者を取り締まる法律が施行され、登録制度が開始しました。金融庁の仮想通貨交換業者登録一覧(※2)によれば、このコラムを執筆している平成29年10月23日現在、11社が登録し、19社が継続審査中とのことです。仮想通貨の存在は税務にも影響を与えています。消費税に関しては、平成29年7月1日より支払い手段の譲渡の一種として、非課税とされ(※3)、仮想通貨を使用することにより利益が生じた場合には、所得税課税の対象となるなど(※4)、課税に関する論点の整理もまとまりつつあります。また仮想通貨の会計基準に関しても、現在、企業会計基準委員会において、原案が示され、本年11月には、案が公表される見通しと報道されております(※5)。
前置きが長くなりましたが、ここからは少し法律の話をしたいと思います。
すなわち、上述のように、仮想通貨が会計や税務とも今後関係してくるものであることはご理解いただけたかと思いますが、その際、問題となるそれが仮想通貨であるかどうかはどう判断すればよいでしょうか。
仮想通貨の定義は、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(※6)に規定されています。この法律は、文字通り、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための各法令の改正をするための法律なのですが、この改正される法律の中に、資金決済法が含まれ、この資金決済法に新たに仮想通貨交換業が規定されるのに合わせて、仮想通貨の定義が入ることになりました(参照するときは、新旧対照表(※7)のほうが分かりやすいと思います)。
改正資金決済法2条5項では、仮想通貨について、1号と2号に分けて規定をしています。
1号は、「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」です。
要するに、何かを買う際等に代価として不特定の人に渡して決済ができるもので、インターネットなどを通じて送信ができるものがこれにあたります。例えば、ビットコインは、ビットコインネットワーク内にいる人であれば誰にでも送信できますし、何かを買うときにビットコインにより決済ができるようになっていて、インターネット等を通じて送信しますので、仮想通貨に当たります。
2号は、「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」です。
すなわち、1号の定義に当たらないものであっても、不特定の人を相手にして、1号の仮想通貨と相互に交換でき、インターネット等を通じて送信できるものは、やはり仮想通貨にあたります。
例えば、店舗などでの決済を前提としない、ビットコイン等との交換にしか価値のないようなものを発行した場合には、2号仮想通貨に該当することになります。
もっとも、これらに関しては除外されるものが二つあります。
まず、「電子機器その他の物に電子的方法により記録されているもの」に限られます。ですので、例えば、マンガに出てくるような穴の開いた丸い石で不特定の人から何かを購入できるように流通したとしても、それは仮想通貨ではありません。
次に、本邦通貨、外国通貨、通貨建資産に当たるものも除かれます。通貨建資産とは、「本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるものが行われることとされている資産」をいいます。通貨建資産の典型は、銀行預金債権や、前払式支払手段(いわゆる電子マネー)です。これらは、仮に1号や2号の要件に当てはまるものでも仮想通貨には当たりません。
例えば、仮想通貨と相互に代えることができる電子マネーがあっても、それは単なる前払式支払手段であって、仮想通貨ではないということです。
仮想通貨や仮想通貨に類似する決済手段は無数に存在し、メジャーなものはともかく、新規のものやマイナーなものは、それこそ判断に迷うこともあると思います。実際、このあたりの判断は、非常に微妙であるケースが多いように見受けられます。判断を誤る前に、お近くのこのあたりの内容に詳しい弁護士にご相談いただいたほうがよいように思われます。
(※1) マウントゴックス破綻 ビットコイン114億円消失について