91)会社の真の強さを映し出す『1人当り営業利益』
営業利益(営業利益については84回、85回参照)が1億円のA社と、1千万円のB社の決算書があります。この情報だけではA社の方が良い会社だと判断してしまうかもしれませんが、「1人当り営業利益」をみると見方が変わってしまうことがあります。
1人当り営業利益は、単純に『営業利益』を『社員数』(社員数の考え方は90回参照)で割るだけですが、こうすることで大企業を凌ぐ中小企業が多くあることが実感できます。同時に、自社の経営戦略の在り方についても考えさせられるテーマです。
冒頭のA社とB社ですが、社員数がA社1,000人、B社10人だった場合、両社の1人当たり営業利益はA社10万円、B社100万円となり、1人当り営業利益のA社とB社の評価は逆転します。B社の方が生産性の高いビジネスモデルを実現しているのです。
もう一歩掘り下げ、他社比較ではなく自社の在り方を考えみます。会社は人がいないと成り立ちません。1人が材料を仕入れ、広告宣伝費や水道光熱費、家賃等を支払って活動し、売り上げた中から給与を得ます。そうして残ったのが1人当り営業利益であり、それを全部合わせれば会社全体の営業利益です。
とすると、一人の限界の集合が組織全体の限界となるはずですが、現実にはそうはなりません。一人の限界を遥かに凌ぐような1人当り営業利益を創出している企業が実際にありますし、同業種で同じような社員数でも1人当り営業利益に差が生じることもあるのです。
つまり、そのような会社では、1+1=2ではなく、3にも4にも、10にもなっています。経営の神様といわれた松下幸之助氏の「松下電器は人を創る会社です。あわせて電化製品を作っています」と言う言葉はあまりに有名ですが、これは一人ひとりの社員が、相互の関係性によって個人の限界を超えた活躍をし、結果として大きな付加価値を生み出すことで、会社を成長発展させていく姿を見据えていたから出た言葉だと思います。
1人当り営業利益が低いとしたら、それは、1人の限界すら引き出せていないか、一人ひとりがバラバラで限界に挑戦しているからです。今期より来期、来期より再来期とより高い「1人当り営業利益」を目指す意味はそこに集約されてきますね。