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医療法人と普通法人の決算申告の違いは…

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リエ「黒田さん、以前に医療法人はお得ですか? と質問したことがあったのですが。」

黒田「はいはい、近所に個人で開業している先生がいると言ってましたね。医療法人にされたのですか?」

リエ「そうなんです。息子さんが医学部に無事合格されて、跡取りもできそうだからと医療法人化に踏み切ったそうなんです。」

黒田「それはよかったですね。以前もお話しましたが、『医療法人解散時は残余財産の帰属先は国等のものになる』という規定も解散しなければ何も問題になりませんものね。」

リエ「黒田さん、普通法人と医療法人社団とでは決算申告などはどう違うのですか? 税金がすごく安くなるのですか?」

黒田「法人税の申告手続き上では、一般の法人が提出する『株主資本等変動計算書』や申告書のうち『別表2』がないなど、提出書類の違いがあります。税金計算上の違いとしては、出資に対する配当がありませんので、同族会社の留保金課税の適用がありません。そして税率については一般の中小法人と同様の法人税率が適用されます。さらに医療法人の中でも最も公益性が高いとされている社会医療法人は、本業による所得は非課税とされ、次に公益性の高い特定医療法人は、通常の医療法人よりも税率が優遇されます。」

リエ「色々違うのですね。」

黒田「そうですね、他にもありますよ。社会保険診療の所得計算の特例で、社会保険診療が5000万円以下で、その医療法人が営む医業に係る総収入額が7000万円以下の場合は社会保険診療報酬額に応じた経費率により計算する特別な制度もあります。」

リエ「すごく税金が優遇されるのかと思ってました。」

黒田「ははは、そうですね。事業税は社会保険診療報酬等に係る所得については非課税となりますし、事業税の計算上は特別法人に該当しますので、東京都の場合、自由診療等に係る所得の金額のうち年400万円までは3.4%の税率が適用され、年400万円を超える金額は一律4.6%の軽減税率が適用されます。」

リエ「申告手続きにも違いがありますか?」

黒田「はい、医療法人の事業税は非課税規定があることから、法人税の課税所得と大きく異なることがあるので、一般の法人よりも多くの書類提出が求められます。例えば東京都では 第6号様式別表5(所得金額に関する明細書)・医療法人等に係る所得金額の計算書・貸借対照表・損益計算書・雑収入明細書・法人税別表4・課税業者で税込み経理を採用している場合は消費税申告書の写しなどが必要となってきます。」

リエ「わぁ、たくさん提出するのですね。」

黒田「社会保険診療の所得計算の特例を採用する場合は実額で計算した場合と概算経費の特例で計算した場合を比較して、有利なほうを選択することもできますし。とにかく、専門家の方に相談して申告することが大切ですよ。」

リエ「そうですね、餅は餅屋。専門家の方にお願いするのが一番ですね。」

執筆者情報

アサヒ・ビジネスセンター

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リエ「黒田さん、以前に医療法人はお得ですか? と質問したことがあったのですが。」黒田「はいはい、近所に個人で開業している先生がいると言ってましたね。医療法人にされたのですか?」リエ「そうなんです。息子さんが医学部に無事合格されて、跡取りもできそうだからと医療法人化に踏み切ったそうなんです。」黒田「それはよかったですね。以前もお話しましたが、『医療法人解散時は残余財産の帰属先は国等のものになる』という規定も解散しなければ何も問題になりませんものね。」リエ「黒田さん、普通法人と医療法人社団とでは決算申告などはどう違うのですか? 税金がすごく安くなるのですか?」黒田「法人税の申告手続き上では、一般の法人が提出する『株主資本等変動計算書』や申告書のうち『別表2』がないなど、提出書類の違いがあります。税金計算上の違いとしては、出資に対する配当がありませんので、同族会社の留保金課税の適用がありません。そして税率については一般の中小法人と同様の法人税率が適用されます。さらに医療法人の中でも最も公益性が高いとされている社会医療法人は、本業による所得は非課税とされ、次に公益性の高い特定医療法人は、通常の医療法人よりも税率が優遇されます。」リエ「色々違うのですね。」黒田「そうですね、他にもありますよ。社会保険診療の所得計算の特例で、社会保険診療が5000万円以下で、その医療法人が営む医業に係る総収入額が7000万円以下の場合は社会保険診療報酬額に応じた経費率により計算する特別な制度もあります。」リエ「すごく税金が優遇されるのかと思ってました。」黒田「ははは、そうですね。事業税は社会保険診療報酬等に係る所得については非課税となりますし、事業税の計算上は特別法人に該当しますので、東京都の場合、自由診療等に係る所得の金額のうち年400万円までは3.4%の税率が適用され、年400万円を超える金額は一律4.6%の軽減税率が適用されます。」リエ「申告手続きにも違いがありますか?」黒田「はい、医療法人の事業税は非課税規定があることから、法人税の課税所得と大きく異なることがあるので、一般の法人よりも多くの書類提出が求められます。例えば東京都では 第6号様式別表5(所得金額に関する明細書)・医療法人等に係る所得金額の計算書・貸借対照表・損益計算書・雑収入明細書・法人税別表4・課税業者で税込み経理を採用している場合は消費税申告書の写しなどが必要となってきます。」リエ「わぁ、たくさん提出するのですね。」黒田「社会保険診療の所得計算の特例を採用する場合は実額で計算した場合と概算経費の特例で計算した場合を比較して、有利なほうを選択することもできますし。とにかく、専門家の方に相談して申告することが大切ですよ。」リエ「そうですね、餅は餅屋。専門家の方にお願いするのが一番ですね。」
2017.10.24 09:10:35