押印申請書による管理が無意味に
印鑑社会の日本では、印章管理の重要性は極めて高い。そこで、会社には厳格な印章管理・押印管理が求められている。実務上は、代表印や銀行届出印の管理者を定めて、押印申請書(押印記録簿、押印台帳、押印簿等呼称はさまざまである)による申請があったものに限り、印章管理者が押印するといった内部統制がよく見受けられるところだ。
この内部統制のキーとなるのは、印章管理者が自身で押印する(申請者に印鑑を貸し出さない)というコントロールだ。いくら押印申請書が提出されているからといって、印鑑を貸し出してしまうと、そこに記載されていない文書に印章が使用されるリスクがあるからだ。
それを怠り、経理担当者に印鑑を貸し出して預金を横領されたのが、ジュエリーの製造販売を行う光・彩(JASDAQ上場)だ。同社では押印申請簿の作成が義務付けられていたが、経理担当者は、別の用途による捺印を申請して上長から借りた印鑑を銀行の払出請求書に捺印して資金を引き出すという手口だけで2億円以上を横領していた。同社では、その他の手口も合わせると3億9千万円の被害が確認されている。
自社の印章管理者は、押印申請簿の記載内容を確認後、必ず自身で押印する(印章は貸し出さない)といった印章管理の基本ができているか、確認しておきたい。