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事業報告と有報の一体的開示、会計士協会が報告書を公表

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 日本公認会計士協会の開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームは8月25日、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」(以下、本PT報告)を公表した。
 これは会社法と金融商品取引法の法定開示における財務情報の一体的開示の方法を提案し、論点を整理するためのもの。上場企業の開示負担を減らすだけでなく、監査の効率化を図るのも狙いだ。もともとは、安倍政権による「日本再興戦略2016」(平成28年6月)において、「事業報告等と有価証券報告書を一体的に開示する場合の関係省庁の考え方等の整理と共通化可能な項目に係る具体的な進め方の決定」が施策として掲げられており、「未来投資戦略2017」(平成29年6月)でも、引き続き更なる検討を行うとされている。この施策の実現に資するよう、監査の視点を踏まえて取りまとめられたのが、本PT報告となる。
 本PT報告によると、一体的開示の方法として、会社法と金融商品取引法のそれぞれの法令に基づく「二組の開示書類を段階的に開示する方法」と両法令の開示要請を満たす「一組の開示書類を一時点で開示する方法」が考えられるとしている。後者の方法で、一組の開示書類として開示することになれば、作成者及び監査人にとっては、開示書類の作成及び監査の負担がより軽減され、株主・投資家にとっては、一度に必要な情報がまとめて入手でき、より利便性が高まるなど更なる利点がある。また、後者の方法は、後発事象のずれの問題(会社法の開示における後発事象と金融商品取引法の開示における後発事象とでは判断時点が異なる)は、一組の開示書類として一時点で開示されれば解消されることになる。さらに、定時株主総会の開催日の後ろ倒しと併用することで、開示書類の作成に費やせる時間を多く確保できるメリットも生じる。株主・投資家としても、詳細な開示書類を定時株主総会前に入手できる点はメリットと言えよう。
 また、本PT報告では、会社法の計算書類及び連結計算書類の注記については、以下の二つの方法が考えられるとしている。
① 現行の会社計算規則で注記が求められている事項のみ、注記内容を金融商品取引法の開示規則に合わせて注記する方法
② 会社計算規則で求められる注記を含め、金融商品取引法の開示規則で求められる注記を全て注記する方法

 なお、本PT報告では、「一元化」と「一体的開示」について以下のように用語を使い分けて記載しているので注意が必要だ。
○一元化・・・会社法と金融商品取引法の規定において要求される法定開示書類(財務情報及び非財務情報)を一本化する。
〇一体的開示・・・事業報告等と有価証券報告書の記載内容をできる限り共通化し、相互利用することにより、実質的に一体化して作成、開示する。
さらに、両者の開示時点を合わせることにより一体の書類として開示する。

執筆者情報

日本IPO実務検定協会
財務報告実務検定事務局

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 日本公認会計士協会の開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームは8月25日、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」(以下、本PT報告)を公表した。  これは会社法と金融商品取引法の法定開示における財務情報の一体的開示の方法を提案し、論点を整理するためのもの。上場企業の開示負担を減らすだけでなく、監査の効率化を図るのも狙いだ。もともとは、安倍政権による「日本再興戦略2016」(平成28年6月)において、「事業報告等と有価証券報告書を一体的に開示する場合の関係省庁の考え方等の整理と共通化可能な項目に係る具体的な進め方の決定」が施策として掲げられており、「未来投資戦略2017」(平成29年6月)でも、引き続き更なる検討を行うとされている。この施策の実現に資するよう、監査の視点を踏まえて取りまとめられたのが、本PT報告となる。  本PT報告によると、一体的開示の方法として、会社法と金融商品取引法のそれぞれの法令に基づく「二組の開示書類を段階的に開示する方法」と両法令の開示要請を満たす「一組の開示書類を一時点で開示する方法」が考えられるとしている。後者の方法で、一組の開示書類として開示することになれば、作成者及び監査人にとっては、開示書類の作成及び監査の負担がより軽減され、株主・投資家にとっては、一度に必要な情報がまとめて入手でき、より利便性が高まるなど更なる利点がある。また、後者の方法は、後発事象のずれの問題(会社法の開示における後発事象と金融商品取引法の開示における後発事象とでは判断時点が異なる)は、一組の開示書類として一時点で開示されれば解消されることになる。さらに、定時株主総会の開催日の後ろ倒しと併用することで、開示書類の作成に費やせる時間を多く確保できるメリットも生じる。株主・投資家としても、詳細な開示書類を定時株主総会前に入手できる点はメリットと言えよう。  また、本PT報告では、会社法の計算書類及び連結計算書類の注記については、以下の二つの方法が考えられるとしている。① 現行の会社計算規則で注記が求められている事項のみ、注記内容を金融商品取引法の開示規則に合わせて注記する方法② 会社計算規則で求められる注記を含め、金融商品取引法の開示規則で求められる注記を全て注記する方法 なお、本PT報告では、「一元化」と「一体的開示」について以下のように用語を使い分けて記載しているので注意が必要だ。○一元化・・・会社法と金融商品取引法の規定において要求される法定開示書類(財務情報及び非財務情報)を一本化する。〇一体的開示・・・事業報告等と有価証券報告書の記載内容をできる限り共通化し、相互利用することにより、実質的に一体化して作成、開示する。さらに、両者の開示時点を合わせることにより一体の書類として開示する。
2017.09.22 11:09:02