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MS法人との取引があっても特定医療法人の承認は受けられるのか

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1 特定医療法人制度

(1) 特定医療法人の概要

 特定医療法人とは、租税特別措置法第67条の2に規定された法人で、財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めのないもののうち、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき租税特別措置法施行令第39条の25第1項で定める要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた医療法人です。
 この承認を受けることにより、承認後に終了する各事業年度において、19%(課税所得800万円以下の部分は15%)の軽減法人税率の特例の適用が受けられます。
 特定医療法人の承認を受けるには、事前に国税局担当者による厳密な審査が行われます。

【承認要件】
イ 財団たる医療法人又は持分の定めがない社団たる医療法人であること
ロ 事業及び医療施設が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすものである旨の厚生労働大臣の証明書の交付を受けること
ハ 運営組織が適正であるとともに、役員等の数のうちにその親族等の占める割合が3分の1以下であること
ニ 設立者、役員等又はこれらの親族等に対して特別の利益を与えないこと
ホ 解散した場合には、残余財産が国等又は他の医療法人に帰属する旨の定めがあること
へ 法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記録又は記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと

(2) 特別の利益提供の範囲

 特定医療法人の承認を受けるには(1)ニのとおり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の当該医療法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであることが求められます(措令39の25①三)。
 社員や役員といった自然人への特別の利益提供を禁止していますが、関係の深い医療法人への特別な利益提供も、通知等に定めがなくても運営組織が適正な法人であるためには許されるものではありません。

2 特定医療法人の承認を受ける場合のMS法人

(1) 承認申請書への記載

 特定医療法人の承認申請書には、関係の深いMS法人の状況と、取引内容を記載しなければなりません。

(2) 実務の対応

 特定医療法人の承認申請において、MS法人との取引があることのみをもって、特定医療法人の承認が得られないという審査実務は行われていません。
 ただし、MS法人との取引があるならば、その取引内容が適切であることは当然として、MS法人と取引をしなければならない必然性も求められます。
 したがって、MS法人の取引があっても、一定の要件のもと特定医療法人の承認を受けることが可能です。

ポイント

○MS法人の取引があっても、特定医療法人の承認が受けられる。
○MS法人と取引する必然性と適正性が求められる。

このコンテンツは、平成28年10月1日現在の法令等によっています。

資料提供(出典)

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メディカルサービス法人をめぐる法務と税務 ―医療法人・関係事業者のための実務ガイド

著者:税理士 佐々木 克典

発行日:2016/11/25
発行元:株式会社 清文社
規格:A5/232頁

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 特定医療法人とは、租税特別措置法第67条の2に規定された法人で、財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めのないもののうち、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき租税特別措置法施行令第39条の25第1項で定める要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた医療法人です。 この承認を受けることにより、承認後に終了する各事業年度において、19%(課税所得800万円以下の部分は15%)の軽減法人税率の特例の適用が受けられます。 特定医療法人の承認を受けるには、事前に国税局担当者による厳密な審査が行われます。【承認要件】イ 財団たる医療法人又は持分の定めがない社団たる医療法人であることロ 事業及び医療施設が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすものである旨の厚生労働大臣の証明書の交付を受けることハ 運営組織が適正であるとともに、役員等の数のうちにその親族等の占める割合が3分の1以下であることニ 設立者、役員等又はこれらの親族等に対して特別の利益を与えないことホ 解散した場合には、残余財産が国等又は他の医療法人に帰属する旨の定めがあることへ 法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記録又は記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと
2017.08.25 14:00:25