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告別式を2回に分けて行った場合の相続税の葬式費用

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リエ「相続税の計算で引ける葬式費用について、質問があるのですが。」

黒田「どんなことですか。」

リエ「親戚の者が、離島のA町に住んでいる娘さんに会いに行ったのですが、行った先で急死してしまいました。遺体を自宅のB市に搬送するのが大変なので、離島のB町で火葬し、僧侶による読経とともに参列者が焼香等を行い、親族と生前お世話になった地元の友人で告別式を執り行いました。帰宅後改めて自宅のB市で告別式を執り行いました。告別式には、遺影及び遺骨を祀り、僧侶による読経とともに、生前お世話になった職場や知人の方が参列し、焼香等を行いました。この場合、離島のA町の告別式と帰宅後のB市の告別式に要した費用は、相続税の葬式費用にできるのでしょうか。」

黒田「ご質問のケースの場合は、ご自宅から遠く離れた所で急死していますので、ご自宅のB市の知人などが告別式に参列するのが困難となることから、参列者の便宜等考慮し、遺族の意思によりA町での告別式の後、別途B市で執り行ったものですが、納骨前に行ったものであり、A町での告別式と同様であることから、故人の追善供養のため営まれる法要ではなく、故人を葬るために行われた葬式と考えられると思います。
したがって、帰宅後に執り行ったB市の告別式の費用が通常の葬儀に伴う妥当なものであれば、この費用をA町の告別式に要した費用と合わせて葬式費用としてもよいかと思います。」

リエ「なるほど、何だか判断が難しいですね。」

黒田「相続税上の葬式費用は、死者を葬る儀式をいうものとされ、宗教や地域的慣習によりその様式が異なるので何が葬式費用であるかの判定は極めて難しく、個々の具体例について社会通念に即して判断することになります。」

リエ「具体的にどこまで葬式費用として認められるのですか。」

黒田「葬式費用の範囲については、相続税法基本通達で下記にように定められていす。
(1)葬式の前後で、遺体の埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行った場合は、その両者の費用)。
(2)葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用。
  (3)葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの。
  (4)死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用とされています。」

リエ「通常葬式に伴う費用にはどんなものがありますか。」

黒田「例えば、お通夜本葬での食事代、火葬場への移動のためのタクシー代、葬儀に関しお手伝いしてもらった人などへの心付け、お坊さんに支払ったお布施や戒名料、喪主が負担した生花や盛籠などが該当するのではないでしょうか。」

リエ 「葬儀費用に該当しない費用についてはどんなものが有りますか。」

黒田 「①香典返戻費用②墓碑、墓地、位牌の購入費用や借入料③法会に要する費用④医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用は葬式費用として取り扱わないとされています。なお、法会とは、法事ともいい、初七日、四十九日、一周忌などがあり、先ほどお話した死者を葬る儀式である葬式と異なり、死者の追善供養のため営まれるものです。」  
リエ 「葬儀に必要とされるものが該当するのですね。」

黒田 「そうです。相続財産から葬式費用を控除することができる債務なので、具体的な範囲が決められているのですよ。」

執筆者情報

アサヒ・ビジネスセンター

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リエ「相続税の計算で引ける葬式費用について、質問があるのですが。」黒田「どんなことですか。」リエ「親戚の者が、離島のA町に住んでいる娘さんに会いに行ったのですが、行った先で急死してしまいました。遺体を自宅のB市に搬送するのが大変なので、離島のB町で火葬し、僧侶による読経とともに参列者が焼香等を行い、親族と生前お世話になった地元の友人で告別式を執り行いました。帰宅後改めて自宅のB市で告別式を執り行いました。告別式には、遺影及び遺骨を祀り、僧侶による読経とともに、生前お世話になった職場や知人の方が参列し、焼香等を行いました。この場合、離島のA町の告別式と帰宅後のB市の告別式に要した費用は、相続税の葬式費用にできるのでしょうか。」黒田「ご質問のケースの場合は、ご自宅から遠く離れた所で急死していますので、ご自宅のB市の知人などが告別式に参列するのが困難となることから、参列者の便宜等考慮し、遺族の意思によりA町での告別式の後、別途B市で執り行ったものですが、納骨前に行ったものであり、A町での告別式と同様であることから、故人の追善供養のため営まれる法要ではなく、故人を葬るために行われた葬式と考えられると思います。したがって、帰宅後に執り行ったB市の告別式の費用が通常の葬儀に伴う妥当なものであれば、この費用をA町の告別式に要した費用と合わせて葬式費用としてもよいかと思います。」リエ「なるほど、何だか判断が難しいですね。」黒田「相続税上の葬式費用は、死者を葬る儀式をいうものとされ、宗教や地域的慣習によりその様式が異なるので何が葬式費用であるかの判定は極めて難しく、個々の具体例について社会通念に即して判断することになります。」リエ「具体的にどこまで葬式費用として認められるのですか。」黒田「葬式費用の範囲については、相続税法基本通達で下記にように定められていす。(1)葬式の前後で、遺体の埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行った場合は、その両者の費用)。(2)葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用。  (3)葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの。  (4)死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用とされています。」リエ「通常葬式に伴う費用にはどんなものがありますか。」黒田「例えば、お通夜本葬での食事代、火葬場への移動のためのタクシー代、葬儀に関しお手伝いしてもらった人などへの心付け、お坊さんに支払ったお布施や戒名料、喪主が負担した生花や盛籠などが該当するのではないでしょうか。」リエ 「葬儀費用に該当しない費用についてはどんなものが有りますか。」黒田 「①香典返戻費用②墓碑、墓地、位牌の購入費用や借入料③法会に要する費用④医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用は葬式費用として取り扱わないとされています。なお、法会とは、法事ともいい、初七日、四十九日、一周忌などがあり、先ほどお話した死者を葬る儀式である葬式と異なり、死者の追善供養のため営まれるものです。」  リエ 「葬儀に必要とされるものが該当するのですね。」黒田 「そうです。相続財産から葬式費用を控除することができる債務なので、具体的な範囲が決められているのですよ。」
2017.08.08 14:21:33