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残高不足により口座引落しができなかった短期前払費用の取扱い

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黒田「リエちゃん、今月は決算月ですね。これから忙しくなりますよ。」

リエ「もう決算の時期ですね。1年経つのが早いなぁ。」

黒田「そういえば今月末に1年分の年払保険料の口座引落しがありましたよね? 引落し口座の預金残高に注意してくださいね。」

リエ「前期末に契約した保険契約のことですね。確か保険料の引落しは預金残高不足で口座引落しができなかった場合は、翌月に保険料が引落しとなるそうです。もし今月、口座振替ができなかった場合は未払計上で処理していいですか?」

黒田「保険料が当事業年度に係るものである場合は、未払計上による損金算入はできますよ。しかし、今回支払う年払保険料は確か翌事業年度の1年分の保険料でしたよね?」

リエ「はい、1年分の保険料を前納する契約です。あれ? もしかして前期末に年払い保険料を支払った時、前払費用で処理しなければいけなかったですか?」

黒田「前払費用は法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するもので、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものとされています。ただし、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認めると法人税基本通達2-2-14で定めています。つまり、継続適用を前提とした1年以内の短期前払費用については支払時点で損金算入する処理を認めています。」

リエ「前期は期末までに支払っていたから損金算入できたということですね。ちなみに預金残高不足で今月中に支払いができなくて、翌期に預金口座から引落としとなった場合はどうなるのですか?」

黒田「現実に役務提供の対価として支払ったものであることが損金算入の要件となっていますので、事業年度末までに支払いがなされていない場合には損金算入の適用対象外となります。」

リエ「もし1年分の保険料が損金算入できなくなったら、当事業年度の損益計算に影響しますね。口座引落しができなかったということがないよう気をつけます。」

執筆者情報

アサヒ・ビジネスセンター

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黒田「リエちゃん、今月は決算月ですね。これから忙しくなりますよ。」リエ「もう決算の時期ですね。1年経つのが早いなぁ。」黒田「そういえば今月末に1年分の年払保険料の口座引落しがありましたよね? 引落し口座の預金残高に注意してくださいね。」リエ「前期末に契約した保険契約のことですね。確か保険料の引落しは預金残高不足で口座引落しができなかった場合は、翌月に保険料が引落しとなるそうです。もし今月、口座振替ができなかった場合は未払計上で処理していいですか?」黒田「保険料が当事業年度に係るものである場合は、未払計上による損金算入はできますよ。しかし、今回支払う年払保険料は確か翌事業年度の1年分の保険料でしたよね?」リエ「はい、1年分の保険料を前納する契約です。あれ? もしかして前期末に年払い保険料を支払った時、前払費用で処理しなければいけなかったですか?」黒田「前払費用は法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するもので、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものとされています。ただし、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認めると法人税基本通達2-2-14で定めています。つまり、継続適用を前提とした1年以内の短期前払費用については支払時点で損金算入する処理を認めています。」リエ「前期は期末までに支払っていたから損金算入できたということですね。ちなみに預金残高不足で今月中に支払いができなくて、翌期に預金口座から引落としとなった場合はどうなるのですか?」黒田「現実に役務提供の対価として支払ったものであることが損金算入の要件となっていますので、事業年度末までに支払いがなされていない場合には損金算入の適用対象外となります。」リエ「もし1年分の保険料が損金算入できなくなったら、当事業年度の損益計算に影響しますね。口座引落しができなかったということがないよう気をつけます。」
2017.08.01 10:36:23