子会社清算ではなく合併という選択肢
■不採算会社を経営するA社長
複数の飲食店を経営するA社長は、下記の2つの会社のオーナーでもあります。
(甲社・・・業績好調)
売上 10億円
利益 1.5億円
純資産 5億円
(乙社・・・業績不振、清算予定)
売上 5億円
利益 △1億円
純資産 △2億円
甲社は、A社長が20年前に始めた居酒屋が主体で、立地と接客に重点を置いたお店となっていて、毎期黒字ですが、人手不足が懸念材料となっています。
一方、乙社は、10年前に加入したカレーFC店が主体で、近年は赤字続きで、甲社からの借入金で何とか資金を回している状況です。
そのため、A社長は、甲社の人手不足を解消することも含めて、乙社を会社清算した上で、乙社の従業員を甲社で引き取ろうと検討しています。
■乙社を清算すると・・・
乙社を清算すると、これ以上の赤字拡大が防げますので、グループ全体の経営としては安泰となります。
一方、乙社にある「未精算の繰越欠損金は消滅」してしまいます。
ちなみに例えば、2億円の繰越欠損金は、税率を30%とすると、「2億円×30%=6,000万円」のキャッシュとも考えられます。
また、甲社における乙社への実質的に回収不可能な貸付金ですが、経営者的には、この貸付金を「貸倒損失として費用処理して節税」を図ろうと考えると思いますが、税務上の要件を満たすには実際はハードルが高いことが多いです。
それに対して、乙社では債務免除益に対して課税される可能性があります。
■まさに、税金のツボ!
そこで、こういったケースで、あえて乙社を会社清算せずに、「甲社と合併」させてみてはいかがでしょうか(合併後カレー店を閉店)。
会社清算ではなく合併することのメリットとしては、まずは、税務上の適格合併に該当すれば、「乙社の繰越欠損金の承継が可能」となります。
先述したように、「繰越欠損金×30%=キャッシュ」とも考えられますので、ケースによっては多大なメリットがあります。
もう一つのメリットは、合併の場合は、「貸付金と借入金が混同により消滅」することです。
先述のような、貸倒損失や債務免除益課税の問題がなくなります。
また、税務上の適格合併に該当すれば、含み益のある資産も無税で甲社へ移転できます。
会社をたたむことをお考えの経営者の方は、単純に会社を解散・清算する以外の選択肢があることを、是非知っておいて下さい(このケースの場合は合併)。
まさに、「税金のツボ!」ですね。
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