所得拡大促進税制の改正での要件変更に注意!
リエ「黒田さんお疲れ様です。確認したいことがあるのですがよろしいですか。」
黒田「リエちゃんこんにちは、私にわかることでしたらお答えしますよ。」
リエ「以前、所得拡大促進税制という制度を利用するために、過去の書類を探したりと手間がかかった記憶があるんです。社長から、今年も利用するはずだから、準備を始めておくようにと言われたんですが、年度ごとに条件などが違うのではないですか。」
黒田「確かに大企業については、平成27年度と平成28年度の税制改正で、要件の一つとなっている雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する増加割合が、平成27年度で3%以上、28年度年で4%以上、29年度で5%以上であることが定められていますが、中小企業では平成27年度から平成29年度まで3%以上であればよいことになっています。」
リエ「弊社は中小企業ですから、今期の制度適用にあたって何も変更はない、ということですか。」
黒田「いえ平成29年度の税制改正で、中小企業にも税額控除額の計算方法に変更がありました。『平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること』という要件があったのを覚えていますか?」
リエ「一人あたりの支給額も増加していないといけない、というものですよね。」
黒田「その通りです。この基準ですが、平成29年度の改正で、大企業に関しては、前年比2%以上の増加が要件となりました。増加額が2%未満の場合は所得拡大促進税制が利用できない、ということです。」
リエ「そうなんですね。景気が良くなったので、締め付けているのでしょうか。」
黒田「というよりも、この制度自体があと一年で終了予定なので、最後だから思い切って賃上げを頑張ってほしいということで、前年比2%以上の賃上げを実施した企業に対しては、今まで以上の税額控除を認めるということですね。」
リエ「今まで以上というとどの程度でしょうか。」
黒田「大企業については平均給与等支給額が前期よりも2%以上増加しないと、そもそも制度の適用がないわけですが、2%以上となった場合の税額控除額は、従前の控除額である雇用者給与等支給増加額の10%相当額に、今期の雇用者給与等支給額が前期の雇用者給与等支給額を超える金額の2%相当額を加算できることとなりました。そして中小企業に至っては、この前期を超える金額の12%相当額を加算できることになりました。ただし、調整前法人税額の10%(中小企業者は20%)が上限です。」
リエ「大企業は要件が厳しくなった分控除額が増えるし、中小企業は要件の変更はなく控除額が増えるかもしれないわけですか。従業員の所得拡大への取組みとして、広く浅く認めていた措置を、よりピンポイントで優遇していくんですね。」