顧客カルテを営業ツールとして活かす
建設資材卸売業A社において、営業力強化のお手伝いを始めた。まず行ったことは「顧客カルテ」の整備である。A社の営業課題は御用聞き営業、インストアシェアが低い先が多い、気合型マネジメントであり、その本質は「お客様のことをわかっているつもりで、わかっていない」ということである。
そこで、顧客カルテを作成することにした。このカルテにはインストアシェア、キーマンとの関係度、お客様の取引先と仕事内容、業績、当面の行動具体策などを記入するようになっている。予想通り全然書き込めない。自社が納入可能な商品のインストアシェアと言われても、予想すらできない状況であった。
重要なのは、カルテを作成する途上でお客様理解を深めることである。担当者に尋ねる、配送担当に訊く、倉庫を見る、HPを見直す、興信所データで取引先を調べる・・・などで見えてくるものがある。1社作成するのに2時間程度要し、主力先を作成するだけでも1ヵ月ほど要した。
次はこのカルテをもとに、インストアシェアを何で、どのようにアップさせるかの目標設定を行い、実行具体策を策定した。ここまででやったことは、さほど難しいことではない。
ここで考えていただきたい。営業力強化というと行動などの量的アップ、もしくは提案力強化などの質的アップを行うことが多い。しかし、第一ボタンは「お客様を知る」ということである。お客様を知らなければ対策は絶対に出てこない。「人間関係を作れ」「提案しろ」「キーマンに会え」だけでは、絶対に売上はアップしない。
よって、筆者が営業力を強化したいと考えた時は、まず「お客様を知る」ということから入ることが多い。その次に「原因の明確化」、「対策立案」、「提案営業」、「6ヵ月先行管理」とステップアップさせ、次テーマは営業戦略の再構築へと進化させるようにしている。
「顧客を知らずして営業力強化はありえない」ということである。顧客カルテを“戦略ツール”として活かしているかを見直していただきたい。