事業承継の注意点〜株式の承継編〜
事業承継の注意点〜株式の承継編〜
私はある中小企業(株式会社)の社長を務めています。会社の株式は全部私名義です。私も高齢であり、数年後には引退したいと考えています。
私には、長男・次男・三男がおり、長男に会社を継がせようと思っています。ただ、兄弟仲が良いとはいえず、次男と三男が長男に従わない可能性もあります。将来の事業承継に向けて、今から準備しておくことはありますか?
株式会社では、一定の重要事項を決めるには、株主総会の必要となります。例えば、取締役を選任するには、過半数の株主の賛成が必要です。また、定款を変更するには、3分の2以上の株主の賛成が必要です。
そのため、代表者が迅速な意思決定をするためには、代表者が3分の2以上(少なくとも半数以上)の株式を保有していることが望ましいといえます。
ところが、株主が亡くなると、法定相続分という割合に従って、株式が相続人に承継されるため、ご質問者の例では、長男、次男、三男がご質問者の株式を3分の1ずつ相続することになります。
そうなると、長男が会社の重要事項を決定しようとしても、毎回、次男か三男の同意が必要ということになり、その結果、スピーディーな意思決定が阻害され、会社経営に重大な支障をきたしかねません。
このような事態を回避するためには、どうすれば良いでしょうか。
まず、ご質問者の株式を生前に長男に譲渡しておくという方法が考えられます。ただ、長男が暴走したときに備えて、拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)をご質問者に発行して、最終決定権をご質問者に残しておくという方法もあります。
次に、遺言で株式の全部を長男に相続させる方法もあります。ただし、遺言によって長男のみに株式を相続させるとしても、次男、三男から遺留分を主張されて、長男が株式買取資金を準備しないといけなくなることもありますので、この点は注意が必要です。