医療法人におけるMS法人との取引報告義務とは
(1) 概略(関係事業者との取引の状況に関する報告書)
平成29年4月2日以降に開始する医療法人の事業年度から、一定の関係者との取引については、毎事業年度終了の日から3か月以内に提出する事業報告書や財産目録とともに、『関係事業者との取引の状況に関する報告書』を都道府県知事などに提出しなければなりません。
この制度の目的は、非営利法人である医療法人から、営利法人である株式会社などのMS法人に対して、不当に利益が移転されることを防止することにあります。
この報告制度で注意すべきは、適正な取引内容であるかという点と、適法な取引内容であるかという点です。
(2) 適正な取引内容
適正な取引であるためには、対価や期間などその取引条件が、第三者と締結するに至っても同程度の内容であることが求められます。
したがって、第三者であれば100の対価となる取引が、MS法人取引だと120の対価で行うような取引は適正な取引とはいえません。
具体的には、次のような取引が適正でない取引と考えられます。
〇物品の検品などを行わず、単なる伝票を経由することによって行う物販取引
〇高額な賃料による、リース取引、不動産賃借取引
〇高額な派遣料による人材派遣取引
ただし、社会福祉法人と違って、医療法人が入札等の方法によらず、積極的にMS法人に取引の機会を与えても、その取引内容が適正であるならば、いまのところ税務の点を除き問題とされることはありません。
(3) 適法な取引内容
関係者との取引は、適法であることも当然求められます。『関係事業者との取引の状況に関する報告書』には、取引の内容を記載することになりますが、その内容が適法でない場合には、主務官庁から指導を受ける可能性があると考えるべきです。
例えば、通常の医療法人がMS法人に不動産を貸し付けることは、医療法人の目的外取引のため、たとえその契約内容が適正な対価額であったとしても認められることではありません。
ポイント
〇1,000万円以上の関係者取引など、要件を満たす取引は報告をしなければならない。
〇資本関係が強い法人でも、役員が親族などでなければ報告する義務は生じない。
このコンテンツは、平成28年10月1日現在の法令等によっています。