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権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理案が公表

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 企業会計基準委員会(ASBJ)はこのほど、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」等を公表した。これは、企業が従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権(権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引)を付与した場合の会計処理について取りまとめたもの。当該取引に関する会計処理の取扱いは必ずしも明確ではなく、費用を計上しない方法を採用する企業が多かったことから、ASBJが公開草案を取りまとめ、広くコメントを求めることとなった(パブコメ募集は7月10日まで)。

 本公開草案では、企業が従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」第2項(2)に定めるストック・オプションに該当する案が提案されている。すなわち、この案によると、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合は、まず従業員等からの払込金額を純資産の部に新株予約権として計上する。そのうえで、各会計期間では、権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を費用として計上する。また、新株予約権が権利不確定により失効した場合、計上済みの払込金額は利益として計上することになる。

 この案の根拠として、権利確定条件付き有償新株予約権の付与取引は、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める「報酬」としての性格を持つと考えられることが挙げられている。

 なお、本実務対応報告は、公表日以後適用する方針。公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理(費用を計上しない会計処理)を継続することができる。この場合、当該取引について概要や会計処理を注記しなければならないとされている。

執筆者情報

日本IPO実務検定協会
財務報告実務検定事務局

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 企業会計基準委員会(ASBJ)はこのほど、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」等を公表した。これは、企業が従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権(権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引)を付与した場合の会計処理について取りまとめたもの。当該取引に関する会計処理の取扱いは必ずしも明確ではなく、費用を計上しない方法を採用する企業が多かったことから、ASBJが公開草案を取りまとめ、広くコメントを求めることとなった(パブコメ募集は7月10日まで)。 本公開草案では、企業が従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」第2項(2)に定めるストック・オプションに該当する案が提案されている。すなわち、この案によると、権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合は、まず従業員等からの払込金額を純資産の部に新株予約権として計上する。そのうえで、各会計期間では、権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を費用として計上する。また、新株予約権が権利不確定により失効した場合、計上済みの払込金額は利益として計上することになる。  この案の根拠として、権利確定条件付き有償新株予約権の付与取引は、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める「報酬」としての性格を持つと考えられることが挙げられている。  なお、本実務対応報告は、公表日以後適用する方針。公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理(費用を計上しない会計処理)を継続することができる。この場合、当該取引について概要や会計処理を注記しなければならないとされている。
2017.05.29 09:32:31