81)自社の利益は適切なのか(2)?(総資本経常利益率)
『総資本経常利益率』について、前提となる考え方は前回お伝えした通りで「長期的視点」と「自社の戦略」から一般的に言われる指標に左右されず、自社にとって適正であるポジションを明確にすることが必要であることはご理解いただけたかと思います。一方で、この指標を改善しようとする視点は決算書を読む上で大変有意義ですので、今回はそのポイントを確認しておきたいと思います。
前回ご紹介した計算式を再度確認頂ければ、改善のテーマは大きく2つに絞り込まれます。①総資本をできるだけ小さくする。②経常利益をできるだけ大きくする。というテーマです。具体的には次のようなことを考えていきます。
①総資本をできるだけ小さくする
・売掛金等回収債権に長期滞留しているものや、回収不能なものがありませんか?あれば
処分できないかを顧問税理士等と一緒に検討しましょう。
・棚卸資産の中に、価値が下がっているものや既に使えないものが紛れ込んでいませんか
あれば顧問税理士に相談の上、安売りや廃棄を考えましょう。
・仮払金や立替金、貸付金といったものの中に、本来の経営活動とは関係のない資産が紛
れ込んでいないですか?あれば、できるだけ早いうちに解消して下さい。
・建物や、土地といった不動産、車両が収益に貢献していますか?貢献していない資産は
より貢献できる資産に変えられないか考えましょう。
・固定資産の中に価値が著しく低下しているものがありませんか?あれば顧問税理士等に
相談して時価に引き直せないかを検討しましょう。
・借入れによる余剰資金を抱えていませんか?借入れによる現預金が自社の保有する全財
産をいたずらに膨らませている可能性があります。金利負担等を考慮し、繰り上げ返済
等を検討しましょう。
②経常利益を最大化させる
・経常利益を最大化させることについては、読まれている皆さんの方がそれぞれの事業に
おいて専門家ですから、「売上を最大化し、コストを最小化」という視点から一般論のみ
記載します。
・売上=単価×客数。単価=ブランド力+商品力。客数=新規+リピーター。
・コスト=下げてはいけないコストと、下げるべきコストを明確にする。
「総資本経常利益率」は、自社の資本のすべてを投下して、どの程度の経常利益を出しているかを確認するための指標ですから、別に総資本経常利益率を良くしようという目的でなくても、上述の視点で決算書を見直すことは経営上大変有効です。是非、決算書を経営に役に立つツールにしてください!