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中小企業向け特例措置の適用要件の見直し

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リエ「中小企業向けの税制特例が一部の中小企業において使用できなくなると聞いたのですが、本当ですか。」

黒田「はい。平成29年度の税制改正で、中小企業でも所得が一定の金額以上ある場合には、中小企業向けの特例措置の適用を受けることができなくなりました。本来、中小企業向けの特例措置は、財務基盤の弱い中小企業の支援を目的としています。そして、この特例措置を受けることができる中小企業者とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人で、発行済株式等の総数のうち、同一の大規模法人に2分の1以上又は複数の大規模法人に3分の2以上所有されていない法人をいいます。しかし、大企業並みの所得がある法人であっても、資本金の額を1億円以下にするなどの資本政策により、中小企業向けの税制特例を受けることが可能であったため、本来の趣旨を踏まえて適用要件の見直しが行われました。」

リエ「確かに中小企業向けの税制特例を受けるために、資本金の額を1億円以下にする法人もありそうですね。どのくらいの所得があると中小企業向けの特例措置の適用を受けることができなくなるんですか。」

黒田「事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人が対象となります。これは、日本の資本金の額が1億円を超える大企業の過去10年間の平均所得が約15億円といわれているためです。したがって、過去3年の平均所得金額が15億円を超える場合には、資本金の額が1億円以下の法人であっても、大企業と同様に課税するとのものとされました。」

リエ「なるほど。この改正によって適用を受けることができなくなる中小企業向けの特例措置はどのようなものがあるんですか。」

黒田「今回の改正は、平成31年4月1日以後開始事業年度から適用されます。各特例措置において規定されている適用期限の関係上、今回の改正が適用される前に期限切れとなる可能性もありますが、中小企業向けの特例措置の範囲としては、
1)研究開発税制の総額型の優遇措置
2)所得拡大促進税制の給与等支給額の増加要件の緩和・税額控除の上限の拡大措置
3)所得のうち年800万円以下の金額に対する法人税率の軽減(15%)措置
4)中小企業投資促進税制の特別償却・特別控除
5)商業・サービス業等活性化税制の特別償却・特別控除
6)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
などがあります。今回の改正では、租税特別措置法における中小企業向け特例措置のみを対象としているので、法人税法で規定されている欠損金の繰越控除における100%損金算入、貸倒引当金の損金算入や留保金課税の適用除外などは、引き続き適用を受けることができます。」

リエ「わかりました。うちの会社はもちろんですが、多くの中小企業に影響はなさそうですね。ありがとうございました。」

執筆者情報

アサヒ・ビジネスセンター

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リエ「中小企業向けの税制特例が一部の中小企業において使用できなくなると聞いたのですが、本当ですか。」黒田「はい。平成29年度の税制改正で、中小企業でも所得が一定の金額以上ある場合には、中小企業向けの特例措置の適用を受けることができなくなりました。本来、中小企業向けの特例措置は、財務基盤の弱い中小企業の支援を目的としています。そして、この特例措置を受けることができる中小企業者とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人で、発行済株式等の総数のうち、同一の大規模法人に2分の1以上又は複数の大規模法人に3分の2以上所有されていない法人をいいます。しかし、大企業並みの所得がある法人であっても、資本金の額を1億円以下にするなどの資本政策により、中小企業向けの税制特例を受けることが可能であったため、本来の趣旨を踏まえて適用要件の見直しが行われました。」リエ「確かに中小企業向けの税制特例を受けるために、資本金の額を1億円以下にする法人もありそうですね。どのくらいの所得があると中小企業向けの特例措置の適用を受けることができなくなるんですか。」黒田「事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人が対象となります。これは、日本の資本金の額が1億円を超える大企業の過去10年間の平均所得が約15億円といわれているためです。したがって、過去3年の平均所得金額が15億円を超える場合には、資本金の額が1億円以下の法人であっても、大企業と同様に課税するとのものとされました。」リエ「なるほど。この改正によって適用を受けることができなくなる中小企業向けの特例措置はどのようなものがあるんですか。」黒田「今回の改正は、平成31年4月1日以後開始事業年度から適用されます。各特例措置において規定されている適用期限の関係上、今回の改正が適用される前に期限切れとなる可能性もありますが、中小企業向けの特例措置の範囲としては、1)研究開発税制の総額型の優遇措置2)所得拡大促進税制の給与等支給額の増加要件の緩和・税額控除の上限の拡大措置3)所得のうち年800万円以下の金額に対する法人税率の軽減(15%)措置4)中小企業投資促進税制の特別償却・特別控除5)商業・サービス業等活性化税制の特別償却・特別控除6)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例などがあります。今回の改正では、租税特別措置法における中小企業向け特例措置のみを対象としているので、法人税法で規定されている欠損金の繰越控除における100%損金算入、貸倒引当金の損金算入や留保金課税の適用除外などは、引き続き適用を受けることができます。」リエ「わかりました。うちの会社はもちろんですが、多くの中小企業に影響はなさそうですね。ありがとうございました。」
2017.05.23 10:41:27