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80)自社の利益は適切なのか?(総資本経常利益率)

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 企業は、資本を投下し社会に対して何らかの付加価値を提供し、結果として利益を得ます。皆さんはその利益の金額が適切かどうかについて考えた事がありますか?利益は出なくても問題ですし、出過ぎても問題だと言えます。

 「え?利益は出れば出るほどいいのではないの?」と思われた方もおられるかもしれませんが、一概にそうとも言えません。何故なら、過大な利益は社会からの搾取になっている可能性があり、そうなると社会そのものが疲弊し、社会の構成要素としての企業が永続的に発展していく機会を失うからです。

 一方で、利益が小さかったり、赤字企業であったりすれば、その企業が社会に対して貢献できていないことを意味しますので、できるだけ早く撤退するか、ビジネスモデルの見直しを急ぐ必要があります。しかし、これもまた一概に言えることではなく、長期的視点から一時的な赤字状態を余儀なくされることもあるので、その場合の赤字は問題ないことになります。

 つまり、何れもゴーイング・コンサーンを前提として「長期的視点」から適正な利益を創出するとした場合、自社の「経営戦略」を勘案して、社会全体の視点からどの程度の利益が、自社にとって適正なのかを考えておく必要があるということです。

 その額を測る物差しが「総資本経常利益率(【計算式】経常利益/総資本×100)」です。言葉で表現すると「自社の全財産を投下してどの程度の利益を出せているか?」になります。

 一般的に日経平均等の市場利回りより高くなければ、社会への貢献度は低く、10%程度が望まれ、20%に達すると優良企業であると言われてはおりますが、これもあくまで一般論に過ぎません。所詮法律で定められている「一会計期間」の結果に一喜一憂するのではなく、10年、20年という長期的視点で捉えて行くことが求められるのです。

 次回はこの「総資本経常利益率」について、更にもう一歩掘り下げてみたいと思います。

執筆者情報

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白川 正芳

株式会社楠本浩総合会計事務所 代表取締役
一般財団法人B/S経営をすゝめる会 監事
一般財団法人M&Aで日本を再編成する会 理事
全国会計人共同体 副代表

1997年、株式会社楠本統合戦略マネージメント入社。株式会社楠本浩総合会計事務所へ転籍後、楠本税理士事務所へ7年間出向。その後、2009年35歳で代表取締役に就任。社外内部役員として多くの顧客の支持を集める。事業承継・組織再編・M&A・公益法人を活用した経営改善の支援等々、複雑な手術を手掛ける。

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 企業は、資本を投下し社会に対して何らかの付加価値を提供し、結果として利益を得ます。皆さんはその利益の金額が適切かどうかについて考えた事がありますか?利益は出なくても問題ですし、出過ぎても問題だと言えます。 「え?利益は出れば出るほどいいのではないの?」と思われた方もおられるかもしれませんが、一概にそうとも言えません。何故なら、過大な利益は社会からの搾取になっている可能性があり、そうなると社会そのものが疲弊し、社会の構成要素としての企業が永続的に発展していく機会を失うからです。 一方で、利益が小さかったり、赤字企業であったりすれば、その企業が社会に対して貢献できていないことを意味しますので、できるだけ早く撤退するか、ビジネスモデルの見直しを急ぐ必要があります。しかし、これもまた一概に言えることではなく、長期的視点から一時的な赤字状態を余儀なくされることもあるので、その場合の赤字は問題ないことになります。 つまり、何れもゴーイング・コンサーンを前提として「長期的視点」から適正な利益を創出するとした場合、自社の「経営戦略」を勘案して、社会全体の視点からどの程度の利益が、自社にとって適正なのかを考えておく必要があるということです。 その額を測る物差しが「総資本経常利益率(【計算式】経常利益/総資本×100)」です。言葉で表現すると「自社の全財産を投下してどの程度の利益を出せているか?」になります。 一般的に日経平均等の市場利回りより高くなければ、社会への貢献度は低く、10%程度が望まれ、20%に達すると優良企業であると言われてはおりますが、これもあくまで一般論に過ぎません。所詮法律で定められている「一会計期間」の結果に一喜一憂するのではなく、10年、20年という長期的視点で捉えて行くことが求められるのです。 次回はこの「総資本経常利益率」について、更にもう一歩掘り下げてみたいと思います。
2017.07.25 10:42:23