平均賃金の計算のしかた
労働基準法における「平均賃金」とは、法令で定められている手当や補償、減給制裁の制限額を算定するときなどの基礎となる金額のことです。ここでは、平均賃金の計算方法を解説します。
1. 平均賃金の計算方法
平均賃金は従業員の生活を保障するための意図があることから、通常の生活賃金の現状を反映するように算定することが基本です。
平均賃金の具体的な算定方法については、算定しなければならない事由の発生した日以前3か月間に、その従業員に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割った金額となります。
【平均賃金額の原則】
平均賃金額=直前3か月間の賃金総額(支給総額)/3か月間の総日数(総暦日数)
■ 算定事由発生日
「算定事由発生日」とは、具体的に次表のとおりです。
■ 以前3か月間とは
「以前3か月間」とは、算定事由の発生した日の前日からさかのぼって3か月間のことをいい、事由の発生日は含まれません。また、3か月とは暦日であるから、たとえば5月10日に算定事由が発生した場合には、5月9日からさかのぼって3か月前の2月10日までとなります。賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日からさかのぼって3か月となります。
2. 平均賃金の算定から除かれるもの
算定期間の3か月に次の期間がある場合は、その日数および賃金額は、先の期間および賃金総額から控除されます。
(1) 業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業した期間
(2) 産前産後の休業した期間
(3) 事業主の責めに帰すべき事由によって休業した期間
(4) 育児・介護休業期間
(5) 試みの使用期間(試用期間)
これは、平均賃金の額が従業員の通常の生活費用と比べて不当に低くなることを防止するためです。
3. 賃金の総額とは
賃金の総額とは、算定期間中に支払われる、労働基準法11条に規定する賃金のすべてが含まれます。また、現実に支払われた賃金だけでなく、賃金の支払いが遅れているような場合は、未払い賃金も含めて計算します。ただし例外として、次の賃金については賃金総額から控除されることとなります。
(1) 臨時に支払われた賃金(臨時的突発的事由に基づいて支給されたもの)
例:結婚手当、加療見舞金など
(2) 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金
例:夏、冬の賞与など(3か月ごとに支払われる場合は算入する)
(3) 特別に法令や労働協約で定められていない現物給与
例:住宅手当など
4. 平均賃金の最低保障額
たとえば、日給制、時間給制、出来高払い制、請負制の場合は、算定期間の3か月中に欠勤が多いと平均賃金も低額となります。通常の生活賃金をありのままに算定しようとする平均賃金の趣旨を鑑み、このような場合を考慮して次の算式による最低保障が定められています。
最低保障額=(賃金の総額/実労働日数)×(60/100)
5. 平均賃金の例外
次のような場合も、原則どおりの算定方法を行うことが適当ではないので、例外事項が適用されます。
(1) 雇入れ後3か月に満たない場合
算定事由の発生した日以前に3か月間の期間がないので、雇入れ後の期間とその期間中の賃金で算定します。
(2) 日々雇い入れられる者の場合
稼働にムラがあるばかりでなく、日によって就業する事業場を異にし、賃金額も変動することが多い。したがって、厚生労働大臣が別に定める金額を平均賃金とします。