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遺産分割と固定資産税

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未分割の相続財産に対し法定相続分の割合で課税された固定資産税について、相続人が後で成立した遺産分割協議に基づく分割割合通りに課税を見直すよう課税庁である桑名市に審査請求した事案で、桑名市は、相続開始時にさかのぼって法定相続分と異なる遺産分割の効力が生じるとしても、未分割時点の課税に影響はないとする裁決を下していたことが明らかになりました(平成29年3月3日、行政不服審査裁決・答申検索データベース)。

裁決書によると、この事案は平成25年に開始した相続に端を発するもので、相続人サイドでは調っていませんでした。このため桑名市はいったん平成26年度分、27年度分の固定資産税について被相続人名義で賦課していました。その後遺産分割協議は、平成27年になってようやく終了したため、相続人は未納固定資産税のうち遺産分割協議に基づき相続し固定資産を限度に支払申出をしました。しかし、桑名市は平成28年10月に平成26年度分、27年度分の固定資産税について法定相続分に応じた課税に改めて相続人に納税通知書を送付したことから争いになったものです。

審理した桑名市は、次の事柄を確認しました。

1、固定資産税は、課税上の技術的考慮から、その年の1月1日に登記簿又は補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者を「所有者」としてこれに固定資産税及び都市計画税を課するとしていること(地方税法343条1項ほか)。

2、ただし、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき同日において当該士地又は家屋を現に所有している者に課され
ること(地方税法343条2項後段)。

3、賦課期日の時点で登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録された者は、賦課期日の時点における真の所有者でなくても、固定資産税の納税義務を負うものであり、真の所有者がこれと異なる場合における両者の間の関係は、私法上の求償等に委ねられているものと解されていること(最高裁昭和46年(オ)第766号同47年1月25日第三小法廷判決)。

4、地方税法10条の規定が準用する民法第432条の規定により、「数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは1順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる」とされていること。

こうしたことから桑名市は、この事案の場合、納税義務者は被相続人の法定相続人となり、平成26年度分、27年度分の賦課期日時点では遺産分割が未了で具体的相続割合が決まっていなかったため法定相続分に応じて取り扱うことを明確にしたもので、相続開始時にさかのぼって法定相続分と異なる遺産分割の効力が生じるとしても、未分割時点の課税に影響はないとして相続人の請求を退けています。

この記事の執筆者

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遠藤 純一

株式会社タクトコンサルティング
税理士法人タクトコンサルティング
情報企画室 課長

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未分割の相続財産に対し法定相続分の割合で課税された固定資産税について、相続人が後で成立した遺産分割協議に基づく分割割合通りに課税を見直すよう課税庁である桑名市に審査請求した事案で、桑名市は、相続開始時にさかのぼって法定相続分と異なる遺産分割の効力が生じるとしても、未分割時点の課税に影響はないとする裁決を下していたことが明らかになりました(平成29年3月3日、行政不服審査裁決・答申検索データベース)。裁決書によると、この事案は平成25年に開始した相続に端を発するもので、相続人サイドでは調っていませんでした。このため桑名市はいったん平成26年度分、27年度分の固定資産税について被相続人名義で賦課していました。その後遺産分割協議は、平成27年になってようやく終了したため、相続人は未納固定資産税のうち遺産分割協議に基づき相続し固定資産を限度に支払申出をしました。しかし、桑名市は平成28年10月に平成26年度分、27年度分の固定資産税について法定相続分に応じた課税に改めて相続人に納税通知書を送付したことから争いになったものです。審理した桑名市は、次の事柄を確認しました。1、固定資産税は、課税上の技術的考慮から、その年の1月1日に登記簿又は補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者を「所有者」としてこれに固定資産税及び都市計画税を課するとしていること(地方税法343条1項ほか)。2、ただし、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき同日において当該士地又は家屋を現に所有している者に課されること(地方税法343条2項後段)。3、賦課期日の時点で登記簿又は補充課税台帳に登記又は登録された者は、賦課期日の時点における真の所有者でなくても、固定資産税の納税義務を負うものであり、真の所有者がこれと異なる場合における両者の間の関係は、私法上の求償等に委ねられているものと解されていること(最高裁昭和46年(オ)第766号同47年1月25日第三小法廷判決)。4、地方税法10条の規定が準用する民法第432条の規定により、「数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは1順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる」とされていること。こうしたことから桑名市は、この事案の場合、納税義務者は被相続人の法定相続人となり、平成26年度分、27年度分の賦課期日時点では遺産分割が未了で具体的相続割合が決まっていなかったため法定相続分に応じて取り扱うことを明確にしたもので、相続開始時にさかのぼって法定相続分と異なる遺産分割の効力が生じるとしても、未分割時点の課税に影響はないとして相続人の請求を退けています。
2017.04.11 15:53:03