実践! 経営コーチ

  病院経営を軌道に乗せる
  −必要な情報を集めることが大切−



日本経営コーチ協会 アドバイザリーボード
中小企業診断士
: 伊地知 克哉



整形外科を開業して3年になるB医師が浮かない顔をしている。経営コーチがそれとなくその理由を聞くと「医院の経営って、難しいものですね」とポツリ。B医師は大学病院で整形外科部長を務めた経歴を持つ。腕は確かなのだが、経営に関する知識は、ほとんどない。大学病院時代からB医師を知る患者は、遠くから足を運ぶが、なかなか新規の患者が思うように増えない。開業するにあたっては銀行から巨額の融資を受けた。最終利益からその返済分を差し引くと毎朝のキャッシュはそれほど残らない。経営コーチが決算書を見ながら原因を解説し、B医師もその内容は理解していた。


B医師
最近は病院も倒産するところが増えてきましたが、私も開業してみて病院経営は難しいなと実感しています。


経営コーチ
Bさんのイメージする理想の病院経営とは、どのようなものですか?(リフレーミング)


B医師
と言われても、特別イメージのようなものはないのです・・・。悪い病院経営のことは自分のこととしてわかるので、よい病院経営とは何が違うのか、この点を明確にすることから始めないと、イメージもわかないように思います。


経営コーチ
よい病院経営とそうでない病院経営の違いは何か、ということですね。(確認) そのことに照らし合わせて、今の時点で具体的に改善が必要と考えていることはありますか。(オープンクエスチョン)


B医師
そこまではまだ・・・。ただ、よい病院経営について調べる必要は感じています。


経営コーチ
よい病院経営(トラックバック)の情報はどうやって入手しようと考えていますか?(オープンクエスチョン)


B医師
病院経営の本を買ったり、業界誌もいくつか取ったりしているのですが、読書時間も限られているので、なかなか全部に目を通せなくて・・・。


経営コーチ
たくさんあるようですね。業界誌を通じて、Bさんが一番知りたい情報は何ですか。(オープンクエスチョン)


B医師
よい経営に関する情報です。


経営コーチ
その情報が一番豊富にある業界誌はどれですか。(オープンクエスチョン)


B医師
あ、そうか。情報を取捨選択すればよいのですね。そもそも取捨選択ができるなら、このようなことでは悩みませんね。


経営コーチ
私も同じことで悩みました。ちょっと私の経験を話してもいいですか?(提案)


B医師
ぜひ、お願いします。


経営コーチ
私も仕事柄、業界誌は税務・会計に限らず多数購読しています。ただ、つねに自分が知りたいと思っている情報アンテナを立てておくと、自然と気になる見出しがめにつきますよ。不思議ですね。
ところで、業界誌の他に情報を入手する方法は思いつきますか。(オープンクエスチョン)


B医師
やはり、業界誌で得られた情報をもとに、よい病院を訪問して、自分の経営に生かせることがないか、行動することだと思います。


経営コーチ
実際にご自分の目で確かめるということですね。(言い換えによる確認)


B医師
はい。情報誌の記事は他人の目(フィルター)を通した主観が混じっていることがありますから。


経営コーチ
おっしゃるとおりですね。(受容)その他に、一番安上がりな方法は何だと思いますか。(オープンクエスチョン)


B医師
一番安あがりですか。そうですね・・・。


経営コーチ
・・・。(沈黙)


B医師
コストパフォーマンスがいい方法ですよね・・・。


経営コーチ
Bさんにとって、コストとは具体的に何ですか。(オープンクエスチョン)


B医師
情報収集に関する費用ですね。


経営コーチ
そうですね。(受容)
では、パフォーマンスとは具体的には何ですか。
(オープンクエスチョン)


B医師
一番、私にとって効果的な情報とか、有効な情報です。


経営コーチ
その情報が入手できたとして、一番、達成したことは何ですか。(オープンクエスチョン)


B医師
それは、新規の患者さんに意見を聞くっていうのも情報入手ですよね。


経営コーチ
そのとおりです。(受容)
やる気がわき出てきた感じがしますね。


B医師
はい。そうか、まさに「灯台下暗し」ですね。なんで、こんなことに悩んでいたのかな(笑い)。


経営コーチ
(笑)患者さんに喜ばれているなと感じるときは、どんなときですか。(オープンクエスチョン)


B医師
そういえば先日、ある患者さんの診察の際、「どんな姿勢で仕事をしていますか」と、痛む箇所をことこまかに聞いて、痛みをやわらげるストレッチ方法を描いた手作りの小冊子を差し上げたのです。すると、とても喜ばれ、ものすごく感謝されたんです。自分では、そんなに喜んでもらえるものとは思っておらず、冊子を差し上げたのも自然な、軽いサービスのつもりでしたので。開業以来、こんな経験は初めてだったので、私自身もすごくうれしかったですね。


経営コーチ
うれしいですね(受容)
それは医師としての充実感というか、達成感のようなものですか。


B医師
はい。そうですね。


経営コーチ
他の患者さんには、その小冊子を差し上げてはいないのですが。


B医師
はい。あのときが初めてでした。


経営コーチ
Bさんの思うよい病院、理想の病院像が少し見えてきたのではないですか。(オープンクエスチョン)


B医師
そうですね。患者さんに喜ばれる私なりのやり方を追求追究することが必要で、そのために必要な入手できるよう、アンテナを立てておけばいいのですね。それには業界誌のような外部情報も必要ですが、もっと身近なところにも情報源があるんですね。


経営コーチ
患者さんによって感謝の気持ちは個人差があるんでしょうから、引き続き業界誌も参考にしながら、Bさんの理想をより高められてはいかがですか。


B医師
はい。早速、参考になりそうな記事を探してみます。


経営コーチ
では、途中で進捗状況を確認するのはいつにしましょうか。


伊地知 克哉 (いじち かつや)

中小企業診断士伊地知克哉事務所 中小企業診断士

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