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経営コーチコラム

  相手を思いやる気持ち


日本経営コーチ協会理事 税理士・経営コーチ
瀬尾 暁史



 皆さんこんにちは。日本経営コーチ協会理事の瀬尾暁史です。

 まずは、3月11日に発生しました「東北地方太平洋沖地震」で被害を受けた皆様に対し、心からお見舞い申し上げます。

 さて、震災後、全国の皆さんが「今、私達に出来ること」を考え、行動しています。日本人の素晴らしさを改めて認識するような心温まるエピソードが沢山聞こえてきています。そこには、日本人の大きな特徴でもある「相手を思いやる気持ち」があふれているように思います。

 そこで今回は、「相手を思いやる気持ち」にポイントを置いた、経営コーチならではの「今、私達に出来ること」について一緒に考えてみたいと思います。

 皆さんもよくご存じの通り、経営コーチを別の言葉で表現すると、「リーダーシップやマネジメントといった経営の知識と、それを的確に伝えるコーチングのスキルを持った会計人が、税務だけでなく経営面でも経営者のサポートをすること」となります。 当たり前の話ですが、この「経営者のサポート」と言うところが非常に重要ですね。 では、具体的に今求められているサポートとは何なのでしょうか?

 経営者の方々は、「今月の資金繰りは大丈夫だろうか?」とか「商品の手配はうまくいっただろうか?」とか「担当のあいつがもっとしっかりと成長してくれていたら」などと「人」「物」「金」の全てについていつも悩んでいます。つまり、ほぼ24時間いつも何らかの問題を抱えているのです。いつも不安と不満を持っているのです。特にこの非常事態です。悩んでいない人はいないと言って良いでしょう。

 そんな経営者に私達経営コーチは何が出来るでしょう?何をサポートして差し上げられるのでしょう?

 誰もが経験したことのない不安に対しては、明確な答えを持っている人は少ないでしょう。いや、皆無といった方がよいかも知れません。

 でも、経営コーチの皆さんなら、経営者の抱える悩みの種を減らしてあげることが出来るかも知れません。または、たとえ減らすことは出来なくても、軽くしてあげることは出来るかも知れません。

 経営者の皆さんから、「ありがとう、おかげでちょっと気が楽になった。」そう言ってもらえただけでも嬉しいですよね!

 では、どうすればいいのでしょう?

 私は、第1のポイントは「経営者の傍にいて差し上げること」だと思っています。本当に横にいることが出来なくても、心で傍にいて差し上げること。そして悩みに共感してあげることです。これは同情することとは少し違います。心の中で突き放すようなことをせず、寄り添ってあげることです。これが「相手を思いやる気持ち」だと思います。 これが出来た上で解決策を提案できるのであれば言うことはありません。ただし、くれぐれも気をつけなくてはいけないのは、この「相手を思いやる気持ち」を表現しないまま、解決策を提案しても意味がないと言うことです。今問題にしているのは悩みを抱えた経営者という名の人です。そして私達は「経営コーチ」という名の人です。大切なのは、人と人との交流です。心と心の交流です。一人一人の人間味を出してこその「経営コーチ」だと私は思っています。

 さて、経営者の悩みを減らしてあげる為に行うべき第2のポイントは、「経営者の悩みを整理して差し上げること」です。

 先ほども言いましたが、経営者の皆さんは常に不安と不満を抱えています。一つの不安がよぎった後、「あ、でもこっちも気になる・・・」と頭の中で不安が浮かんでは消え、浮かんでは消えといった状況になりがちです。

 そういったときに、お話を聞きながらノートに箇条書きで良いですから書き出してあげるのです。皆さんも自分自身に対して試して頂きたいのですが、この「頭の中で考えていることを文字にする行為」だけでも悩みは随分とすっきりします。しかし、経営コーチの皆さんには、これにもう一工夫して欲しいと思います。

 それは、ジャンル分けです。「これとこれは同じような悩みですね?」とか「この悩みはここ1ヶ月以内のことですけど、こちらは4〜5年先の話ですね。」とか相手の方と話をしながら仕分け作業を行うわけです。仕分けの基準は先ほど言った「人」「物」「金」であったり、時系列であったりその時々で柔軟に対応して頂ければいいでしょう。 頭の中でいろいろと悩んでいた事を、ノートに書き出し、整理してあげることで不安が目に見えるものとなります。その結果、不安が劇的に解消されることもあります。

 そして何よりもこの作業を通じて一番の効果は、「傍にいてくれている」という安心感を経営者の方に持ってもらえることです。悩みをただ聞くだけでなく、理解しようとメモを取る。その行為が相手の方に「聞いてもらえた」という安心感を与え、不安を軽減させるのです。


 以上、経営コーチならではの「今、私達に出来ること」について、「相手を思いやる気持ち」をポイントに、一緒に考えてみました。

 いかがでしたでしょうか?

 これからも大変な時代が続くと思います。経営コーチの皆様におかれましては、それぞれの地域で使命感を持って行動して下さるようお願いいたします。一緒に頑張っていきましょう!


瀬尾 暁史 (せお あきふみ)

瀬尾税理士事務所 所長・税理士・経営コーチ。

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