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経営コーチコラム

  〜『能率学』という考え方〜


一般社団法人日本経営コーチ協会
理事長  榎本 恵一



 最近の景気経済や地域を見ていて、皆さんはどのように感じていらっしゃいますか?私は会計事務所側から、新しいパラダイムを動かしていかなければならないのでは?と思うのです。これはまさに、私達が活動している「経営コーチ」の根幹だと考えております。経営者と寄り添いながら、新しい時代を見ていく。これが、これからの「経営」という事に関して、とても重要なインパクトを与えていくのだと思います。

 私は産能大学大学院で経営学を2年ほど学びました。それをきっかけに経営学の重要性と面白さに気づき、その後も学びを深めていきました。

 なかなか会計事務所の方は、税理士試験科目に“経営学”が無い為もあって、日頃現場で「経営」を見てはいても、学問として学ぶ機会は少ないものです。よって今回は、「経営」というものについて少し考えてみたいと思います。

 産能大学創設者は、上野陽一氏(1883年―1957年)が創設されました。上野氏は、心理学研究から産業能率を考え、「能率の父」と呼ばれています。アメリカのテーラーによって、ストップウォッチを使って“どのように管理をしたら上手くいくのか”など「科学的管理法」というものが研究されていた頃、日本ではどのようにすれば上手くいくのか、ということを研究なさっていた方です。この上野氏が提唱していたことが、「『ムリ』『ムダ』『ムラ』(=三ム)を無くすこと」。

 これは、無理なものは無理、無駄なものは無駄、無理と無駄を繰り返すと「ムラ」になる、という事を現しています。これを経営において、常に考えていくことが大事だという話なのです。例えば、バス停に20人が待っているとします。そこへ100人乗りのバスが来たとしましょう。これは、「無駄」です。そんなに大きなものを用意する必要は無いのです。次に、では今度は10人乗りのバスが来たらどうでしょう?これは、「無理」です。待っている20人を乗せることができないから、無理なのです。更に、それを交互に繰り返していると「ムラになる」ということなんです。そのようになると、経営において能率的になりません。目的と手段を間違えてしまうと、これらの『ムリ』『ムダ』『ムラ』となってしまうのです。これは、今までのメジャーを使って考えると、「これは無理」「これは無駄」ということで解決出来ますが、今回の私の提言としては、今までのメジャーが通じなくなった現在、何が無理で何が無駄なのか、ということについて、新しい尺度を設けるべきではないのでしょうか?それは会計事務所側が、新しい考え方や新しい気づきを「社長、このようなやり方もあるのではないでしょうか?」というようなコーチングをして、提案してみるのも一つではないでしょうか?

 100年に一度といわれる「変化の時代」。過去の概念に捕らわれない新しい問いかけを、業種毎に心がけてみてはいかがでしょうか。


榎本 恵一 (えのもと けいいち)

税理士。榎本会計事務所 所長。株式会社イーシーセンター代表取締役。(社)日本経営コーチ協会理事長。

日夜顧問先である中小企業の支援に励み、特に財務や経営に関するコンサルティング・人事コンサルティングには定評がある。現場での経験をふまえたセミナー・講演、インターネットラジオや書籍などでの情報発信にも精力的に取り組んでいる。著書多数。

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