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経営コーチコラム

  経営コーチになるための日々の取り組み


一般社団法人 日本経営コーチ協会 監事
税理士  浅沼 孝男



 弊社では社員が入社すると、「浅沼経営センターグループ 社員基本ファイル」という、弊社社員として必ず徹底・実行していく「約束」を書いたファイルを渡します。弊社の社員が真の「経営コーチ」になるために、日々取り組んでいることをご紹介させていただければと思います。

 「社員基本ファイル」は3部構成となっていて、「会社の理念等の解説」や「業務遂行上の具体的な約束事」「日常のビジネス行動基準」などを具体的に記述しています。

 その冒頭の「第一部 会社の理念・基本」としては、弊社が定めている「1つの経営理念」「2つの企業目的」「3つの習慣行動」「5つの基本」「7つの実践行動」について、詳細に解説しています。これらは「会社の憲法」というべきものであり、「唱和カード」を作り、毎日の朝礼や全体研修の前に必ず全員で唱和しています。

 この「弊社の憲法」に書いてあることすべてが「経営コーチ」を目指す「根本」です。

 (以下、弊社「社員基本ファイル」からの抜粋)



■(経営理念)  人にいきいき、経営に体力

 「社員がいきいきと働いている会社・経営体力が磐石な会社」

 企業経営者が描く理想の会社像である。

 いきいきと活力みなぎる朝の太陽のような輝く会社を目指している経営者の皆様の最も身近なサポート役となる。

 そして、我々も「社員がいきいきと働き、経営体力のある会社」を目指していく。これが、我々の経営理念である。


 当社のお客様は、顧問をいただいている会社の「社長」である。


 「社長業」とは、突き詰めて言えば、「決断業」「責任業」である。「最終決断を最終責任を持ってやる」というのは大変つらいことだ。

 社長の後ろには誰もいない。毎日孤独な決断を、大きなことから小さなことまでしなければならない。「上司に相談してきます」「会社に帰って相談してきます」と言えたらどんなに楽かを、社長は身を切り刻んで実感し、重い荷物を背中から一生離せない。でも、だからこそ社長なのである。もしそれがいやなら辞めるしかないが、借金もある、社員もいる、その家族もいる、もう辞めるわけにはいかない。社長は孤独である。

 そんな時に、「売上アップ」「取引先拡大」などを、我々がお手伝いできるわけではない。その会社の「仕事」については素人だから。

 また、お金を貸してあげるわけにも現場を手伝ってあげるわけにもいかない。

 でも、「がんばってください。」とエールを送る応援団で有りつづけ、「なるほど。そうですね」とある時は聞き役になりながら、「社長の最も身近なサポート役」となれるのは、我々しかいない。

 何故だろうか?


 それは、我々の仕事が他の仕事や業種に比べ、次の3つの特殊性(恵まれた立場)を持っているからである。

(1)決算書など会社の機密情報を知っている。(他の職種ならどうか?)
(2)定期訪問ができ、社長にいつでも会える。(他の仕事ならどうか?)
(3)直接の利害がない。(金融機関や取引先ならどうか?)

 「お役に立ち」更に「頼りにされ得る仕事」からこそ、誇りのある仕事である。「役に立つ仕事」は世の中にたくさんある。しかし、「頑張れば頼りにされる仕事」という表現にあった仕事はいくつあるだろうか。

 我々は、その仕事を「理念」と掲げて行っていく。


 ここで、「経営に体力」という言葉を使っており、「経営に豊かさ」とは言っていない。「豊かさ」はもちろん必要であるが、物質的な「豊かさ」は、宝くじのような運で得られることもあるし、一夜にして失ってしまうこともある。

 しかし、体力は、日々の地道な努力の結果得られるものであり、また、一夜にしてなくなってしまうものではない。特に、企業体力は、日々の丁寧な経営の結果、得られるものである。我々は、その体力づくりのサポートをしていこう、という意味をもっている。


 顧問先の社長が「誰かに相談したいな」と思った時に、真っ先に当社の役員・社員の顔が浮かぶような会社を目指し実現していく。



■(2つの企業目的) 編の中から…

 1.経理・税務・診断と利益計画で、経営者の皆様へのお役立ち

 当社の母体会社は「会計事務所」である。「会計事務所」は、言うまでもなく「決算と税務申告」が専門業である。「決算と税務申告」を正しく行うということを業としていれば、それで「会計事務所」としての用は足りる。

 ということは、月次でお客様を訪問し社長へ月次の報告などしなくても、決算事前の相談を受けなくても、提出期日の前日になって、決算書の説明や診断などはなく、「いくらの税金です。署名してください。」と申告書を持ってきても、問題はない。「決算と税務申告を正しく行うこと」には、これらは入っていないのだから・・・。

   (中 略)

 しかし、これで本当にいいのだろうか? 真に経営者のお役に立っているのだろうか。

 我々の仕事の恵まれている点を振り返ってみよう。

(1)決算書など会社の機密情報を知っている。(他の職種ならどうか?)
(2)定期訪問でき、社長にいつでも会える。(他の仕事ならどうか?)
(3)直接の利害がない。(金融機関や取引先ならどうか?)

 「お役に立ち」更に「頼りにされ得る仕事」からこそ、誇りのある仕事である。「役に立つ仕事」は世の中にたくさんある。しかし、「頑張れば頼りにされる仕事」という表現にあった仕事はいくつあるだろうか。

 「決算と税務申告」だけを「頼んだ・頼まれた」ことだけにとどまらず、当社独自の次のような商品を生かして、経営者の皆様のお役に立っていこう

(1)その場で会計 (2)決算診断提案書 (3)益計画・事業計画
(4)中間決算検討書 (5)決算予測検討書




■(3つの習慣行動) 編の中から…

 3.仕事は「やる」ものではない。仕事は「届ける」ものである。

  「お客様の立場に立って行動する」


 毎日我々が唱和している「7つの実践行動」の一番目に書いてあるこの言葉は、最も根幹の実践行動です。その具体的な行動は次の意識から生まれます。

 『仕事は「やる」ものではない。仕事は届けるものである。』

 「単に仕事をやる」という「自分からのの意識」ではなく、仕事を言葉を届ける」という「相手へのの意識」を持つことです。

 そのためには、お客様との日常の会話ひとつ・行動ひとつをどうすればよいか全員しっかり考えて、お客様に接することが非常に大切です。


 例えば、「その場で会計報告書」や「四季シリーズ」は、「月次」「決算」という「仕事」を「届ける」重要な商品です。これがなければ、試算表や決算書だけで、理解いただける社長はどれほどいるでしょうか

 例えば、日常的に次のことなどに気を使っていますか?

 (1) 「専門用語」「略語」は使っていませんか。
「言葉」が共通しなければ、「お客様の立場に立つ」どころではありません。お客様ごとの理解レベルがありますから、専門用語が全部ダメということではありませんが、そのお客様は理解していますか?

(2) しゃべり続けていませんか。
「説明をする」と言っても、しゃべり続けることは厳禁です。
何かその場面でお客様が聞きたいこと・質問したいことはありませんか。

(3) 漫然と話をしていませんか。話のポイントは?一つの文章の区切りは?
ポイントも何も考えず、漫然と話をしないこと。「この話の重要なポイントは3つなんです」や「次の話が最も大事なのですが…」というように強弱をつけないと漫然としてしまいます。
また、漫然と「何々で〜何々で〜何々ですから何々ですけど〜」のように「区切りのない話」は、聞いている方は何がなんだかわからない。


 「社長へ内容を説明したから、伝えたから、自分の仕事は終わった。」とは決して思わないこと。

 あなたの仕事は、社長に届きましたか?



■(7つの実践行動) 編の中から

 1.お客様の立場に立って行動する

 「経営理念」「2つの企業目的」「3つの習慣行動」「5つの基本」の実現は、日々の行動の積み重ねである。この実現のための「7つの実践行動」を定めている。

 このうち最も根幹的なもの、それは7つの項目の一番目に書いてあるとおり、

 「お客様の立場に立って行動する」である。

 しかしどうだろうか。本当に「お客様の立場」「お客様の気持ち」に100%なることが可能だろうか。

 答えは「NO」だと思う。

 逆説的ではあるが、「だからこそ、100%なり切れないからこそ」毎日の朝礼で唱和するのである。

 何故だろうか。


 会計・税務の仕事を例にとれば、会計・税務のプロであり決算書・申告書を日々見慣れている我々が、会計・税務を業としていない「社長」の「脳」にはもう二度となれないからである。

 自分の脳から「会計・税務の知識」を消去し、かつ、年にたった一度だけ「決算書・申告書」を見る立場にはなれないからである。

 また、初めて税務調査の連絡を受けて、夜も寝られないほどの緊張をしている社長や奥さんの気持ちにも100%なることはできないし、相続があって、一生に一度の悲しみと混乱の中でさまざまな相続手続きの話を聞く相続人の気持ちにも100%なることはできない。

 何故なら、我々にとっては日々の「仕事」だから……。


 これは我々の仕事だけでなく、あらゆる業界で「仕事の供給者」と「消費者」の間で言えることである


 洋菓子において、日本で第一人者のシェフの方の言葉がある。

……洋菓子の仕事をしている私は、どんなケーキを食べても「材料はあれを使っているな。原価率は…デザイン的には…」というようにケーキを分析しながら食べてしまいます。「おいしい、きれい」など、普通のお客様が素直に感じる心に100%なることは、もう不可能なんです。でも私のケーキを食べていただくのはその道のプロではなく、ごく一般の方々なんですね。

 だからこそ「その心に100%はもうなれないんだ、少しでもその心に近づくんだ」という謙虚な気持ちを持ち続けることが大変重要だと思うのです……。


 100%お客様の心になることは、絶対に「もう」不可能であるからこそ、「お客様の立場に立って行動する」という謙虚な意識が何よりも重要であり、実践行動の一番目に書いたのである。


 弊社の社員がお客様の立場に立った真の「経営コーチ」になるためにリーダーシップ・マネジメント・コーチング技術の習得が不可欠です。そしてお客様に向かったマインドを常に磨き、経営者の良きサポート役として機能するようになれば、中小企業に活力も生まれるでしょう。ひいては、地域経済の再生につながると信じています。


浅沼 孝男 (あさぬま たかお)

浅沼経営センターグループ社長。浅沼みらい税理士法人代表社員。

立教大学経済学部卒業。社団法人日本経営コーチ協会監事。(株)浅沼経営センターは、「決算診断提案書」で地域ナンバーワンである。決算書の数字を分析すると決算(経営)診断となり、今の課題と未来の方向性がわかる 。

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