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経営コーチコラム

  日本を元気に!


一般社団法人日本経営コーチ協会 理事
税理士  福田 英一



 私ども経営コーチは『日本を元気にするため』に法人や個人事業主に対して会計や税務のみならず「コーチング」「マネージメント」「リーダーシップ」という3つの技法を日々研鑽している会計人のクループです。ここでは私なりに、我が国、日本の現状を考えてみました。


■経営力が社会を変える!

 公共性の高い事業に関しては、金儲け第一主義の民間に任せてはいけない ―― これが、長い間、日本の常識でした。

 ところが、教育、医療、福祉・介護など、事実上、「官」が牛耳っている公的な事業が今、崩壊の危機に直面しています。学校でのいじめ、病院におけるたらい回しや医療過誤、老人ホームでのお年寄に対するぞんざいな扱い…。

 官の立場に立つ人たちは、公的サービスは民間に任せるとどうなるかわからないのではないのでしょうか?だから、官が徹底管理しなければいけない、と主張し続けてきた。その結果が、この「ていたらく」なのではないのでしょうか?

 本来、公の仕事は「民」のためにあるものです。ならば、官任せにせず、民が自らの力で公の仕事に関わっていくべきではないでしょうか?

 それでは、官になくて民にあるのは何でしょうか?それは「経営」です。


 具体的には、誰がお客であるか、サービスを受けるお客にとって最大の幸せとは何かを明確にすることです。そして、理想を同じくする人たちと仕事を改善していく。以上の経営手法で十分改善可能です。

 社会は経営力で変えられます。そしてそれは、消費者(=国民)主導による直接民主主義の始まりです。だからこそ、国民1人1人は「もう、国には頼らない」という気構えを持たねばならないのではないでしょうか?


 人間にはもっと成長したい、もっと高みを目指したいという意欲や衝動が備わっています。

 競争というものは本来、他人と争うことではなく、自分自身との闘いであると思います。

 自分との闘いは個人の内面の問題です。だから、「きついな」と思えばすぐやめられる。そこで、自分と闘いつつ自分を高めるには、まず身近な他人をライバルとして設定する必要があります。


 100メートル走を1人で走るのと、2人で走るのとでは、後者の方が良い記録が出ます。しかも、参加選手が増えるほど、記録は次々と更新され、みんながより高い記録を目指すようになります。

 皆さんも良きライバルを持ち、切磋琢磨しましょう!



■自分の足で歩け!

 ユダヤ教の中心戒律に、「十戒」があります。

 この十戒には、1つの大きな特徴があります。条文が全て「あなたは…してはならない」という形、つまり二人称単数形で書かれていることです。

  法令というものは、一定の集団に対して与えられます。対象が集団である以上、条文の形が「あなたがた」と複数形になるのが当然なのですが、十戒ではわざわざ単数形が使用されています。

 その文意は、他人はどうあれ、あなたはしてはならないということです。他人がすることは関係ない、とにかくあなた1人の問題だというのです。

 人は自分の責任を「みんな」に転嫁する傾向を持っている。エデンの園で禁断の木の実を食べてしまった責任を、男は女に、女は蛇に押しつけた。人類最初の罪は、この責任転嫁にあったと言われています。

 集団意識の強い日本では、1人だけで動き出すのは確かに難しいと思います。でも誰もやらなければ、事態は変わりようがありません。まず自分から始めることですし、私たち経営コーチはコーチング等の手法を使って中小企業の経営者に動いていただくための原動力をさしあげる事ができます。

 誰一人現状に満足していないのに、誰も自ら動かない ―― 集団の実状というのは、得てしてこうしたものです。やることといえば、互いの足の引っ張り合い。標準から少しでも外れそうな者は、勝手だとか言って引きずり下ろす…。集団意識になど、最初から大した意味はないのです。



■日本は技術を失いつつある

 では、こうした時代の変換に、日本はどのようなスタンスで臨むべきなのでしょうか?

 「今後の日本は金融産業を発達させ、その運用で国を支えてゆくべきである」という議論もあります。

 しかし、国として足場を置くべきはバーチャルな金融の世界よりも実体経済です、そこでの主役は、やはり技術であり知識です。

 1990年代における米国経済の復活の過程をたどれば、その原動力はシリコンバレー等を中心とする技術者たちの知的集約にあったことがわかります。

 マイクロソフトのビル・ゲイツはソフトウエア技術者でした。グーグルの共同創設者のラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンも技術者です。つまり、米国経済の復活のカギは「技術」だったと言えます。

 逆に、日本経済が90年代に不況に陥ったのは、1つには時代が転換期を迎え、IT産業の勃興やアナログからデジタルへの急速な移行が起きたのに、各社がバブル崩壊の処理に追われて積極的な投資をせず、時代の変化に乗り遅れたことが原因です。

 07年の世界シェアを見ると、パソコンではデル、ヒューレット・パッカード、レノボが、携帯電話でもノキア、モトローラ、サムスン電子が上位を独占し、日本企業は下位に追いやられてしまっています。


・優れた技術者が育つ「土壌」が消えた

 日本企業は今後、欧米企業の他に、中国やインド、韓国の企業などとも競争しなければならないのです。

 その競争に負けないために重要となってくるのは、やはり技術です。

 技術的な優位の維持のためには、2つの方向で努力が必要です。

 1つは、新しい技術を維持していくための、知的なエリートを養成していくことです。

 もう1つは、企業の現場における職人的な技術力です。現場の生産技術こそ、日本のメーカーを世界のトップに押し上げていった原動力でした。

 しかし、残念ながら今の日本では、そのどちらも急速に弱体化しつつあります。

 このままでは、特に製造業における高度な技術教育を受けた人材の層やレベルで、韓国、中国、インドに後れをとることは避けられないでしょう?

 この点においても、私たち経営コーチの力で「日本の技術」を守っていきたいと考えています。



■利益の源泉とは

 企業にとっての「利益」。それは、企業に投資された資本の増加額のことであり、企業活動を通じて獲得されるものです。

 そして、その企業活動から生み出される価値が「付加価値」で、これは、売上高から外部に支払った費用を差し引いて求められます。

 つまり、社員や投資家への分配の元になるパイの大きさを示すものであり、その意味で付加価値は、まさに「利益の源泉」といえます。

 今、厳しい状況にある日本企業にとって大切なのは、この付加価値を創出することです。


・今、付加価値創出力が求められている

 企業の「付加価値創出力」を示す指標に「売上高付加価値率」があります。これは売上高の中に、その企業が創出した価値がどれ位含まれるかを示すものです。

 日本企業の売上高付加価値率は、1980〜98年は上昇傾向にあったのですが、99年以降低下しています。

 また、国家や各産業の総合的な生産性を示す指標として「全要素生産性(TFP:トータル・ファクター・プロダクティビティ)」があります。


 TFPは、労働生産性や資本生産性のように個別要素で見た生産性ではなく、全ての生産要素の投入量と付加価値の比率です。

 主要国の過去10年のTFPの変化率を見ると、市場経済部門(民間部門)全体では、米国が抜きん出て、年率1.6%の上昇となっています。これに対して、日本は0.4%しか向上していません。

 さらに、日本企業の生産性はアジア諸国に追いつかれつつあります。韓国のサムスン電子のそれは、すでに松下電器や東芝を抜いているのです。

 では、どうすればTFPを向上させられるのでしょうか?

 それには、社会に新たな価値を提供したり、経営資源の効率を高めることが求められます。

 具体的には、新製品・新サービスの創造、新市場の開拓、ビジネス・プロセスの効率向上、組織改革による企業内の活性化などです。

 経済学者のシュンペーターは、これを「イノベーション」と呼びました。つまり、イノベーションを起こすことが企業のTFPを向上させるのです。イノベーションを起こすためには経営者のみならず、企業全体の目標に対する方向性と意思統一がとても重要となります。

 このような企業全体の方向づけも「経営コーチ」のお役立ちと使命だと考えています。


・事業機会の創造が求められている

 90年代、経営学の世界で「リソース・ベースト・ビュー(RBV)」という言葉がよく使われました。

 RBVとは、企業の競争優位の源泉は、企業の内部資源(リソース)にあるとする考え方です。

 このRBVの代表的論者の経営学者ジェイ・B・バーニーは、リソースが持続的な競争優位の源泉となるための条件として、次の4点を挙げています。

 「価値を生み出すこと」「希少性を持つこと」「模倣困難であること」「その資源を有効に戦略遂行に結びつける組織が存在すること」

 企業は様々なリソースの集合体だが、その中で、付加価値創出において最も重要な役割を果たす経営資源を「クリティカル・リソース」といいます。

 資本も労働も大量供給されるグローバル経済の中では、イノベーションを起こし、新たな付加価値を創出する「事業機会」が希少です。

 従って、「事業を創造する人々」こそがクリティカル・リソースであり、日本の繁栄のためには、こうした人々を急ぎ育成する必要があります。

 私たち経営コーチは税理士の国家資格を持つ者だけでなく、経営者と日常業務で定期的に接する税理士事務所職員も上記のようなスキルを身に着け、『日本を元気に』していきます!


福田 英一 (ふくだ えいいち)

税理士・ファイナンシャルプランナー

昭和39年2月19日生まれ。61年上智大学経済学部経営学科卒業。平成2年〜10年9月税理士事務所勤務。10年9月同退職。10年4月〜東和大学経営工学科非常勤講師、10年10月福田税務/労務合同事務所開設。
平成11年中小企業大学校非常勤講師。12年1月(株)レオパレス21 税務顧問就任・TKCファイナンシャル・プランナーに認定。16年決算診断実践会会員。17年歯科臨床・心理カウンセラー資格取得。19年相続名義変更アドバイザー。

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