FRAUD MAGAZINE

レールの滑りを良くする支払い
FCPA法の特例:「円滑化のための支払い」

Payments that 'grease the rails'
The FCPA’s ‘facilitating payments’ exception



 米国FCPA法の改正により「円滑化のための支払い」が容認され、グローバルに展開する米国企業の競争条件公平化が見込まれる。しかしながら、この法改正による変更がもたらす泥沼は避けた方が得策ではないか。

By Tom Baugher, J.D., CFE
翻訳協力:植田洋行 CFE/CIA/CFSA/CCSA/CISA


 本稿は、筆者のTom BaugherがMBA学位過程で執筆した非公開の論文「アメリカ運送事業拡大のためのFCPA入門」から抜粋および編集したものである。

 あるアメリカの鉱山会社が開発途上国で操業していた。

 同社の現地アドバイザーが政府当局の担当官に対し一時金の支払いが必要であると進言した。その支払いにより同社の鉱山から港までの道路を拡幅する許可の承認が遅れずに済むであろう、とのことであった。同社は支払い、担当官は許可申請書にスタンプを押した。

 数か月後、現地アドバイザーは、今度は保護された湿地帯に道路を通すため環境上の許可が必要だと言い出した。アドバイザーは、自分は同国資源省の外国企業部の高官と親しく、ある程度の現金支払で「問題を解決できる」と言った。同社は支払い、高官は許可証を交付した。もし同社がその支払いを行わなければおそらく許可証を受け取ることはなかったであろう。

 質問:この事例〔米国司法省および証券取引委員会(以下SEC)が公表した米国FCPAガイドラインの26ページ、http://tinyurl.com/cwj85jx〕において、政府関係者への支払いをしたときに、この会社はFCPA違反で有罪だろうか?二件目の資源省高官に対する支払いは明らかに違法であり、司法省は法に基づき同社および支払いを承認した同社副社長と現地アドバイザーを刑事訴追するだろう。しかしながら、同社が一件目の金銭を支払った段階では、円滑化のための支払い(別名:潤滑化のための支払い(grease payment))改正条項に基づき適法であった。

 この1988年の改正は、米国議会が米国企業のために競争条件の公平化に資するとして承認したものであるが、その価値よりもむしろ問題を引き起こすことがしばしばある。例えば、担当官に対する支払いは円滑化のための支払いとしては適法でも、外国その他の場所ではその他の法令に違反しているかもしれない。また、同社がもしその支出を正確に記帳していない場合、FCPAの会計規定に違反することになるかもしれない。



FCPA入門 (FCPA primer)


 カーター大統領はウォーターゲート事件を契機とする一連の調査の後、1977年にFCPA法案に署名したが、同調査は米国企業による外国公務員に対する贈賄と疑義ある支払いを明らかにした。

 SECは、不可解な国際的支払いのために秘密の贈賄資金が公開企業に求められる財務諸表の適正表示に違反しているとの意見に基づき調査を開始した。SECは説明のつかない国際的な支払いのための秘密の資金は、公開会社に正確な決算報告書を提出することを求める法律に違反しているという理論を前提として調査を開始した。SECは500以上の企業が疑義のある支払いを行い、海外の事業を守るために外国公務員に対し何百万ドルもの賄賂が支払われたことを発見した1。さらに、これらの企業は支払いを隠ぺいするため財務記録も偽造していた2

 これらの行き過ぎた行為は、多くの国民的、政治的関心を呼び議会で取り上げられることになり、選択肢は二つ考えられた。一つは単に不道徳な支払いの開示を怠ったことに対する罰則であり、二つ目は支払いの非開示と支払いをしたこと自体の両方を罰するもの。後者のアプローチは、米国企業を海外で著しく不利な立場にするとの議論が湧き上がった。しかしながら、下院はより厳格なアプローチを選択した3

 1977年に法案を可決した際、下院は「賄賂の支払いは非倫理的である。それはアメリカ国民の道徳的な期待と価値観に反している。しかし、それは非倫理的であるだけでなく、悪質なビジネスであり、自由市場原理の誠実性に対する国民の信頼を損ねる。それは価格や品質、サービス面であまりに競争力のない、あるいは正直な売込みを怠り、取るに足らない商品を売ることに過度に熱心な企業にビジネスを向かわせることで、市場のじゃまをする。要するに賄賂は効率性の代わりに贈賄を助長し、倫理的な企業にその水準を低下させる圧力かもしくは、ビジネスを失うリスクを与える4

 FCPAは二つの異なった、しかし関連する条項を有する。一つ目の条項は、対象となる者と組織が事業獲得または保持のため外国公務員に賄賂を贈ることを禁止するもの5。同法は対象となる者と組織は、全ての米国民、米国企業および米国の株式市場に上場している、またはSECへの報告が必要な外国企業、ならびに米国の領域内で不正な支払いが行われた場合に直接、または代理人を介して推進に関与した外国の法人および個人と定義している6

 二つ目の条項はGAAP会計基準の要求であり、企業に、(a)法人の取引を正確かつ公正に反映した帳簿と記録を作成、保管すること7、(b)十分な内部会計統制システムの工夫と維持、を求めている。この法の両ポイントは、企業情報開示制度の根幹をなす企業帳簿と記録の正確性と監査プロセスの信頼性の強化を意図した条項を通じてオフバランス会計処理の禁止を企図している〔上院レポートNo.95-114の7ページを参照http://tinyurl.com/lt2mllg〕。

 ここに3件のFCPA違反事例がある:

【事例1】
 オクラホマ州所在の、ある企業の子会社がアルゼンチンの税関職員に対し約16万6千ドルを支払い1)現地法によるとそれがないと輸入できない必要な証明書なしに装置と原材料を通関しようとして、また2)本来より低い関税適用しようとして、FCPAに違反した。
 同社のベネズエラ子会社もベネズエラの税関職員に7千ドル支払い、1)現地の規制に違反している装置や原材料の輸出入の許可を得たり、2)輸入品の完全な検査を避けようとした。
(2009.7.29付H&P社の非訴追協定書参照http://tinyurl.com/nx6cavz)

【事例2】
 石油掘削製品およびサービスのグローバルサプライヤーの子会社3社は、関税の軽減または免除を含む通関手続きにおける優遇措置を受けるため、ナイジェリア税関職員に対し少なくとも378件の不正な支払い(総額約210万ドル)を代理人に認可したことで刑事告発された(2007.1.5付テキサス州南部地区裁判所のVGC社事案判決文参照http://tinyurl.com/k6mezso)。

【事例3】
 あるスイス企業は、カザフスタン、サウジアラビア、アルジェリアおよびナイジェリアにおいて顧客のために通関と輸入許可を早く進めるために外国公務員に2,700万ドル支払い、8,200万ドルの罰金を課せられた。(2010.11.4付ウォールストリート紙のP社に236万5千万ドル罰金で和解の記事参照http://tinyurl.com/l45skmw)



円滑化のための支払いの特例 (‘Grease payments’ exception)


 1988年に議会は、FCPAを国際賄賂禁止条約に整合させ、かつ米国企業の海外の競争相手との競争上の自由度を高めるため、1988年包括通商競争力法案を可決した。

 同法は、非裁量的行為を含む日常的な政府の活動を早めるために支払われた円滑化または促進化の支払いの特例を限定的にしている(合衆国法典第15編§§ 78dd-1(b)発行体による外国貿易の禁止参照http://tinyurl.com/o354jkp)。

 下院がこの改正案を可決した際には、そうした支払いを許容すべきではないと明記された。(下院レポートNo.100-40の77ページ参照)そのような支払いの事例としては、「通関書類を速やかに処理してもらうための税関職員に対して支払う謝礼」や「許可やライセンスを得るため、あるいは、いずれにしても実施の必要がある本質的に羈束的で事務的な類似の職務を迅速に実施してもらうために行われる支払い」がある。〔下院レポートNo.95-640の8ページhttp://tinyurl.com/lxjwl52〕

 司法省とSECの共同ガイダンス〔http://tinyurl.com/cwj85jx〕によれば、「日常的な政府の活動」は「査証の処理や警察による保護または郵便サービスの提供、そして電話サービスや電力、水といった公益事業の提供」を含むこと、「日常的な政府の活動」に新規業務の認可や特定の団体との事業継続の決定は含まれないこと、あるいは担当官の裁量の範囲内にある、または担当者の地位の乱用を引き起こす可能性のある行為は含まれないこと、このように、工場の電源を入れるために担当者に少額の金銭を支払うことは円滑化のための支払いに該当するであろうこと、一方で会社が工場操業の有効な許可証を保持していない事実を見逃してもらうため検査官に支払うことは円滑化のための支払いに該当しないこと」を明記している。

 円滑化のための支払いの特例の限定的な性質にかかるコメントとして裁判所は次のように述べている。議会によって列挙された日常的な政府の活動のタイプを概観すると、議会がいかに潤滑のための特例を限定的にしたかったかが示されている。日常的な政府の活動は、全ての公的文書の発行や全ての検査を包含するものではなく、1)当事者の職務資格を示す書類と、2)検査スケジュールであり、中下位レベルの外国の役人が行う概して非裁量的で羈束的活動の非常に狭いカテゴリーに限られる8



円滑化のための支払いの会計(および他の危険)
(Accounting for facilitating payments(and other hazards))



 企業の帳簿や記録上で賄賂を「円滑化のための支払い」として表示してはいけない。例えば、ある国外の採掘会社は、社内の人間は実際のところ賄賂と信じているにもかかわらず、税関に対する支払いを子会社の「円滑化のための支払い」勘定で記帳していた。同社はFCPAの賄賂禁止と会計条項違反で告発された。(2010.11.4付SECによるN社の訴訟No. 10-cv-4336(テキサス州南部地区裁判所)参照http://tinyurl.com/l26sbfh)

 さらに、合法的な円滑化のための支払いであっても会社の帳簿と記録に適切に記帳されていなければFCPAに違反することになる。



相手国の法令等違反 (Violating host nation laws)


 円滑化のための支払いは、FCPA上は違法でなくとも相手国の法律に違反しているかもしれない。例えば英国のOECD贈賄ワーキンググループは、「少額の円滑化のための支払いが特に持続可能な経済発展と法の支配に与える腐食作用を考慮して」全ての国が円滑化のための支払いの禁止または抑制を企業に奨励することを勧めている。(2010年10月OECD賄賂防止会議実践フェーズ3レポートの24ページ参照http://tinyurl.com/mcj9doy)

 英国贈収賄法に円滑化のための支払いの特例はない。しかしながら英国重大不正捜査局のデイビッド・グリーン(David Green)局長は、少額で一回限りの支払いが司法判断の問題として起訴されることはないだろうとの見解を述べている。(日本版FRAUDマガジン36号の記事参照http://tinyurl.com/oygqmud)

 円滑化のための支払いは、不快なことに郵便詐欺や通信不正、米国旅行法やマネーロンダリング、虚偽陳述といった他の犯罪禁止条項に近接している。

 FCPAの訴追に必要な要素の全てが揃っていない場合でも、これらの法律に違反したことになり得る。



合理的かつ正当な支出の抗弁 (Reasonable and bona fide expenditures defense)


 同法はまた、正当な事業目的のための合理的な贈答品、旅行や接待を許可している(正当な目的は、販売促進、デモあるいは製品やサービスの説明または契約の履行や遂行に関連している)。例えば、もし外国公務員が正当な職務目的で企業の施設を検査するために旅行する場合、会社はビジネスクラスの航空運賃、および手頃な価格の食事や接待の費用を支払ってよい。(合衆国法典第15編§§ 78dd-1(c)(2)発行人による禁止された外国貿易(Prohibited foreign trade by issuers)参照http://tinyurl.com/o354jkp)

 しかしながら、主として個人的な娯楽目的の旅行は正当な業務費用ではなく、FCPAの賄賂禁止条項に違反するだろう。

 例えば、司法省は、外国の公務員と彼の妻のためのプロモーションツアーを提供していた会社を起訴しなかった。夫妻は既に自費で米国への旅行を計画しており、会社は、彼らの旅行の延長としての米国内の旅行に必要で合理的な費用のみを支払っていた。夫妻の旅行は全部で5,000ドルを超えなかった9



現地法令の抗弁 (Local law defense)


 海外での支払いがその国では合法であればFCPA違反にはならない。(合衆国法典第15編 §§ 78dd-1(c)(1)発行人による禁止された外国貿易(Prohibited foreign trade by issuers)参照http://tinyurl.com/o354jkp)言い換えれば、会社がそれを支払った時点で、相手国の成分法に従って合法であれば、企業はFCPAに基づき申し立てられた不正な支払いに対する抗弁に成功するかもしれない。しかしながら、賄賂を許可する法律を成文化している国は非常に少ないので、この抗弁は殆ど機能していない。

 この抗弁のための要件は厳格であるだろう。あるケースでは、相手国は支払いを自主的に開示した場合、贈賄者を免責する法律を持っていた。裁判所は、現地の法律が実際に賄賂の支払いを合法化していないため、被告が現地の法律に基づく抗弁を主張できないとの判決を下した。〔ニューヨーク州南部地区裁判所によるK氏事案2008年控訴審参照http://tinyurl.com/ky2wwjq〕この結果、経営陣は有罪とされた。



選択肢は…。 (Choices, choices …)


 したがって、会社の経営者は、円滑化のための支払いを行うかどうかを決定する際に戦略的で非市場的な意志決定をしなければならない(非市場的な力とは、社会的、政治的、経済的および文化的な要素である)。

【選択肢1】円滑化のための費用を支払う
 円滑化のための費用を支払うことは法的にも倫理的に抗弁できる。しかしながら実際には、この選択肢は問題となり得る。まず、規制当局や裁判所は円滑化のための支払いの特例を狭く解釈している。次に調査結果は、円滑化のための支払いが効率的な事業運営に逆効果であり、資本のコスト高につながることを示唆している。(“Does ‘Grease Money’ Speed Up the Wheels of Commerce?” by Daniel Kaufmann and Shang-Jin Wei 1999年の全米経済研究所論文No.7093参照http://tinyurl.com/kx25xbu.)

 一方、非市場的戦略は、会社の統合戦略の半分にすぎない。残りの半分は、多くの場合、円滑化のための支払いが必要とされる発展途上の市場への参入によりマーケットシェアを拡大しようとする欲求によって動かされる。成長にフォーカスした市場構成要素は積極的な姿勢を必要とする。

 円滑化のための支払いを認める方針が採用されている場合は、それを、FCPA違反を防止、発見または軽減する堅牢なコンプライアンス・プログラムと組み合わせることが必要である。

 ラニー・ブルーアー氏は司法次官補だった当時、「『自分たちは賄賂が横行していると信じられている国でビジネスしているのです』と言ったところでフリーパスを得られるわけではない」と述べた。「もしあなたが一層大きな問題を課す国にいるなら、私は、あなたのコンプライアンス・プログラムが、それに対処するために何をしたのかを知りたいと思うだろう。・・・もしそれが最先端のもので、あなたが本当にあなたのいる環境に対応しているのなら、それはあなたにとって助けになる」。(週刊コンプライアンス誌2010.6.2号の記事“DoJ Warns on Heightened Fraud Enforcement,” by Melissa Klein Aguilar, June 2, 2010参照)

 さらに、企業はこれらの新しい市場での足掛かりを確立した後に、将来的な円滑化のための支払いの禁止を決定できる。途中で方針を変更することは困難ではあるが、可能である。相手国の公務員との連絡先である従業員は、変更用に新しく制定された企業方針を提示することができるようになる。

【選択肢2】支払わない
 もうひとつの戦略として、会社が円滑化のための支払いをしないと決めたとしても、新しい国で事業を行おうと試みる可能性はある。我々にはこの選択肢のための十分な理論的・実践的なサポートがある。

 例えばBPは、円滑化のための費用を支払わない(英国贈収賄法の前からも)。CEOのブラウン卿は2002年の従業員に対するメッセージの中で、「我々は、当社が事業を展開する100カ国それぞれの法律の範囲内で仕事をしており、多くの場合、法律上の要件よりも高いレベルの当社の基準に基づいて働いている。我々は円滑化のための支払いを含め、いかなる形態であっても贈収賄や汚職に関与しない」と書いた。2003年にBPは同社の倫理基準に違反した165人を解雇して、この発言を裏付けた(デビッドP.バロン(David P. Baron)著「企業とその環境」(“Business and Its Environment,”)768ページによる。

 同様に、カミンズ(Cummins)社は従業員が支払いを行うことの決定をする際に参考になるよう「主要な倫理ガイド」を配布している。支払いは次の3条件が満たされた場合に許容される。

 その支払いは、公務員に実施する義務を負う通常の業務を実行する気にさせるために必要であること。

 その支払いが、現地の慣行に従っていること。もし支払いが現地の慣行に従っている場合、それは公務員の行為に対する一般市民の期待と一致すると仮定することが妥当である。

 問題となっている公務員の行為またはサービスを実現するために利用可能な合理的な代替手段がないこと。(「企業とその環境」(“Business and Its Environment”)の769ページ参照)

 カミンズ社は、そのような円滑化のための支払いをしないことで、ビジネスを失う可能性があることを受け入れており、「公正な取引の基本原則に違反するだけでなく、効率的な経済発展を妨げ、社会的一体性を損なう」ような「倫理的に容認できない支払い」をするよりもむしろ、ビジネスの損失を受け入れる準備ができている。(カニング社の慣行についての情報(information on Cummins’ practices)「企業とその環境」(“Business and Its Environment”)769ページ参照)

 また、円滑化のための支払いが効率的な事業運営に逆効果であることを示唆している、少なくとも一つのよく知られた研究がある。著者は、「我々は、賄賂をより多く支払う企業は、規制に関する官僚との交渉により多くの、少なくない時間を費やしており、より高い、低くない資本コストに直面していることを発見した」と結論付けた。(“Does ‘Grease Money’ Speed Up the Wheels of Commerce?”参照)

 ウォートン経営大学院のトーマス・ドナルドソン教授は、さらに「管理職の地位にある者は次の二つの質問にノーと答えられる場合にのみ、その慣習が許されると考えるべきである。その慣習なしに相手国で事業を成功裏に遂行できるか?そして、その慣習は重要な人的価値を侵害しているか?」と主張している。(「企業とその環境」の752ページ参照)円滑化のための支払いにかかるドナルドソン教授の説明を適用すると、たとえ遅いペースになったとしても、円滑化のための費用を支払わずに事業を進めることができるのならば、その時はやはり支払うべきではない。

【選択肢3】その国で事業を行わない
 会社は、円滑化のための支払いが必要な国々では単に事業を行わないことで、この泥沼全体から自らを隔離することもできる。非市場的な条件のために市場での機会を見送るのは今回が初めてではないだろう。例えば、バロンは自らの著作「企業とその環境」の中で、ユニリーバ社が蔓延する汚職を理由にブルガリアから撤退したと書いている。ユニリーバ社の役員は「汚職に巻き込まれずに事業を行うことは不可能だった。それで我々は論理的な段階を踏み、その結果を受け入れた。それは我々の荷物をまとめることだった。」と語った。〔1999.2.16付ウォールストリート紙でバロンの前掲書762ページを引用〕同様に、シェル社は汚職が蔓延していることを理由にロシアを去ったと伝えられた。BPはその一方で、ロシアに留まることを選んだが、賄賂を支払うことを拒否している。(前掲書767ページ参照)



FCPA改正により生じた泥沼 (Morass created by the FCPA amendment)


 海外で利益を得ようとすると、グローバルに展開する米国企業は、しばしば複雑な問題に対処しなければならない。企業の不正検査士は、コンプライアンス担当役員や経営トップに助言できるよう、FCPAの円滑化のための支払いの改正が引き起こす問題を知っておく必要がある。



Thomas Baugher, J.D., CFE
FBIフロリダ州タンパ支部の特別捜査官である。


<参考文献>
1 See S. Rep. No. 95-114, 1977, http://tinyurl.com/lt2mllg, page 6; H.R. Rep. 95-640 http://tinyurl.com/lxjwl52, page 4; see also, “The Payoff: Lockheed’s 70-Day Mission to Tokyo,” by A. Carl Kotchian, Saturday Review, July 9, 1977, http://tinyurl.com/k677emo, page 7. “Lowlights” of these payments have been recounted as: contributing $4 million to a foreign political party, leasing a helicopter for a foreign political candidate and a head of government, promoting the interests of foreign governments in matters of delicate U.S. foreign policy and national security, paying $1.25 million in exchange for the repeal of tax regulations, satisfying the bribery demands of foreign generals, incorporating a Swiss company to hire or contract with key figures in foreign countries to promote sales abroad and using a governmental line of credit to make questionable payments overseas. Also see “Combating Corruption Under International Law,” by Alejandro Posadas, Duke Journal of Comparative & International Law, 2000. (http://tinyurl.com/l7lmhxc).
2 U.S. Securities and Exchange Commission, “Report of the Securities and Exchange Commission on Questionable and Illegal Corporate Payments and Practices,” May 19, 1976, (http://tinyurl.com/mdervcd), pages 2, 3.
3 The Senate “concluded that the criminalization approach was preferred over a disclosure approach. Direct criminalization entails no reporting burden on corporations and less of an enforcement burden on the Government. The criminalization of foreign corporate bribery will to a significant extent act as a self-enforcing, preventive mechanism.” S. REP. No. 95-114, http://tinyurl.com/lt2mllg, 1977, page 10.
4 H.R. Rep. No. 95-640, 1977, page 4, 5 [hereinafter H. R. Rep. No. 95-640], http://tinyurl.com/lxjwl52.
5 Specifically, the anti-bribery provisions of the FCPA prohibit the willful use of the mails or any means of instrumentality of interstate commerce corruptly in furtherance of any offer, payment, promise to pay, or authorization of the payment of money or anything of value to any person, while knowing that all or a portion of such money or thing of value will be offered, given or promised, directly or indirectly, to a foreign official to influence the foreign official in his or her official capacity, induce the foreign official to do or omit to do an act in violation of his or her lawful duty, or to secure any improper advantage in order to assist in obtaining or retaining business for or with, or directing business to, any person. See http://tinyurl.com/cwj85jx.
6 Foreign officials may “not be charged with violating the FCPA itself, since the [FCPA] does not criminalize the receipt of a bribe by a foreign official,” according to United States v. Blondek, 741 F.Supp. 116, 117 (N.D. Tex. 1990) http://tinyurl.com/ldm59yt, affirmed by United States v. Castle, 925 F.2d 831 (5th Cir. 1991), http://tinyurl.com/kuvbwcs (“We hold that foreign officials may not be prosecuted under 18 U.S.C. § 371 for conspiring to violate the FCPA.”) Foreign officials, however, can be charged with violating the FCPA when the foreign official acts as an intermediary of a bribe payment. See, e.g., Information, United States v. Basu, No. 02-cr-475 (D.D.C. Nov. 26, 2002), http://tinyurl.com/k8zbvhr (“World Bank employee charged with wire fraud and FCPA violations for facilitating bribe payments to another World Bank official and Kenyan government official”) and United States v. Sengupta, No. 02-cr-40 (D.D.C. Jan. 30, 2002).
A company’s books include those of its consolidated subsidiaries and affiliates. Therefore, a company will be held responsible for improper acts of such subsidiaries. With respect to minority and non-controlled interests, a company must put forth its “best efforts” to prevent and detect FCPA violations.
United States v. Kay; 359 F.3d 738, 750-51 (5th Cir. 2004), http://tinyurl.com/mxuk6ly. Internal footnote omitted; emphasis in original.
See U.S. Dept. of Justice, FCPA Rev. Press Release 83-02, July 26, 1983 (no longer available).


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