FRAUD MAGAZINE

第二世代が自分たちの歴史を創る
若い不正検査士たちが不正検査の草分けに続く パート1

SECOND GENERATION CREATES ITS OWN HISTORY
YOUNG CFES FOLLOW FRAUD EXAMINATION TRAILBLAZERS, PART 1




 過去を振り返るだけよりも、不正検査士協会の創設者たちがいかに次の世代を育てていったか、そして若い不正検査士たちがどのように向上を目指しているのかを見てみよう。

DICK CAROZZA, CFE
翻訳協力:岩崎 勉


参加者について (About the participants)


 ACFEが設立25周年を祝うのを機に、将来を考えるのは良いことだと考えた。

 そこで、我々は、多種多様な業種に勤める多くのシニア不正検査士に対し、不正調査で活躍し始めた20代から30代の若く前途有望な不正検査士の名前を挙げるよう依頼した。41人の候補者のうち、27人が質問に回答した。それらの回答を2つのパートに分けて抽出した。

 回答者27人が、(ACFEの大きな多様性を示しているけれども)全ての若い不正検査士を正確に代表しているものではない。しかしながら、Fraud Magazineは、世界中の他の若い会員の姿を描き出し、今後のFRAUD Magazine で紹介していく一方、彼らの視点が、次の四半世紀の不正検査業務の一部を示してくれるかもしれないと思う。(そうすれば、より安心して任せられると思います。)

 過去を振り返るだけよりも、公認不正検査士協会の創設者たちがいかに次の世代を育てていったか、そして若い不正検査士たちがいかに未来に向けてさらに発展する態勢が整ったのかを見てみよう。

 1988年ACFE設立当初、会員の多くが、(ほとんどではないにせよ)、中年でした。一般に、会計、監査、そして法律を執行する定評のある専門家で、それでも彼らは、他にはない実務的な不正検査教育を渇望していた。

 今や、20代から30代そこそこの新しい不正検査士の多くは、80年代には無かった大学の不正対策カリキュラムから不正検査の知識を身につけてACFEにやってきている。実際、第一世代の会員の多くは、(もしくは彼らの職業上の後継者の何人かでさえもが)、若い不正検査士を雇い入れた。

 この第二世代の不正対策専門家は、(ACFE創設以来、そもそも二世代しか存在しないのだが)不正検査の原理を組み入れるために一生懸命に闘った第一世代の前任者から学べる有利な環に加わっている。

 しかしながら、不正対策の世界に完全防備で来る者などいない。専門家になるには、不正検査の洞察力と知識を得るために数年にわたる経験と助言を必要としている。

 さて、ここで何人かの若い不正検査士(今回の号では14人)から話を聞いてみよう。駆け出しの時期に、どのようにこの分野に入ってきたのか、自分に影響を及ぼしたり、記憶に残った不正事例、第一世代から教わったこと、不正防止とその他の話題を彼らの議論そのままに、聞いてみよう。



不正検査業務での最初の興味 (First interest in fraud examination profession)


 Ryan J. Dobson, CFE, EYの不正調査と紛争解決業務の上級会員は、高校時代の夏休みのアルバイトで地方銀行の小口現金窓口係として働いた時に最初の不正に関する興味を持ったとしている。「私が初めて銀行のコンプライアンスと規制上の要件の順守について2週間の新人研修所で訓練された。具体的には、マネーロンダリングの入りと出、贋金、銀行秘密法、顧客の身元確認と記録の保持について詳しく講習を受けた。その夏の後半には、私が勤務した支店の一つが、劣悪な態度ゆえに長年勤務した従業員を解雇した。社内調査員にインタビューされたのがきっかけとなり、私は興味を持つようになった。」

 Carla L. Hodge, CFE, Prince Minerals Inc.の内部統制担当役員もまた、夏休みのアルバイトで最初の不正を経験したひとりである。当時、16歳の彼女はマクドナルドで働いていた。「客は、事前にマネジャーに代金を支払ったと言い、ハンバーガーとポテトフライを100個ずつ大量に注文をした。誰も調べなかったことが本当に私を煩わせた。」

 その後、監査人としての立場で、一連の貸し付けや支払いにおける内部不正を見つけた。当該事件の不正実行者たちは、有名な地域メンバーであることを突き止めた。「私たちは一緒に教会に行ったり、共に市民活動に参加したりしていた。しかし私たちの誰もが(地域メンバーの知り合いが不正に関与していたとは)全く見当がつかなかった。さらにエンロンが倒産した時には、老後の貯金や年金計画を失い人々が泣いているのをニュースで見たのを覚えている。それで結局、私は不正調査について学びたくなった。」と彼女は言う。

 Laura Beltran-Schmitz, CFE, CPA, CGFM, CliftonLarsonAllenの保険部長の場合には、身近な人から興味が湧いた。「私の父[Alfred Beltran-Romero, CFE]は、この分野の仕事に従事していて私の人生の全てだった。私が子供の頃、父はFBIで仕事をしていた。私は父の仕事の話にすっかり魅了されたのを覚えている。今では、父と共に過ごす「話の工房」(talking shop)が大のお気に入りだ。父の足跡を辿るのは心地よい。」(ここに、文字通り、第一世代が第二世代に知見を引き継ぐ例が見られる。)

 Will Bader, CFE, CPA, Grant Thorntonのフォレンジック調査と係争案件処理のシニアアソシエイトは、不正検査士になる必要を感じた瞬間を思い出すことができる。「Federal Deposit Insurance Corporationで働いていた時にとある受託業者が一日に29時間労働の請求をしようとしていた手口について明らかにし、報告した。この分野で働く誰もが、そこにあるべきではないものを最初に見つけた時の激しい興奮を知っている。その後で別の途を選ぶとは思わない。」

 Caitlin Glass, CFE, CPA, Forensic Strategic Solutions Inc. のフォレンジックアナリストは、丁度、いくつかの生物学の過程を終えた後に医学学校に移るところだった。「幸運にも、必要条件を満たすために、最後の必修科目である会計学を2年生の間に履修するよう要求されたこの授業こそが、私が会計に触れる最初のきっかけとなり、最終的には、フォレンジックや不正調査の世界の発見へと導いた。」空軍の特別調査事務所の特別予備官だった彼女の父親が、彼女をこの職業に就く主な原因となった、とGlassは語る。

 Rie Araki, CFE, CIA, 東京のMass Mutual Life 保険会社の内部監査員もまた、追跡調査のスリルを経験した。「内部監査部が匿名の内部通報のe-mailを受け取った時に、私は不正調査に最初に興味を持った。刑事物語の登場人物になったかのように感じた!」

 Min Cai, CFE, CISM, CISA, オーストラリア、ヴィクトリア州、メルボルンのErnst & Youngの不正調査と係争案件のマネジャーは、「ハリウッド映画のコンピューターフォレンジック捜査官がたいへん格好良く見えた!」ので、幼少期にこの職業に魅了された。

 多くの映画−もしくは少なくとも一つの特別な映画が− Chris Ekimoff, CFE, CPA, CGMA, MAFF, Duff & Phelps, LLC の副社長にも強く影響を与えた。「私の不正調査に関する初めての興味は、『アンタッチャブル』という1987年の犯罪映画からきている。その映画は、アルカポネの捜査と最後には逮捕、会計の役割と有罪判決となった税金逃れについて克明に描写している。映画は、会計学とIRS(国家財政収入局)調査官について強調して描写したが、それが私の目をくぎ付けにした。なぜなら彼らは銃の代わりに知力で犯罪に打ち勝とうと最善を尽くしたから。」

 ACFEの高等教育奨学金は、Ritchie-Jennings Memorial 奨学金制度を通じて授与され、多くの学生が研究課題として不正検査に取り組むのを支援している。

 「Terry Unruh, Oral Roberts 大学の会計学教授は、私にACFEの奨学金を申し込むように勧めてくれた。」とJeremy N.Baker, CFE, FBIの検査官補は言う。「その名誉に選ばれる過程で、私は、Cam McFayden, オクラホマ、タルサ支部のCFE,に出会った。両氏から勇気を与えられ、学究的で専門的な努力を探求するようになった。結局、彼らからの支援によりCFE資格の活かせる職業に就いた。私に不正検査を直接学ぶ機会を与えてくれた。」



第一世代と第二世代が共に働く (First and second generations working together)


 Ekimoffは、同世代のCFEを不正検査の世界で強力になる集団とみている。「不正は、少なくともこの10年間で産業界の有力者の気にかけられるようになった。特に、エンロン、タイコ、アデルフィア、そしてワールドコムのような大きな不正のスキームの観点において注目されるようになった。今や、ほとんどの有力者たちはビジネスでの不正のリスクに従来以上に気付いているので、第二世代の役割は、これらのリスクを軽減する方法を形式化して実行することかもしれない。」

 Brett A. Johnson, CFE, Eide Bailly LLPのフォレンジックアカウンティングマネジャーは、言う。「今やあらゆるものがペーパーレスになったので証拠を得るためにコンピューターフォレンジックの必要性にますます気付きつつある。不正のスキームそのものは、第一世代から教わったこととたいへん似かよっている。今や、生活の周りにある常に発展し続けている技術的文化に適応する(不正)発見の方法を導入する方法について学ばなければならない。インターネット、ソーシャルネットワークと新しい技術を使ったE-discoveryこそが、若手専門家たちにとって、第一世代が不正検査でこれらのツールをどのように導入しようかと模索したことに比べれば、一般にはるかに馴染みの深い得意分野である。」

 これは、多くの若いCFEにとって馴染み深いテーマである。ハイテクと共に育った世代なので、コンピューターフォレンジックは受け入れやすい。

 「私の立場は、不正検査がどのように完了するのかを改善し続ける努力をすることだとみている。主に、技術の大胆な活用を通じて、チームのメンバーに対して、経験者としてこの問題に情熱を注ぐことだと思う。」とJim Carroll, CFE, CPA, CRMA, フォーチュン200の会社の監査調査マネジャーは言う。「第一世代から学んだ最も大事な教訓は、答え、つまり悪魔は、詳細部分に潜んでいる、ということなので、詳細部分に対して強烈な焦点を当てて注意を払うべきである。技術を使うための、及び可能な技術の能力を目一杯使うための我々の能力と意志の見地から、新しい世代が沢山のものを研究の場に提供していると思う。」

 Lindsay Harder Gill, Forensic Strategic Solutions Inc.のフォレンジック技術担当役員は言う、「孤立状態で調査をすることはできないということを不正検査士の第一世代から学んだ。多様な技術と個性をもった人物からなるチームが必要だ。」

 Baderは、第一世代からインタビューの技術を学んだ、と言う。「不正検査士の第二世代は、不正検査の手続きに役立つ豊富な資料と標準化された実例の宝庫に恩恵を受けてもいる。これらの資料は、つい最近充実し始めたばかりであり、年ごとに改良されている。専門職としての不正検査の標準が、今後の10年間でどのように進化を遂げるかを見るのが楽しみだ。」



不正を抑止すること − 事態が発覚した後に関わるだけでなく
(Deterring fraud - not just dealing with it after the fact)



 企業が抑止に対しての認識を高めはじめ、ここのところ、抑止(の手続き)が改善されてきていると、CFEは感じている。予防はまた、お金の節約にもなり、人が刑務所に入らなくてもすむようになる。

 「私の役割は、主に、リスクの高い領域を決定づけることで抑止と防御の手段を提供することである。」とKimberly Fleischmann, CFE, ウォールマートの監査本部のシニア監査人は言う。「不正リスクの評価を行うことは、後に予期しないことが起きる前に、我々がリスクの高い領域に未然予防のための努力を集中することに役立っている。会社にとって意味のあることなので、会社がより予防的措置を講ずるようになってきていると思う。」

 Ekimoffは、不正検査の職業は、不正抑止の点で『大きなパラダイム シフト(理論的枠組みの変化)』にみまわれていると考えている。「私の仕事は、不正の申し立てが起きた後のコンサルティングが大部分であるが、今後ますます多くの仕事が、個々の会計手続きを前面に出しながら、予防的コンサルティングを巻き込んで発展していく。会社は、継続的に他社の間違いの事例から学んでおり、不正が見つかった後は次のように尋ねるようにしている、『将来こうした事態を避けるためにあなたはどのようなことができますか?』」

 Corey J. Dunbar, CFE, Ernst & Youngの不正調査と係争関係のマネジャーは、不正検査の仕事を始めた時には、彼が担当した膨大な量の仕事の大部分が受身のものだった、と言う。「事件が起きると、事態の大きさを評価し他に追跡すべき領域がないかどうか識別するように頼まれたものだ。今や、全く反対のことが事実となっている。私は依然として受身の調査に従事しているけれども、私の仕事の大部分が、顧客が不正とコンプライアンスの監視手続きを未然予防の観点で展開するのを手伝うことに焦点がある。」と彼は言う。

 「重大な事態になる前に、フォレンジックデータ分析を用いて、リスクの領域と特定の行動様式を孤立させることができる。不正の規模が大きくなる前に不正を予防したり抑止したりするのに効果があることが分かっているので、手続きに、データ分析を組み込む企業が増えている組織の数が増え続けている。」とDunbarは言う。

 Baderは、「不正の抑止に役立つツールは何百とあるが、第一世代から時を経て実証されてきた基本事項、『トップの姿勢』にも、組織は注力すべきである。正しい倫理規程の制定、方針と手続きについての従業員教育は、他のいかなる内部統制よりも不正の抑止に遥かに有効であろう。」と彼は言う。「私は、関連当事者を納入業者として取引している従業員の疑惑調査を目的とした調査を行った。リーダーは、その問題が発生していることについて全く無知で、完全に警戒を怠っていた。従業員のインタビューを続けている間に、(関連当事者間取引の)問題は会社のあちこちで知られていたが、従業員はその取引自体に問題意識を抱いていないことがわかった。調査の中盤、管理チームの一人が従業員就業規則を引っ張り出し、関連当事者間取引が明確に禁止されていることを指摘した。では、従業員はこの就業規則を見たのか?従業員は何らかの教育を受けたのか?管理職の誰かはこれが容認できるか否かについて議論する時間を設けたのか?もし管理職が、(1)規則があることを話し、(2)規則の意味するところを説明するならば、私はもっと規則を守るようになる。会社は、従業員に、行うべき正しい行為、何が許されて何が許されないのかについて教育する倫理プログラムを実行する必要がある。」とBaderは言う。

 「常に正しい行動をとるための判断を、必ずしも従業員の常識に頼ってはいけない。」



機能していないものとそれをいかに固定するか (What’s not working and how to fix it)


 2012年版ACFEの国民への報告書(ACFE.com/RTTN)は、不正防止のための統制や不正と闘うための法律についての一層の重要性を付与しているにもかかわらず、職業上の不正、濫用、悪用は、増え続けていると報告している。CFEは、この板挟みに思い悩む。

 「不正、濫用、悪用は増えているかもしれない。しかし、ステークホルダーからの、コーポレートガバナンスや内部統制手続の改善要求もまた、同様に増えている。」とGlassは言う。「人々は、不正がどのように見えるのかということについての教育を受け、不正を報告することが奨励される必要がある。規制が増加したり、ステークホルダーがデューデリジェンスの強化や説明責任を要求されたりすることで、組織が積極的に不正を早期発見するための内部統制や手続きを改善するために、継続的に拍車がかかっている。」

 Gillは、機能していないものに焦点を当てられるべきではないと考えている。「今後調査に対するアプローチをどれだけ革新的かつ先進的になれるかという点に焦点を当てられるべきである。」

 Arakiは、組織が不正に気付く例が増えているし、従業員がそれを見つけた時に従来よりも発言するようになってきていると考えている。「しかし、核心に触れたいくつかの情報は、上司の圧力により、必ずしも報告されないかもしれない。そして、報告される情報の信頼性は低いかもしれない。リソースの制約から、不正検査士は報告された情報を無視せざるを得ないかもしれない。したがって、不正を報告する人々は、会社が見過ごすことを懸念し、落胆するかもしれない。これを改善するために、不正が発見されなかったとしても、チームは予備調査の結果を従業員か情報提供者に報告するという方法がある。」

 Hodgeは、「不正実行者は、しばしば釈明の義務を負わないということを認識している。組織は、不正実行者を解雇することはあっても、告訴はしない。または、解雇もされず、あっても最小限の懲罰や罰金である。このことが、不正が起きる一つの理由だと確信している。」と彼女は言う。

 Carrollは、従業員の増大した仕事の負担が、特別な恩恵を得るに足ると感じさせるのだと考える。「このように彼らは、彼らがほしいものを得るために会社から詐取するか、または何がベストかを考えずに、会社の金を使う。従業員がただ単に予め決められた作業に従事したり帳簿を締めたりするだけでなく、組織は、重要な問題や優先事項を確実に話し合う必要がある。そして、その優先事項を達成した場合には、報酬が与えられる保証をするべきである。」

 Fleischmannもまた、組織は従業員を弁護できないところに追いやっていると信じている。「費用削減の中、より限られた予算でより多くの実績を上げるべきだとするプレッシャーがある。組織の中心に据えられるべき事項が、注意を惹く状況が起こるまで二次的な位置に置かれている。従業員は、しばしば気付かないか組織の決定に関与していない。このことが、誤解や怒りにつながる。仕事の決定と要求された結果についての公開性と透明性は、従業員に経営者の感覚をより感じさせ、妨害するのではなく手助けになりたいということをより強く要求するようになる。」

 Beltran-Schmitzは、言う。「不正検査士は、統制が無くても、不正が起こらなかったと予言することは出来ない。健全な内部統制を行うことによる救済の大きさを推し量ることはできない。人々を現実に直視させて容易に統計的になることができるのを絶えず実感させ続ける必要がある。」



不正検査の職業に就こうと考えている人へのアドバイス
(Advice for those considering a fraud examination career)



 Caiは、不正検査士は情熱だけでなく忍耐をも必要とするだろうと言う。「ただ単に不正検査の作業をするだけではなく、『正しく』行わなければならない。」

 Glassは、「業界で指導者を探し、あなた自身が学んだり助言をもらえたりする人たちを周りにおくこと」をアドバイスする。

 Dobsonは、不正検査の仕事に未だ就いていない人が「率先して行動せよ。電話を傍聴し記録を取り、証拠を集めたりバインダー作成を手伝ったりすることで、常に仕事を与える人たちからのフィードバックをもらうこと。直ぐに案件を請け負う専門家になるという気持ちを抑制すべき。この分野の仕事は、景気の減退とビジネスの世界の流れと共に変化し、修羅場に飛び込めば飛び込むほど、技術が駆使され、より多くの情報を得ることができる。」

 Fleishmanは、将来の不正検査士は、必ずしも『不正』の仕事を探すべきではなく、その代わりに、現在関わっている仕事で不正関連の仕事の専門家になるべきだと言う。「いわゆる『不正対策』の仕事を探しているのをよく見かけるが、実際には、不正対策担当者は、全ての領域と地位で必要とされている。『不正』の分野だけに特化してしまうと、職業の範囲を狭めてしまうし、他の領域で働くことで得られる経験を制限してしまう。」

 Johnsonは、得意分野を極めることが重要なのだと言う。「不正検査のあらゆる側面をマスターしようとする必要はない。その専門分野であなたが一番好きなものを見つけ出せば、得意分野にすることが可能だ。コンピューターフォレンジック、経済損失計算、フォレンジックアカウンティング、インタビュー、等々は、この職業の全ての要素である。色んなことに手を出すよりは、一つをマスターすることの方がずっと価値がある。」

 Arakiと多くの人はなるべく早くCFE資格を取るよう示唆している。Beltran-Schmitzは、「監査の経験が不正検査の仕事の素晴らしい基礎となった。キャリアに興味のある方には、『テストする』技術を向上させるために監査知識を身に付けておくことをお勧めする。」

 Baderは、この職業の見栄えを良くすることには反対である。「不正検査は、すぐに習得できるようなものではない。成功する不正検査士は、その職業で何年も経験を積み、十分な洞察力と才能と共に技術の向上を図ってきた。初日に、腰を下ろしてポンジースキームを解明する事を期待してはいけない。」そしてスケジュールは立て込んでいる。「先週、家内にそろそろ出張も終わると伝えたばかりだが、今日、明日からまた出張だということを知った。」

 「何件か調査を実施すると、あらゆるところに不正が見えるようになる。」とBaderは言う。「先週、友人が1年半休暇も取らなかったと私に言った。私は、彼に尋ねた。会社から何か盗みを働いているからか!と。」

 一方、不正検査の仕事について、こう語った。「行政機関で働いていようが民間企業で働いていようが、周りの人々はあなたを頼りにしている。自分のしていることを理解し、それを上手にやる道徳的義務がある。あなたに依頼をしてきた人たちは、盗まれたか強奪されたか、騙された人たちである。(その仕事を)電話で済ませるとか調子がよくないなど(の言い訳)は選択肢にない。」



Dick Carozza, CFE
FRAUD Magazine(フロード・マガジン)の編集長を務める。



コラム
若いCFEが印象深いケースを共有する。
Young CFEs share memorable case histories

秘密の出張と特別な友達に気をつけよ。
Beware of confidential trips and special friends


「私はかつて、工業製品の会社で、海外腐敗行為防止法について調査をしたことがある。結果的にCFOの社内調査となったが、その調査で、我々のチームは、現場を訪問し、様々な子会社の様々な部署との面接を行った。ある事務所の管理職との面接で、CFOが『重要な仕事の拡大』を理由に、頻繁に『秘密の』出張をしていることがわかった。出張記録と費用明細を更にチェックしたことにより、秘密の出張会議とは何の関係も無い、異常な取引の山を発見した。特に興味深かった取引の一つは、地元の自動車販売特約店へとつながり、CFOがのちに、愛人関係にあったと認めた『友達』が車を買う資金に使われていた。」

― Ryan J. Dobson, CFE


「特別会計」を無視するな
Don’t ignore the ‘special accounts’


「私は、ハワイにある共同経営企業のトラブルについて民間のケースを調査した。銀行預金明細書を調査していて、以前に見たことのない明細書の1ページを見つけた。その勘定は、『特別会計』と名づけられていた。1ページのみだったので、直ぐに調査を続けた。

翌日、私たちは、運営勘定から『特別会計』への振替を見つけた。ひとたび全ての特別勘定の明細書を取得してみると、共同経営者の一人が、この会社の勘定を自分の生活費にあてるために使っていた事実をつかんだ。クレジットカードの支払い、自動車のローン、住宅ローンやこの人間のその他の費用は、全てこの勘定から出ていた。我々の部門では、今や、あらゆるケースで『特別会計』を無視するな、というジョークがはやりつつある。」

− Brett A. Johnson, CFE


会話は順調に続いたが…
Conversation was going fine until …


「私は、ある組織の監査を行っていて、購買の不正と思われる証拠を見つけた。十分な証拠を集めるためにたいへん詳細にわたる調査を実施し、監査期間中、不正実行者とおぼしき人と面接した。不正検査ではなかったので、この時点で自白を引き出そうとはしなかった。

かき集めた十分に価値のある情報をもとに、順調に会話したと思った。面接が終了した後で、彼女に「あなたに話した事で、私がトラブルに巻き込まれたら、覚えておきなさいよ!」と言われた。

その後、彼女は購買不正に関与していた罪が発覚した。私は、復讐もされず、彼女は連邦刑務所で過ごしている。不正は、必ずしも監査や不正の中で姿を現すわけではないということだ。この事件を通して、私は職業的懐疑心を磨き続ける必要性を学んだ。」

− Laura Beltran-Schmitz, CFE, CPA, CGFM


彼は主な訴訟のケースの先駆者と始めた。
He started with the granddaddy of major litigation cases


「Bernard L. Madoff Investment Securitiesの倒産を監視する受託者のための証人の専門チームについて調査できて幸運だった。一から十まで、法律家のケースワークの展開全てと執行を経験することができた。主な訴訟のケースを手掛けたことは無かったが、法律の分野で慣例と最適な実務について多くを学んだ。」

− Chris Ekimoff, CFE, CPA, CGMA, MAFF


詳細は、Fraud-Magazine.comを参照されたい。



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