FRAUD MAGAZINE

談合の発見
FINDING THE BID RIGGERS
契約および調達に関する不正行為についての12の危険信号
12 RED FLAGS OF CONTRACT AND PROCUREMENT FRAUD


契約管理業務の増加、商品や役務の外製化は調達関連の不正の増加を招いている。
何百万ドルの不正を防ぐ12の危険信号を紹介する。


Charles Piper, CFE, CRT
翻訳協力:真柳 元



 QRX社のトップは同社の購買契約担当職員について頭を痛めていた。購買契約職員は新しい取引先に仕事を与える一方、古い取引先を無視しているようだった。QRX社は、新規取引先の導入に対し反対ではなかったが、昔からの取引先は不平をこぼし始めていた。私はQRX社に調査を依頼された。

 私はある競争入札に注目した。そこでは購買契約職員は評判の良い入札業者に低い評価を与える一方、新規入札業者に高い評価を与え、従来の倍の価格で発注していた。後に判明したことだが、入札評価担当者は受注者の友人だった。実際、受注業者は競争入札の間中、この評価担当者に自社との仕事を提供していた。

 幾つか細かい点は変更したが実際に起こったこの事例は、調達と契約についての赤信号の一つ「最低価格業者以外の獲注 (Awards to non-lowest bidder)」(詳細後述)を示している。

 これは調査すべきより複雑な不正の一角にすぎない。契約プロセスを操作し、公正な競争入札を排除して不当な利益を得る方法は極めて多い。

 最初にこの契約関係不正調査を始めた時、私は少々圧倒されていた。私が行なわなければならなかったのは、まず契約のルールを学ぶだけではなく、そのルールをどう操作できるか、どこに抜け穴があるかを解明することだった。私が手続について質問した時に、何人かの購買職員は虚偽の説明を行ない、私の仕事をより難しくした。しかしながら、(懐疑心を持って)質問を続け、調べ続ける内に、この契約分野での「悪者」をつかむのがだんだんうまくなっていった。

 この記事で、私は12の危険信号を説明する。これらの危険信号は、不正を示唆し、また不正検査士が上司なり他の者と、契約と調達を調査する際に疑るべき事例を示す。また、私がこの分野で不正行為を発見した方法も説明する。(このリストは決して完全なものでない。不正検査士マニュアル2012の1.1901も参照のこと)(訳注:2005-2006日本語版では T−694ページ)


12の危険信号(12 red flags)


 1.同一業者への発注の繰り返し
 2.競争業者の苦情と抗議
 3.品質と量についての苦情
 4.一定限度内の契約分割
 5.異常な入札パターン
 6.代理人手数料
 7.疑わしい入札業者
 8.最低価格業者以外の獲注
 9.契約範囲の変更
10.頻繁な契約後変更
11.緊急発注または単独供給
12.疑わしい少数民族・障害者会社


1.同一業者への発注の繰り返し Repeated Awards to the Same Entity

 同じ商品や役務に対して同じ業者が何度も受注している理由、当事者の説明の妥当性を判断すること。購買職員の契約前の記録を調べ、要求事項を示しているか、相場を調べたか、入札は適切なタイミングかを確認すること。

 後付けの文書日付に警戒すること。私は、ある調査中に購買職員の以下のメモに気付いた。「業者Xがベストバリューと決定した。」この中の「決定した」という過去形が警戒信号となった。資料中にウェブサイトから他の業者の価格表を入手したが、ページ最下部に小さな文字で発注の2週間後の日付が印刷日付として印字されていた。

 はじめ、その購買職員は発注前に価格を取り寄せたと説明していた。しかし、この証拠を示され、実は競争見積りは取らなかったこと、書類は事後に作成したことを認めた。後になって、発注業者を最初から決めていた事も認めた。


2.競争業者の苦情と抗議 Competitive Bidder Complaints and Protests

 入札を落した業者の苦情や抗議に耳を傾けなかったり真面目に取り合わないと、調達の汚職を確実に見逃すことになる。一般に購買職員はそれらの苦情に意味があるかないかを判断する。しかし、もっと客観的な方法としては、十分な知識を持ち、経験豊かで、独立した、客観的な、そして公平なCFEか調査人にそれらの苦情をレビューしてもらうことだ。同様に、多くの行政組織は他の客観的な政府機関の協力を得て公式に寄せられた抗議をレビューしている。

 定期的に、入札を落した業者の苦情のランダムサンプルを抽出し、それらの苦情が適切に解決されているか、結果を吟味すること。しかし、多くの業者は公式に苦情を言ったり抗議することはまずないことに留意すること。多くの業者は、苦情や抗議をもらしたら二度と発注してもらえないと信じているし、効果はなく時間の無駄だと思っている。

 私はある供給業者に面接調査したことがある。その業者は、今まで入札し続けてきたが、これからもずっと受注出来ないだろうと言った。仮に汚職の疑いを警告したとしても誰も信じないだろうと思っていたと。私の面接調査を大歓迎し彼の懸念を話してくれた。調査の結果、購買職員が封印された入札をひそかに開封し、袖の下をくれる親密業者に競争業者の入札価格を洩らしていたことが判明した。


3.品質と量についての苦情 COMPLAINTS ABOUT QUALITY AND QUANTITY

 商品や役務の品質について、一つの業者に対し繰り返し苦情が出てくることは、次に示すような多くの不正の警戒信号だ。欠陥商品、製品代替、員数不足、架空発送(請求書は届くが、品物は届かない)、二重請求等々。これらの不備は偶然かも知れないが、そうでないかも知れない。

 ある会社の品質管理責任者に尋ねたことがある。納入業者が請求書を送ってきた。支払も済んだ。しかし、まだ品物は届かない。こんな時にはどうするのか?「30日以内に品物を送るように言います。」というのが答えだった。要するに、虚偽の請求書を送ってきた業者に対する懲罰は当初の業務を実行することだけなのだ。それも、もし連絡がきた場合には、である。最初から納入するつもりのない業者にとっては、どんな安値入札も簡単なことだということは覚えておかねばならない。


4.一定限度内の契約分割
  MULTIPLE CONTRACTS AWARDED BELOW COMPETITIVE THRESHOLD


 ある調査を通じて、納入業者から既に支払済みの納品がまだないこと、または納入数が不足していることについて、多くの従業員が苦情を述べていることを知った。買い手は、納入業者が請求書を送り、支払を受けた後に苦情を言っていた。私は該当取引の発注前の諸記録の中から、ある購買職員が二つの方法で特定業者に発注を繰り返していた証拠を発見した。

 第一には、2,500ドル以上は競争入札が必要と定められていたため、発注金額を2,500ドル未満に抑えて競争入札を回避していた。(時には、一つの取引を分割して2,500ドル未満としていたようだ。)

 第二には、2,500ドル以上25,000ドル未満の場合には3社から電話で見積りを取ることが定められていた。購買職員はその通り3社から見積りを取っていたが、問題の特定業者の見積りは常に3番目に取られており、常に先に示された2社より若干低い価格だった。問題の特定業者に最初に電話しないのはいかにも不自然だった。私は購買職員がその特定業者から袖の下(現金と銀行小切手)を受け取っていた証拠を発見した。その購買職員は、面接調査の際、その業者が必ず安く入札できるように競争業者の入札価格を教えていたと認めた。

 その購買職員は、常に最低価格で購買できたので会社のコストダウンになったのだと言い、その業者の納入についての社内の苦情については、他に担当部門があり自分の担当ではないので自分の知るところではないと言った。


5.異常な入札パターン ABNORMAL BID PATTERNS

 多くの会社では高額の購買の場合に入手した複数の入札価格を要約等何らかの形で記録しておく。もし、殆どの入札価格が高いのにもかかわらず、1社だけが低い価格を提示していたら、それは極めて異常だ。例えば、電線の入札に際し、5社が1フィート単価60ドルから75ドルを提示し、1社が単価15ドルを提示した場合、これは危険信号であり、安値の電線は要求規格を満たしていない危険がある。実はこれは私が調査した事案であり、この安値業者は欠陥電線を納入していた。同様に3社が単価60ドルから75ドルを、3社が単価10ドルから15ドルを提示した場合も、何かがおかしい可能性がある。全ての入札業者に別々に面接調査をすると、興味深い詳細が明らかにできるかもしれない。

 高値入札3社低値入札1社のケースを調べる場合、逆に、高値入札3社にとって1社の低値入札は予想外だったのではないかという可能性も疑うべきだ。1社の低値が妥当な価格であり、3社の高値は意図的につり上げられていたという場合だ。高値入札3社と結んだ他の契約を確かめ、その契約記録をレビューすること。


6.代理人手数料 AGENT FEES

 しばしば、納入業者は契約を結ぶ前に、原価と価格資料(こちらはあまり実行されない)を提供するか保証することを要求される。「代理人手数料」という項目があれば何であれ吟味すること。代理人の氏名や、業務内容を確認する。

 私が実施したある調査で、ある「独立」代理人は「10パーセント屋」と呼ばれていた。名前が示す通り、彼は納入業者の代理人として活動し、契約が成立すれば契約金額の10%を受取った。(然り。これが危険信号だった。)この代理人は購買部のオフィスに頻繁に出没し、しばしば購買部員を昼食に連れ出していた。そして一体何枚の商品券やスポーツチケットが購買部員に渡ったのかは誰にも分からない。

 私が請負業者に代理人の役割について質問すると、「我々の入札をまとめるのを手助けした。」(ある意味では、確かにその通りだろう)というのが典型的な答えだ。一人の代理人が同じ契約のための複数の入札業者の代理人となることもある。私が調査したある事例では、10パーセント屋は袖の下の支払も仲介していた。会社は部外者がオフィスに出入りできる条件について書面で方針を設定すべきだ。また、会社は従業員に対し、取引先から受け取る金額の年間上限を書面で定め教育すべきだ。会社がルールを作らなければ、どこにもルールはない!


7.疑わしい入札業者 QUESTIONABLE BIDDER

 価格の妥当性を判断する方針は企業により異なる。市場分析、同種または類似の商品/役務の価格推移分析、インターネット、または上記3つの全て等。しかしその多くは入札業者が公正で競争力のある価格を提示するという誠実性を前提としている。買い手企業は、真面目な業者ならば受注できない高値や利益の出ない安値を意図的に提示する筈がないと、理由づける。

 しかし、時に納入業者は発注者の信頼に乗じることがある。私が調査したある事例では、複数の業者が順番に受注するために密かに共謀していた。最悪の談合である。全ての入札価格は最低入札価格も含めて、市場平均より高くなっていた。しかし、それぞれの価格は同じレベル内にあったので購買職員は妥当な低価格に違いないと決め込んでいた。

 他の請負業者に落札させて種々の利益を得るために「コンプリメンタリー・ビッド」(形だけの入札)を行なう業者もある。例えば、連邦調達規則では、適正な競争と価格類似性があれば、価格の妥当性を判断でき、また最低価格入札者がコストと価格資料を保証しなくともよいとされている。(連邦調達規則15.402と15.404 参照)

 コストと価格資料を保証する必要がない場合、受注者は契約作業中に供給業者やベンダーを入れ替えることができる。しかし、コストと価格情報を保証する必要があるときには、どんな変更も調達担当の許可を得なければならない。もしその変更により受注者のコストが下がるならば、政府は契約価格を下げることができる。要するに、不正検査人や調査人は、そのような規則があるからといって、競争や価格類似性の存在を理由として妥当な価格水準だと決め込んではならない。

 入札時の競争業者が、受注業者の下請として仕事をしていることがある。この関係が何度も繰り返され、また業者同士交互に受注と下請とを交代しているようであれば、これは偶然以上のものだと判断できる。互いに受注と下請を交代する事により、仲間内の業者は常に仕事を(そして売上を)確保している。− しばしば水増し価格で。

 契約と記録の書面調査だけでは共謀を証明できないだろう。幾つかの場所で、巧みに練られた面接調査を行なう必要があろう。巧く話を持って行ければ、役立つ情報が得られるだろう。

 例えば、欠陥商品納入の調査で、受注業者は最低価格入札業者ではなかった事に気付いた。私はオーナーにどうして受注できたのか尋ねた。オーナーの答えは、最低価格入札業者が最終的に別の会社の高額取引を獲得したので、こちらの入札からは下りたのだ、ということだった。

 オーナーはこう言った。「あっちが下りたので仕方なかったんです。こっちが受けなきゃしょうがないってね。」私は変な言い方だなと思った。例えば「あっちが下りたって聞いた時には嬉しかったですよ。これで我が社に仕事が回ってくるってね!」といった答えがありそうだったのだが。オーナーの言葉で、私はこの入札経緯を調べる気になった。調査すると、最初の最低価格入札業者と他の何社かとは、以前、連邦裁判所で談合の有罪判決を受けていた。その中の何社かは合衆国政府からの受注をねらった調達担当者への贈賄でも有罪判決を受けていた。調査中に、一人の疑わしい工場長が自殺した。

 「適正な競争と価格類似性」条項のため、私が調査していた契約業者は、コストと価格資料を保証する必要がなかった。契約締結後、オーナーは、見積り時の供給業者からより安価な規格外材料の供給業者に変更した(購買職員の承認は求めなかった)。この変更によりオーナーは100万ドルの追加利益を得た。私は後に、筆跡鑑定と面接調査により、職員も共謀しており、安価な規格外材料の代わりに偽の材料サンプルを提出した事を証明した。(こんな材料だから100万ドル浮いたと言える。)

 入札してくる業者には、業務遂行のために必要な設備すら持っていないところもある。彼らは本質的にコンプリメンタリー・ビッドのためのペーパーカンパニーであり、受注した場合には下請け(おそらく他の入札業者)に丸投げする積りである。

 通常、政府契約には下請限度を定める条項が含まれている。(FAR 52.219-14下請限度参照)。しかし、場合により、調達職員によりこの「必要」項目が契約書から意図的に除かれ、丸投げが可能になる場合があることを知った。

 架空会社による入札や親族会社による入札を行なう厚顔な業者があることは知られている。同じ住所や同じ電話番号が示された入札には警戒すること。1つの住所に3つの会社があった実例がある。同じ誤字や同じFAX番号、良く似た手書きサイン等にも警戒のこと。


8.最低価格業者以外の獲注 AWARDS TO NON-LOWEST BIDDER

 当記事の冒頭の事例のように、入札の一つ一つを評価する評価担当者の中には、内容に係わらず発注業者をさっさと決める者がいる。業者選定の際、最低価格ではなく「ベストバリュー」に対する発注が行われるべきである。例えば、全くの新参業者が最低価格を提示したとしても受注獲得は難しいだろう。以前から取引をきちんと行なってきた実績のある業者の方がリスクは低いという意味でバリューを評価される。

 評価担当者が「対応不十分」とした評価を確認することも良いアイデアだ。入札業者に一定の質問や依頼を行なったが対応がなく、従ってその段階で候補より除外する、という評価担当者のレポートが実は虚偽のものだったということがある。

 私が手掛けた事例で、A社に対し財務能力判定用の財務記録の提出を要求したが、A社は拒否した、というものがあった。評価担当者はA社を「対応不十分」と評価した。評価担当者の親密先であるB社については「財務記録提出要求について理解していると、B社は述べた。」と記述されていた。しかし奇怪なことに、B社も財務記録の提出を拒否したことについては、評価担当者は書き落していた。A社は門前払いされ、B社が受注を獲得した。


9.契約範囲の変更 CONTRACT SCOPE CHANGES

 発注会社は必要とする役務/商品について詳細に示し、それに対して入札業者は価格を提示する。必要な規格を公開しなければ、購買職員は比較検討出来ない。私の指揮した事例では、受注業者決定後に当初全くなかった別工事を追加発注した事例がある。受注業者は売上が増加し大喜びだったが、他の業者は別工事分については入札の機会さえ与えられなかったと当然の苦情を述べた。

 契約要件の範囲をこっそり変えることは、社内ルール違反であるかもしれない。この変更について購買職員と業者とが業者選定以前から共謀し計画していた可能性にも留意しておくべきだ。通常、企業は契約変更について契約修正・改訂という様式で記録すべきことを定めている。


10.頻繁な契約後変更 NUMEROUS POST-AWARD CONTRACT CHANGE ORDERS

 最低価格またはベストバリューを提示した業者を選定した後で、類似の内容を追加し発注金額もその分追加するかもしれない。私の実例では、購買職員とある業者とは、最後に仕事が追加されることを最初から知っていたが、この情報はどこにも示されず競争他社は知らなかった。もっとよくある話としては、再入札の時間と費用を節約するために、既存契約への追加が行なわれることがある。


11.緊急契約、特命契約 URGENT NEEDS OR SOLE SOURCE

 緊急に必要で、遅滞が許されない場合、多くの会社は、競争入札なしでの購買を認めている。(戦争中には米国防総省はそうするだろう)。しかし、緊急ではない、またはずさんな計画のしわ寄せで急いでいるだけというケースも少なくない。競争入札がない場合、不公正な指名や必要以上の支払といった事態が起こり得る。

 特定の製品または役務について特定の業者(特命先)を指名し、競争入札なしで特命先に発注することが、時折行なわれる。当該特命先の選定過程記録をチェックすること。当該特命先以外は供給能力がないことの確認してみること。単純にインターネットで検索するだけで供給能力を持つ多くの他社が見つかるかもしれない。


12.疑わしい少数民族・障害者会社 QUESTIONABLE MINORITY/ DISABLED OWNERSHIP

 米連邦政府・州政府・多くの自治体は、その契約の一定割合を少数民族/障害者の会社に発注する。それはそうではあるが、統計的には、実際には少数民族/障害者の会社ではないことがあまりにも多い。多くの場合、少数民族/障害者の会社が受注の概ね50%は自ら行うことと定められているが、調査の結果はそれ以上の比率が下請けに出されていることがある。多くの優先枠条項では、当該少数民族/障害者オーナーが実際に運営すべきこと、または経営の出来る地位にいるべきことが定められているが、実際には当該少数民族/障害者「オーナー」がいない、または名目だけのこともある。

 米国防総省監察総監室は報告書「SDVOSB(傷痍軍人小企業)に対する優先枠プログラムの国防総省全体に亙る不適切な管理、及び無資格会社との契約について」(報告書番号No. DODIG-2012-059, Feb. 29, 2012)を発表した。同報告書では、資格のない会社がSDVOSB枠による契約を受けていた例、資格を偽ってADVOSBを申請していた例等が報告されている。



信用を落とした購買職員達 (Compromised Contracting Officials)


 購買契約手順のコンプライアンスを調査・分析・レビュー・監督する立場の不正検査士・調査人・監査人はこれら12の危険信号を忘れてはならない。一方、献身的な購買職員が、上司の不適切な示唆・指示・圧力によって、誠実性に反する契約を結ばざるを得ないこともあることも留意しておくこと。

 熟練した不正検査士/調査人は、調査過程の中で、徹底的且つ十分に練られた面接を行なう。異常を見つけた時に、たった一つだけであることを理由として、偶然の事象や偶然の一致だと片づけてしまわないこと。更なる調査・面接・分析により一定の型・損失・共謀・汚職・利益相反等が発見されることがある。



Charles Piper, CFE, CRT
チャールズ・パイパー・プロフェッショナル・サービス(西テネシー州)オーナー



コラム コラム
応札募集以前の段階でのスキームの発見

 契約及び調達の応札募集以前の段階でのもっとも顕著なスキームは、必要性の認知スキームと入札調整スキームである。


必要性の認知スキーム

 契約交渉におけるこの段階での代表的不正行為は、買い手と請負業者との癒着であり、買い手の従業員が特定の製品やサービスに対する「必要性」を認定する見返りに、謝礼やキックバックを受け取ることである。


入札調整スキーム

 選定プロセスを支援するために、提供する物品やサービスの種類及び数量を規定した入札仕様書や作業明細書が作成される。これは、入札希望者や選定作業を行なう職員に対して、入札の実施や承認に関する明確な基準を提供するためのものである。

 契約書には、請負業者の権利と資格を明確に定めた使用・基準・作業明細を含めるべきである。内容に不備のある契約書では、将来、買い手が意図した以上の金額を受け取る資格があると請負業査が主張する可能性がある。

 入札調整スキームは、調達責任のある従業員が、しばしば供給業者または請負業者と共謀して、特定の請負業者に不公正に有利になるように入札仕様を調整することである。

 入札調整スキームには様々な方法がある。買い手の従業員と請負業者が共謀して、意図的にあいまいな仕様書を作成する場合がある。その他、価格を引き上げるための契約改定作業を入札後直ちに行うことをあらかじめ合意しておくという手段がとられるケースもある。

出典:2012不正検査士マニュアル 1.1902
(訳注:2005-2006日本語版ではI−694ページ)



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