FRAUD MAGAZINE

大学スポーツチケット不正
FRAUD IN COLLEGIATE ATHLETICS
刑務所への片道切符
One-Way Ticket To Jail
When Major League Money Meets Little League Controls

ハーバート・W・スナイダー(Ph.D, CFE)
デービッド・オブライアン(Ph.D, CFE, CPA, CMA)

:著
Herbert W. Snyder, Ph.D., CFE, and David O’Bryan, Ph.D., CFE, CPA, CMA



カンザス大学で起こった巨額のスポーツチケット一大不祥事は、CFEがいかにして運営管理者と理事会を説得し、スポーツ学部に対する統制の回復を手助けできるかをはっきりと示している。その答えは独立したモニタリングにあるだろう。


 2009年6月30日、デービッド・フリーマン(David Freeman)は連邦裁判所管轄の贈収賄事件の一環として銀行不正を謀略した罪を認めた。判決が宣告される前に裁判官の心証を良くしておこうと、彼はカンザス大学(University of Kansas, KU)におけるフットボールとバスケットボールのチケット窃盗および転売に関する情報を捜査官に提供した。フリーマンはある2人の人物を密告し、うち一人の容疑は晴れたものの、もう一人は事件の中心人物であったことが証明された。

 フリーマンの刑期は24ヵ月から18ヵ月に減刑されたが、2010年4月22日付けトピカ・キャピタル・ジャーナル紙(The Topeka Capital-Journal)、『カンザス大学チケット不祥事−情報源は開発業者(Developer source in KU ticket scandal)』のスティーブ・フライによると、フリーマンの弁護士は、減刑は彼が提供した情報に見合ったものではないと主張している(http://tinyurl.com/24wwss9)。

 2009年末、連邦当局はカンザス大学の職員に連絡を取った。追い詰められた大学は2010年3月、ファウルストン・シーフキンLLP(Foulston Siefkin LLP)ウィチタ事務所の協力で内部調査を実施すると発表した。フォレンジックアカウンタントの手を借り、ファウルストン・シーフキンは2005年から2010年にかけて6人の職員が共謀してカンザス大学のスポーツチケット約2万枚(その大半がバスケットボールの試合で、中にはファイナル・フォー(Final Four)トーナメントのチケットも含まれていた)を不正に販売または使用していたことを明らかにした。売上高は額面額で100万ドルを超え、市場価格では300万ドルにまで上る可能性があった。また2010年5月26日付けカンザス・シティ・ビジネス・ジャーナル紙(Kansas City Business Journal)、『カンザス大学のスポーツチケット不祥事、損失額は300万ドルに上る可能性も(University of Kansas athletic tickets scam losses may reach $3M)』によると、さらに悪いことに、職員らは説明責任から逃れるため、不正に販売したチケットを「無料券」と称した項目に分類して隠蔽したため、調査官たちは実際にブローカーに売られたチケットの枚数を断定することができなかった(http://tinyurl.com/3nvaf76)。

 2005年以前に関しては、スポーツ学部が記録を残していなかったため調査は行われなかった。連邦当局によるカンザス大学のチケット販売および資金調達活動に関する捜査は、2010年から2011年まで続いた。

 2010年5月26日発表のカンザス大学内部調査は、スポーツ学部開発課長(associate athletic director for development)、スポーツ学部チケットオフィス課長(associate athletic director for the ticket office)、スポーツ学部開発課長補佐(assistant athletic director for development)、スポーツ学部販売・マーケティング課長補佐(assistant athletic director for sales and marketing)、スポーツ学部チケット運営課長補佐(assistant athletic director for ticket operations)、およびカンザス大学のコンサルタントとして働いていたスポーツ学部チケットオフィス課長の夫が関与しているとした。



実際に何が起こったのか (WHAT ACTUALLY HAPPNED?)


 被告人らは、大学の無料チケットの方針を3つの手段で不正利用したとされている。

 第一に、公式方針の下、スポーツ学部の特定の職員はチケットを転売しないという条件で、各スポーツイベントにつき無料チケットを2枚手に入れることができた。ところがスポーツ学部は、これら職員に対し3枚以上のチケットをしばしば提供し、チケットの転売を公然と奨励するとまではいかないにしろ、これを黙認していた。

 第二に、スポーツ学部の開発/資金調達担当者は寄贈者候補との親睦を図るために無料チケットの利用が許可されていた。しかし、彼ら職員は必要以上にかなり多くの無料チケットを自由に使用していた。

 第三に、スポーツ学部のメンバーは慈善団体専用に確保された無料チケットを不正に使用または転売していた。

 被告人らはチケットの受取先をRJDD(ロドニー・ジョーンズ寄贈者一任勘定、(Rodney Jones Donor Discretionary))など架空の取引相手とし、最終的な受取人を記録しないことで、これらの窃盗を隠蔽した(ジョーンズはスポーツ学部開発課長補佐で、前述の情報提供者が名を上げた2人の人物のうちの一人である)。

 隠蔽工作のために、2009年までに当初の不正はさらに悪質なものとなっていった。ファウルストン・シーフキンがカンザス大学の総合委員会に提出した最終報告書によると、2008年から2009年のバスケットボールチケットの売上記録の帳尻が合わなくなると、シャーロット(Charlotte Blubaugh)はブランドン(Brandon Simmons)とジェイソン(Jason Jeffries)に対し、書類をスポーツ学部のオフィスからフットボールスタジアムに移すよう指示した。そこで、彼女とベン(Ben Kirtland)、トム(Tom Blubaugh)が週末にそれらの書類を破棄し、紛失したことをスタジアムの建設のせいにしようというのだ。

 別件の不正スキームでは、スポーツ学部のコンサルタントとして雇われているはずのスポーツ学部チケットオフィス課長の夫が、合計11万6,500ドルに上る支払いを受け取っていた。この支払いは、すべてスポーツ学部開発課長によって承認されたものだった。ところがどうやら、彼は支払いの見返りとなるサービスを一切提供していなかったようだ。

 重要なことに、選手や監督、スポーツ学部外の大学の運営に携わる人々がこれらの犯罪に関わっていることを示す申し立てや証拠は存在しなかった。スポーツ学部長は不正に関与していなかったが、監督不行届が不正の規模と期間の一因となったとしてその責任を認めた。このように、当該不正はスポーツ学部の職員のみによって行われたものだ。

 では、少なくとも5年の間、これらの不正はなぜ発見されずにいたのであろうか。そして、このような状況を防ぐために不正対策の専門家に出来ることは何であろうか。



大学のスポーツプログラムが不正に晒されやすいのはなぜか
(WHY COLLEGE ATHLETIC PROGRAMS ARE VULNERABLE TO FRAUD)



 チケット不祥事はカンザス大学に限られたものではない。同大学の不祥事は、ルイビル大学(University of Louisville)、コロラド大学(University of Colorado)、マイアミ大学(University of Miami)などのスポーツ学部で発生した金融不祥事の中で、最近起きた最大規模の事件であったに過ぎないのだ。カンザス大学で起こった出来事は、大学のスポーツプログラムでますますよく見られるようになってきた、以下に挙げる単独だが関連性のある複数の問題が組み合わさったものだ。

・ メジャーなスポーツプログラムは巨額の資金を創出および支出している
・ これらのプログラムは、たいていが財務における透明性に欠けている
・スポーツプログラムは通常、大学の監視下から独立して運営されている

 ここで見てきたように、カンザス大学で行われた不正は、特に巧妙なものではなかった(例えば、スポーツ学部チケットオフィス課長はチケット購入者のために複数の架空取引先を使用していたが、そのビジネス住所は彼女の住所と同じものであった)。不正対策の専門家が直面する問題は、財務統制の策定や実行することではない。課題となるのは、上級管理者と監視理事会がスポーツ学部内における権威を回復するよう説得し、既存の内部統制を有効にすることだ。

 高等教育機関では一般に、スポーツプログラムを成功させるのに競技場やジムにおいてトップダウン型指揮統制を用いている。しかし、スポーツ学部はプログラムのビジネス運営面にこの統制法を不適切に採用するかもしれない。不正検査士は、大学のスポーツプログラムは不正に晒されやすいことを理解し、以下の要因に注意しよう。


大学スポーツは不正に金儲けできる標的である

 大学スポーツにおけるチケット販売不正が困難となることの一つに、莫大なカネが集まるところには不正も集まるという点が挙げられる。全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association, NCAA)が発表し、ESPN(『大学スポーツを動かすカネ(The money that moves college sports)』、2010年3月3日、ポーラ・ラヴィーン(Paula Lavigne)著、http://tinyurl.com/yf5d9vw)がまとめた最新の統計によると、米大学アメリカンフットボールのトップレベル、ディビジョン・I・フットボール・ボウル・サブディビジョン(Division I Football Bowl Subdivision)を成す120大学は、毎年チケット販売から11億ドル以上を創出している。中でも上位5校は、3,060万ドルから4,470万ドルの資金を得ている(これに比べて、カンザス大学は巨額だが決して例外ではない。同時期、カンザス大学スポーツプログラムは6,500万ドル超を支出、チケット販売からの収入は1,700万ドル超であった)。


大学スポーツは適切な財務管理よりも勝つことに価値を置く傾向を強めている

 こうした巨額の資金に内在するリスクは、試合に勝利しテレビでの露出を高めるという、スポーツプログラムの直面する非常に強いプレッシャーの下でその度合いを一層強めている。大学スポーツに関するナイト委員会(Knight Commission)の2009年の報告は、「試合勝利とテレビ市場のシェアの増加が一層重視されるようになることで、支出がさらにエスカレートしている。なぜなら、スポーツプログラムに、より多くのカネをつぎ込めば、それがスポーツ部門におけるより多くの成功につながり、ゆえにより多くの収益につながるという、根拠はないがしかし根強い考えが存在するからだ」(『バランスの回復:ドルと価値、そして大学スポーツの未来(Restoring the Balance: Dollars, Values and the Future of College Sports)』、http://tinyurl.com/yjvr9kp)としている。

 背景は異なるものの、こうした状況は不正に晒される多くの事業に共通する。高収益に加えて、すべてを犠牲にしてまで成長を重視すると、たいていの場合、組織は自身の統制を凌駕し、無節操な従業員によって資金を吸い上げられるような状況を招いてしまうのだ。


スポーツのチケットは本質的に価値のあるもので、容易に現金化されてしまう

 スポーツ学部は、チケットという価値があり容易に交換可能な資産の在庫を有する。チケットブローカー、ダフ屋、チケット所有者間の販売を含む活発な流通市場は、非公式で追跡が困難なチケットの転売を容易にしている。そして、高額の額面価格のチケットの市場価値がかなりの頻度で大幅に上回る際に、この状況は悪化する。

 また、無料チケットの管理人は、これらの貴重な財産を欲しがる人々に対して強い権力と影響力を行使することができる。普段は善良な人でも、ファイナル・フォーやボウル・チャンピオンシップ・シリーズ(Bowl Championship Series)などの無料チケットに誘惑されて、悪事に目をつぶるかもしれない。


大学スポーツ学部はしばしば運営上の透明性に欠ける

 情報アクセスの欠如は、不正を手助けする典型的な条件だ。大学スポーツ学部が求める財務報告は、公開される情報の量と質の面で大幅に異なる。例えば、運動競技における情報開示の公正規定(U.S. Equity in Athletics Disclosure Act)は、大学が米教育省に年次報告書を提出するよう義務付けている。しかし、遵守が求められるのはたった6分野に過ぎず、あまりにも幅の広い区分であるため、大学ごとに差異が生じるのを許してしまっている。ラヴィーン著の2010年ESPNの記事によると、スポーツからの収益が年間4,400万ドルのテキサス大学、スポーツ分野の年間予算が1億2,600万ドルのアラバマ大学など、数多くのディビジョンI大学が営利目的企業に匹敵するかあるいは凌駕しているにも関わらず、米証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)や国税庁(Internal Revenue Service)が課するのと同様の報告義務が求められていないことを考えると、こうした状況はいささか皮肉である。

 たいていの場合、一個人がスポーツ学部の日常の財務管理を取り仕切っており、営利目的企業に通常見られる財務統制やモニタリングの対象とならない。

 このように一人の人物に全権力を委ねる傾向は、たいてい非常に優れた監督のいる大学から始まっている。ナイト委員会による2009年大学学長の調査によると、外部資金の影響で監督やスポーツプログラムに対する彼らの管理能力が損なわれてしまったと、学長の大半が考えている。(『フットボール・ボウル・サブディビジョン大学の学長を対象とした、大学スポーツの費用と資金調達に関する定量定性調査(Quantitative and Qualitative Research with Football Bowl Subdivision University Presidents on the Costs and Financing of Intercollegiate Athletics)』、http://tinyurl.com/yjvr9kp)

 こうした傾向は監督から全権を有するスポーツ学部長にまで続いた。ジョン・ガサウェイ(John Gasaway)は自身のブログ『バスケットボール・プロスペクタス(Basketball Prospectus)』で、この影響を「リュー・パーキンズ虚偽(Lew Perkins Fallacy)」と命名するにまで至っている。(彼は、チケット不祥事で辞職したカンザス大学スポーツ学部の前学部長からこう名付けているが、この現象は決してカンザス大学に限られたものではない。)ここで言う虚偽とは、莫大な資金を創出する学部の運営を統括すれば、カンザス大学の6,500万ドル、そしてリュー・パーキンズ自身の400万ドルという巨額の給料を正当化できるという誤った考えを指している。(『カンザス大学のスポーツ部員はリュー・パーキンズ虚偽を見抜いている。では、他者はどうだろうか?(Jayhawks see through the Lew Perkins Fallacy. Will others?)』、http://tinyurl.com/3vrok9d)

 巨額の給料は、大学財務に対する圧力のほかに2つの関連した問題を引き起こす。スポーツ試合の勝利が必ずしも経営または財務上の能力につながるとは限らない。実際には、勝利は無敵のオーラを助長し、これが緩い監視につながるため、財務不正の一因となる可能性がある。金の卵を産むガチョウを誰が殺そうとするだろうか。ガサウェイによると、カンザス大学スポーツ学部長は、何百万ドルという大学の将来的な収入源を喪失したのだ。

 第二の問題は、巨額の給料の資金源は、たいてい民間によって支払われている点である。ナイト委員会の調査で多数の学長が、給与支給のためにスポーツ学部はテレビ局との契約や私的な資金集めといった外部からの収入源をより多く受け取るようになっており、スポーツ学部を統制しきれなくなっていると答えた。


チケット監査には特別な検査が必要かもしれない

 大学の大半が、主な寄贈者や寄贈候補者に対して無料または割引チケットを提供する。そしてその相手は試合ごとに異なる。そこで、スポーツ学部は内部統制を評価し、チケットオフィスが寄贈者チケットを過度に発行しないよう、実際の試合の出席者と収入を照合する必要がある。

 カンザス大学の不祥事から明らかなように、適切な職務分離が成されるよう、スポーツ学部から独立した者が各イベント終了後に時宜を得て突合わせを行うことが絶対不可欠だ。

 職員に無料チケットを提供する学部は、さらなる統制と評価が必要だ。たいていの場合、無料チケットは職員の課税所得の一部として報告がなされるべきである。同様に、職員が雇用契約で許可されている枚数以上のチケットを受け取らないよう、内部統制が敷かれなければならない(しかしながら、複数のフロント組織がチケット課長の自宅住所を使用していたことから分かるように、カンザス大学の監査人が定期監査時に不祥事を見逃したのは、特別訓練の欠如以前の問題のようだ)。



大学スポーツにおける権威を回復する
(REASSERTING CONTROL OVER COLLEGE ATHLETICS)



 大金がかかるスポーツが大学にふさわしいか否かは、本記事の範囲を超えている。しかしながら、巨額の収入源は今後も大学スポーツにおいて切り離せない部分であり続けるだろう。スポーツプログラムの削減は別として、大学が採るべき明らかな方針は、スポーツ資金のより良い管理人になることだ。さらに具体的に言えば、カンザス大学や他の大学で不祥事を引き起こした大学スポーツに共通の側面に焦点を当て、より良い透明性や監視などの点で改善していく必要がある。


透明性

 組織の財務公開はさまざまな不正に対する強い抑止力となる。米教育省は大学に対しスポーツプログラムのある程度のデータ報告は求めているが、法で義務付けられているのは非常に大まかに区分された分野に限られているため、大学同士の開示内容を比較するのは困難だ。これに比べてNCAAはより詳細な情報公開を求めている。だがしかし、一般人がこうしたデータに目を通すことはめったにない。加えて、NCAAは大学がデータを分類する上でかなりの自由裁量を許している。

 統一された会計と報告制度があれば、スポーツプログラム間の比較可能性と一貫性を促進することができるだろう。正確性と信頼性を高めるために、外部関係者に提供される情報はスポーツ学部から直接来るのではなく、大学の中央財務部から来るべきである。報告される情報の質を高めるため、大学の中央監査機能も積極的に関与すべきだ。そして情報を受け取る外部機関は、開示性と透明性を奨励し、独立した監視機関が不正の証拠として詳しく調べることができるよう、これらの情報をインターネットで開示すべきである。


監視

 他の組織同様、単により良い不正対策統制を敷くだけでは、十分な不正抑止にはならない。不正防止では、統制はそれを使用する人々と同程度にしか効果を発しないということが基礎となる。カンザス大学の不祥事から得られる教訓は、スポーツ学部は第三者による独立した監視が必要だということだ。

 ナイト委員会の報告書にあるように、直接監視できないという大学学長の心境が事実なら、大学は他の機関に監視を頼まなければならない。候補者としては、民間の大学認定機関、州高等教育委員会、または大学理事会が挙げられる。報告基準の改善に加えて、第三者による独立したレビューに移行することで、政治色の濃くなる大学学長の立場と、学部運営、資金調達、勝つスポーツプログラムといった競争から、このプロセスを取り除くことができるだろう。



カンザス大学のエピローグ (KU EPILOGUE)


 カンザス大学の不祥事が発生して以来、連邦と州当局は捜査を進め、本記事の出版時点では、7人が起訴、それぞれが有罪を認めている。

 チケット運営課長補佐ジェイソン・ジェフリーズは、不正行為1件の訴因について有罪を認め執行猶予2年、賠償5万6,000ドルの判決を受けた。

 販売・マーケティング課長補佐ブランドン・シモンズは、不正行為1件の訴因について有罪を認め執行猶予2年、賠償15万7,840ドルの判決を受けた。

 ジェフリーズとシモンズはともに早い段階から捜査に協力し、比較的軽い刑であった。

 スポーツ学部システムアナリスト、カシー・リーブシュ(Kassie Liebsch)は、有線通信不正行為の共謀1件の訴因について有罪を認め、懲役37ヵ月、賠償120万ドルの判決を受けた。リーブシュは2010年春の捜査では共謀者とは見なされなかった。彼女は2010年11月18日に起訴されるまでカンザス大学に勤務し続けた。

 スポーツ学部開発課長補佐ロドニー・ジョーンズは、有線通信不正行為の共謀1件の訴因について有罪を認め、懲役46ヵ月、賠償120万ドルの判決を受けた。

 スポーツ学部チケットオフィス課長シャーロット・ブルバーは、銀行不正の共謀1件の訴因について有罪を認め、懲役57ヵ月、賠償220万ドルの判決を受けた。

 カンザス大学のコンサルタントでシャーロット・ブルバーの夫、トム・ブルバーは、有線通信不正行為の共謀1件の訴因について有罪を認め、懲役46ヵ月、賠償約100万ドルの判決を受けた。

 スポーツ学部開発課長ベン・カートランドは、有線通信不正行為の共謀1件の訴因について有罪を認め、懲役57ヵ月、賠償約130万ドル(米国税庁に対して8万5,000ドル、カンザス大学スポーツ学部に対して残額)の判決を受けた。

 本不祥事が表に出た後、パーキンズスポーツ学部長は2011年9月の退職を発表したが、2010年9月7日に突然退職した。カンザス大学はその後新しい学部長を前任の約10%の給料で雇っている。

 2011年8月10日の法廷文書によると、これまでに米連邦検事事務所が共謀罪で有罪となった5人から回収したのは、わずか8万1,025ドルとなっている。

 「名声を築くには数多くの偉業が必要だがたった一つの悪い行いがそれを失わせる」とベン・フランクリン(Ben Franklin)が言ったように、損なわれた評判を回復するよりもカネを回収するほうが容易かもしれない。大学スポーツを支持する人々は、カンザス大学のチケット不祥事は職員による犯罪であって、大学スポーツの失態を代表するものではないと主張する。しかし、何百万ドルもの資金を創出し、これほど内部統制に欠ける事業は、不正を招くものなのだ。

 大学スポーツにおける効果的な統制には、なんとしてでも勝つという姿勢ではなく、学生の好成績を優先するなど、より幅広い社会的・文化的な変化が必要であろう。そうなるまで、不正対策の専門家ができる最善の手立ては、大学が目標達成に向けた努力に見合うだけの収益を全スポーツイベントから確実に得られるよう手助けすることである。



ハーバート・スナイダー (Herbert Snyder, Ph.D., CFE)
ファーゴにあるノースダコタ州立大学(North Dakota State University)の会計、財務、情報システム学部の会計学の教授。
デービッド・オブライアン (David O’Bryan, Ph.D., CPA, CFE, CMA)
(カンザス州)ピッツバーグ州立大学(Pittsburg State University)の経営学部、会計、コンピュータ情報システム学科の教授。


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