女性およびマイノリティが経営する企業を取り巻く不正
Fraud Involving Businesses Owned by Women & Minorities
性別と人種を売り物にする不正行為とは
VENDING GENDER AND RACE TO DEFRAUD

アリソン・K.ヒメネス ACFE会員
Alison K. Jimenez, Associate Member



 政府機関と企業は、女性およびマイノリティが経営する企業(A women/minority business enterprise 以下W/MBE)が他企業と競合し、契約を獲得できるようチャンスを提供している。しかし規制や多様性に関わる政策を悪用し、不正犯罪者たちが不当に利益を得るような状況がある。ここでは、自分たちの会社を不正から守り、納税者・企業・本当のW/MBEから詐取しようとする計略をいかに抑止し、見抜くことができるかについて学んでいく。


 ナンシーは、この仕事を政府との契約という実入りの良いビジネス世界に入るための大きな突破口だと考えていた。小規模な鉄鋼製造会社の社長として、ABC建設の社長から電話を受けたとき彼女の胸はおどっていた。ABC建設はコンベンション・センターの建設契約を勝ち取っていた会社だった。落札した際、ABC社は仕事の25%を女性およびマイノリティが経営する企業へ下請けに出すと公約していた。ナンシーは、自社を女性経営企業として市に登録していたので、ABC社がリストから彼女の会社を見つけたのだった。しかし自社で契約業務は遂行するので、代わりに彼女には2%の手数料を支払うとABC社から告げられたとき、始めに感じた興奮は落胆へと変化してしまった。ABC社は不正な請求書を市に提出しようと目論んでいたのだった。ナンシーの千載一遇のチャンスはほどなくして、不正と訴訟という悪夢へと変わっていった。

 様々な要素が絡み合った上記のケースは、女性およびマイノリティ企業を取り巻く契約に不正が結びついたときにどのようなことが起こるか、ということを明らかにしている。



W/MBEとは? (WHAT IS A W/MBE?)


 女性およびマイノリティが経営する企業(A women/minority business enterprise、以下W/MBE)は、少なくともその51パーセントが一名以上の多様な集団に属する人々によって所有・管理・運営されている企業、と定義される。(例:アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、アメリカ先住民、女性など)政府や企業がW/MBEをサプライヤー・ルートに統合しようと模索する際、「サプライヤーの多様性」(“supplier diversity”)や「ベンダーの多様性」(“vendor diversity”)という用語が使用される。ここ20年間、サプライヤーの多様性への関心が着実に増加してきている。米国の購買専門誌『Purchasing magazine』(2006年11月2日号)によると、マイノリティが経営する企業に対する、購買消費金額は1994年の273億円から2004年の874億円に増加している。

 W/MBEとしての資格について、一般的に決められた基準は存在するが、資格認定・証明のプロセスに関してはW/MBEとビジネスを行う事業体によってかなり相違がある。公的部門においては、通常、行政管轄地域ごとに独自の資格認定プロセスを持ち合わせている。例えば、ある市ではW/MBEであるためには、企業が女性またはマイノリティに経営されていると書かれた公的証書の提出のみを求められるかもしれない。一方、ある州では詳細な銀行記録、法人設立時に係わる書類、写真付き身分証明書の提出を要求するかもしれない。ときには、同じ管轄地域内でも、省庁ごとに基準や事務手続きに差異が見られる。

 多くの公的機関は、女性およびマイノリティが経営する企業の契約案件への参画の数値目標を設定している。例えば、メリーランド州ではマイノリィ企業参画の目標値は25%で、うち10%は女性、7%はアフリカ系アメリカ人が占めることとしている。

 民間企業もまた、包括的なベンダーの多様性を目標として設定している。 例えば、ゼネラル・モーターズ社(General Motors)は、全体としてマイノリティ企業からの購買率を10%に上げることを企業目標としている。自社のサプライヤーに対しても、少なくとも購買の8%は認定されたマイノリティ企業が占めること、という点まで要求している。

 ひとつのW/MBEが資格認定までに必要な書類の作成に要する時間と労力の影響で、申請者向けに書類の取りまとめをする業界が生まれた。W/MBEは第三者機関によって認定を受けることも多くある。例としては全米女性経営者企業評議会(the Women’s Business Enterprise National Council  以下WBENC)や全米マイノリティ・サプライヤー開発評議会(the National Minority Supplier Development Council 以下NMSDC)が挙げられる。

 WBENCのマーケティング・コミュニケーション部門ディレクターのケイト・クリスマン(Kate Chrisman)はこう述べる。「多様性プログラムを行うフォーチュン1000社の大企業は、W/MBEが購買市場に参入できるプロセスへの支援を提供しています。W/MBEは資格認定制度によって、入札情報を入手する場を提供されます。女性およびマイノリティ企業の経営者は、W/MBE認定が他社より優位に立つ強みだと見ています。多様性に係わるサプライヤーであるという位置付けは、通常なら利用できないであろう門戸をW/MBEに開いているのかもしれません」



どのような不正が起こるのか? (WHAT TYPES OF FRAUD OCCUR?)


 サプライヤーの多様性市場では様々なタイプの不正が発生する。ケイト・クリスマンは、「大規模な契約が目の前にぶら下がっている場合、サプライヤーたちは受注するためにはどんなことでもしようとする」と述べる。

名前による策略 名前にはどんな意味があるか? 適当な動機があれば、金儲けのために巧妙なごまかしを企てることが可能である。

 アシュレイ・ヒメネス(Ashley Jimenez)という名前は、ヒスパニック系の女性に思えるかもれしない。もし、購買会社が名前の確認と公正証書の提出しか要求しなかったとしたら、アシュレイはまんまと自社をW/MBEとして登録することが可能であろう。しかし出生証明書のコピーを要求するなど、ほんの少し厳密な調査をすれば、アシュレイは母親の再婚時に継父の姓をとった白人男性だということに気づくであろう。

名目上のオーナー 法人設立時の書類や当座預金口座などの紛らわしい書類の存在によって、真実のオーナーの実体は覆い隠されてしまう。

 パトリシア・ダフ(Patricia Duff)は多忙な女性であった。彼女はシカゴ市やリサイクルセンターとサービス契約を締結していた清掃会社のオーナーであり、また同市や他の民間企業と運搬作業サービス契約を結んでいたトラック運送会社のオーナーであったと主張していた。彼女の会社は1億米ドル以上のマイノリティ企業の特定契約を付与されていた。唯一問題だったのは、彼女の息子パトリックが実際のオーナーであり、会社の経営者だったことである。米国司法省(the U.S. Department of Justice)によると、米連邦検事事務所(the U.S. Attorney’s office)はパトリック・ダフ(Patrick Duff)を恐喝、6件のマネーロンダリング、3件の電子送金詐欺そして契約詐欺と別の保険詐欺に関連する19件の郵便詐欺で起訴した。

 75歳のパトリシア・ダフは、契約に係わる11件の不正行為に関連する郵便詐欺で起訴された。パトリックは罪状を認め、懲役10年と2,200万米ドル以上の罰金刑に処された。その罰金額のうち、1,090万米ドルが女性およびマイノリティが経営する企業の契約を支援する資金としてシカゴ市に納められることになった。パトリシアは公判に耐えられる健康状態ではないとみなされ、パトリックが管理していた複数の会社において名目上マイノリティとされていた共犯者であるウィリアム・ストラットン(William Stratton)が懲役70ヶ月の判決を受け、700万米ドル以上の返還を命じられた。

 女性経営企業の資格認定の適法性につい初めて疑問が呈されたのは1991年だった。その年、清掃会社の実際の管理者はパトリックだという趣旨の手紙がある競合会社から市に送られてきた。しかし、シカゴ・トリビューン誌(the Chicago Tribune)が会社の資格適合性について疑問視する一連の記事を掲載したことに端を発したシカゴ市の5ヶ月間の調査を経るまで、その会社の資格は取り消されなかった。さらに、連邦政府の調査ではそれから4年後に始めて不正が認識された。恐らく、当初からCFEが調査に加わっていれば、不正行為はもっと早い段階で見つかっていただろう。

トンネル会社 この手口は、この記事冒頭の製鉄会社の例と類似している。このパターンでは女性およびマイノリティが経営する企業が関与するかもしれないが、実際、仕事は行わない。W/MBEは通常入札額の何%かを受取り、受注した仕事を別の会社にまわす。契約を獲得するための類似の不正においては、企業は実質的には事業を行っていないトンネル会社を使い、受注業務を別の会社へ受け渡す。

 対応能力を超えた大型案件を勝ち取ってしまったがために、トンネル会社となってしまうW/MBEもある。会社の清算、倒産もしくは契約内容の不履行に陥るくらいなら、むしろW/MBEでない企業に契約を売却してしまう企業もある。一方、競争力を維持するために不正を犯してしまう企業もある。調査機関によれば、不正に対する罰則が甘いとき、誠実なW/MBEもまたトンネル会社同様の役割を果たしていたことが明らかにされている。

 多様性に係わるサプライヤーの契約獲得競争の場におけるずさんな監視体制が、賄賂・腐敗・キックバック・組織犯罪の温床を作りだすことがある。米国司法省はシーメンス・メディカル・ソリューションズUSA社(Siemens Medical Solutions USA)と2名の従業員、2社の合弁会社を起訴した。シーメンス社が、イリノイ州クック郡における放射線装置納入に関する契約を獲得するために、あるマイノリティ企業と共同で偽りの合弁会社を設立したという訴えであった。また、マイノリティ企業のオーナーたちもクック郡の契約履行担当行政官に対して、2万米ドルの贈賄を行ったとして起訴された。他の関係者たちは郵便詐欺、電子送金詐欺、偽証罪で告発された。シーメンス・メディカル社は、司法取引に同意し、司法妨害の一訴因の罪状を認め、100万米ドルの罰金を科され、150万米ドルの返還を命じられた。シーメンスの2人の幹部社員が罪状を認め、FBIの調査に対し虚偽の発言をしたことも認めた。彼らは現在判決を待っている状況だ。

 行政機関と民間企業もまた、実際より多くの数のW/MBEとビジネスを行っているという不正な主張をする可能性もある。行政機関は多様性に係る目標値を達成しなければならない政治的圧力を感じている。実際、資格認定時に各行政機関ごとのガイドラインを順守していなかったり、多様性のあるサプライヤーに対する支払い額を過大計上していた行政機関の例も数多くある。例えば、連邦政府ガイドラインによると、W/MBE企業が仕事を下請けした際、実際にそれら企業が受領し、得た支払い額に限って参画目標値に加算できると明示してある。冒頭のコンベンション・センターの例では、W/MBEは仲介料として何千米ドルしか得てないにもかかわらず、市は、白人男性が経営する会社に渡った何百万米ドルの支払い額の全額を目標値に計上していた。

 米司法省監察総監室(The Office of the Inspector General)は国郵便公社(the United States Postal Service)のサプライヤーに関する多様性プログラムを1999年に監査し、「1999年の会計年度におけるサプライヤー多様性に関する統計では、小規模・マイノリティ・女性が経営する企業に対して付与された金額は過大計上されており、また業務委託に関する統計値には裏付けが無く信憑性を確認できないため、信頼性があるといえない」と結論付けている。また、監査では、マイノリティとの契約の48%とW/MBEとの取引案件の31%は不正確で根拠が無いとしている。

 監査では、W/MBEのステイタスに関する裏付けのない申請が発見された。その中には、後に取消、減額されたにもかかわらず元の契約額のまま申請されたものや、実際の発注額ではなく、「基本価格協定」(“basic pricing agreement”)にもとづく発注見積額の最大値で申請するなどの適格期間を超過した契約額による申請も含まれていた。



被害をこうむるのは誰なのか? (WHO GETS HURT?)


 公共部門の契約でのW/MBE関連の不正では、納税者が被害をこうむる。納税者は不要な税金を支払うことになり、行政サービスや公共事業の質の低下に悩まされることになるであろう。虚偽の資格証明書を入手する行為は、不正体質のW/MBEにとって始めの一歩にすぎない。コストの値上がりを最終消費者に転嫁する「パススルー(“pass-through”)」方式の手口によって、不正なW/MBEが手にした手数料が政府に転嫁され、結果コストが増加する。

 WBENCのケイト・クリスマンは、昨今における連邦政府のWBENCへの関与について言及する。「これまでに女性経営企業への登録申請を却下した企業のファイルの提出をFBIから要請されました。湾岸地域における連邦政府との契約の多くが、ハリケーン・カトリーナ後、女性企業に付与されていたため、FBIはそれらの企業が本当に女性経営企業か否かを確認したかったのです。FBIはこのことが広報面において、悪夢になる可能性を認識していたのです」

 W/MBEに関連する不正犯罪者たちの行為により、企業は風評被害をこうむったり、W/MBEをベンダーとして使用すると契約書が明記していた場合は契約不履行による訴訟にさらされ、損害を受ける可能性がある。民間企業がしばしば、網羅的なベンダー基盤を利用するという目標を設定するのは、そのような多様性が自分たちのビジネス機会を増加させると感じているからである。これが民間企業の目標だとしたら、不正なW/MBEは阻害要因となっているだろう。

 恐らく、本当のW/MBEが、誰よりも偽者の影響を直接的に受けている。先述の製鉄会社や放射線装置契約のケースでは、本当のW/MBEは契約獲得の機会から締め出されていた。イリノイ州北地区の米国弁護士であるパトリック・J.・フィッツジェラルド(Patrick J. Fitzgerald)は述べる。「偽者のジョイント・ベンチャーは、合法的なマイノリィ企業が契約を獲得するための公平な活動の場を奪っています」



W/MBEに係わる不正を検知するには (W/MBE FRAUD DETECTION)


 資格認定されているが不誠実であるW/MBEの不正行為は、大規模な詐欺の一部として検知されることが多い。契約に対する従来型の監査や不正検知ツールを使うことにより、警告を発することができるだろう。曖昧な内容のインボイス・一定しない住所・超過請求などの契約に係わる赤信号が、もし登録されたW/MBE企業で発見されたら、資格認定の合法性を調査するべきである。

 通報者によりW/MBEの不正が発覚することもよくある。 製鉄会社のケースでは、ナンシーは不正行為を市に報告し、RICO(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act)法における連邦民事訴訟を提起した。同様に、放射線装置のトンネル会社の詐欺行為は、同プロジェクト入札での競合者によって発見され、同様に起訴された。メリーランド州はW/MBEに係わる不正の通報に専用のフリーダイヤルを設置した。一般的な通報ホットラインを設置している企業や政府では、そのホットラインでW/MBEに関する不正の通報も受け付けることを告知できる。

 もし、資格認定の申請書類が疑わしければ、オーナーが日々の業務運営を行えるだけの知識と能力があるか、所有権に見合う程度の利益に係わるリスクを共有しているか、会計帳簿に対して業務管理や署名の管理を行っているかを判断すべきである。

 疑わしい企業に対しては徹底的な企業調査を実行する。法人設立時の申請書類や訴訟記録など公的な記録を検査する。別の認定されてない会社と住所が一致していないかを確認する。会社の住所記録と、マイノリティに所有されてない会社、もしくは親戚に所有されている会社(例:夫、兄弟、息子)の住所を照合する。インターネットや商工名鑑で検索し、参照情報を確認する。いかなる証明書に対しても裏付けを取る。他の行政機関がその企業を認定しているか、その企業は認定を却下されたことがあるか、もしくは認定を無効にされたことがあるかを確認する。これらが不正の発見方法として挙げられるだろう。



W/MBEに係わる不正を抑止するためには (DETERRING W/MBE FRAUD)


 経済研究センター(the Center for Economic Studies)の研究者であるティモシー・ベイト(Timothy Bates)とダレル・ウィリアム(Darrell William)は、不正行為を厳格に罰することによってW/MBEトンネル会社の存在を減少させることが可能だとしている。ペンシルバニア州のようないくつかの法定管轄地域においては、W/MBEを法的に罰することができ、民事罰を加えた厳しい規則を制定した。連邦法に基づく犯罪では通常、マネーロンダリング・電子送金詐欺・郵便詐欺罪として訴追される。

 当然ながら、W/MBEに係わる不正を抑制するために有効な手段は、初期段階でW/MBEではない企業が資格認定されるのを防止することである。大半の民間企業は、徹底的かつ標準化された査定を実施するために第三者認定機関に頼ってきた。 例えば、WBENCによる認定要件には、定期的な現場への訪問、従業員への面接、オーナーとされる人物が事業に出資をしているか否かを立証するための、支払済み小切手やローン関連書類のチェックなどがある。

 しかしなお、多くの行政管轄区域がW/MBEの資格を独自で検証している。『Governing Magazine(2005年7月号)』の記事「あとまわし症候群(“The Set Aside Syndrome”)」の筆者であるザック・パットン(Zach Patton)は偽りのマイノリティ企業がはびこる最大の原因は、「W/MBEのプログラムを監督するスタッフが不足している」ことである、と述べている。

 行政機関の全てが生ぬるいと言っているわけではない。例えば、契約が付与されたあと、メリーランド州の運輸局(the Maryland Department of Transportation)のW/MBE担当スタッフは、下請け会社の会計報告書をチェックしたり、現場に赴き実際の業務がW/MBEによって遂行されているかを検証している。同州はまた、もし契約者がW/MBEプログラムを悪用していると判明した場合、漸増的な行政処分を行っている。この処分には業務の停止、契約支払額の何%かの没収、契約無効、および/もしくは検事当局への犯罪調査の照会などが含まれる。

 W/MBEに絡む不正犯罪者たちは、ほとんど精査されず手ぬるい監視を受けている多様性に係わるサプライヤー契約を見つけ出し、最も障害が少ない抜け道を探し求めている。偽者たちは、会社の本当の所有権を偽ることによって、政府や企業との契約を獲得している。サプライヤーの多様性に関する不正は、強行法規や民事処罰、 厳格な資格認定プロセス、そして通報者に情報提供を促すことによって防止することが可能である。

 サプライヤーの多様性に関する不正は、実質的には購買に関する不正の一種である。CFEであるトーマス・コールフィールド(Thomas Caulfield)は、第15回ACFE年次総会での不正対策セミナー(15th Annual ACFE Fraud Conference seminar)において、購買に係わる不正について語っている。「公益の保護:政府における不正」(“Protecting the Public Interest: Fraud in the Government”)(www.ACFE.com/documents/coursematerial/15thannual/Caulfield.pdf)を参照のこと。

 コールフィールドは、購買に関する不正とは、不正犯罪者を不適切に潤すように計略されており、悪意と偽装を含む、意図的な虚偽の陳述・記載であり、他者を抜きん出て、不当に有利な立場を得るように仕組まれるもの、と記述している。

 彼は、CFEが資格認定や購買の領域で働く関係者たちに不正の種類や手口を教えることができ、さらに、CFEは不正防止に役立つような政策や管理体制を構築するための支援ができる能力がある、とも述べている。防止策には契約を構造化することが含まれている。その結果、下請け会社であるW/MBEは、企業から(契約の主体となった会社からでなく)直接支払いを受けられる。また大規模な契約を細かく分割すれば、小規模な会社も契約獲得のチャンスが増え、パススルー手口に頼る誘因も減少する。認定ガイドラインが順守されているか、多様性プログラムに関連する出費が適切に記録されているかどうかを確実にするためにサプライヤーの多様性に係わるプログラムを監査すべきである。監査の公示は、不正犯罪者への抑止力となるだろう。

 CFEは、オーナーとされる人物が企業を運営するための知識や力量を備えているか、また実際のオーナーなのか、もしくは表向きの代表者なのかを判別する作業を支援できる。契約の締結後に疑惑が生じた場合、CFEはインボイスに記載されている住所がベンダーの住所と一致しているかを調査することができる。また、CFEは、不正疑惑の渦中にあるW/MBEが、購買担当者や主となる契約者と共謀していたかどうかを調査することもできる。

 W/MBEに絡む不正は、企業オーナー・企業・政府や社会に対して悪影響を及ぼす。サプライヤー多様性プログラムの関係者、購買担当者、監査人、CFEによる絶え間ない努力を通じて、多くのW/MBEに係わる不正の防止、発見が可能となる。



アリソン・K. ヒメネス(Alison K. Jimenez、ACFE会員)は,フロリダ州タンパにあるダイナミック・セキュリティーズ・アナリティク社(Dynamic Securities Analytics)の代表取締役である。



女性やマイノリティが経営する企業(W/MBE)に絡む不正防止の最善策

政府機関がなすべきこと:
●W/MBE関係の不正に対し、重い刑事罰か民事処罰を与える。
●第三者的な許認可機関か、適正な許認可部門スタッフの活用を考慮する。
●許認可が、毎年自動的に更新されるのを認めない。
小規模のW/MBEが参加できるよう、大きな契約を個別契約に分ける。
そして
認証ガイドラインが遵守されているか、そしてW/MBEによる購買の正しい金額が記録されているか裏付けを取るため、サプライヤー多様性プログラム(Supplier Diversity Programs)を監査する。

契約を結ぶ企業がなすべきこと:
W/MBEが契約業務を行うことを証明する文書を要請する、そして民事処罰を持ってその契約業務の遂行を確実にする。
大きな契約を小規模企業に与える際、その企業が契約を履行できるように早期支払いや低金利ローンなどの支援を提供する、もしくは、大きな契約を小さいセクションに分割する。

不正検査士がなすべきこと:
●定期的に立ち入り検査を行う。
●内部通報ホットラインを立ち上げる。



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