(2015年9月)
記帳代行の概念が変わった! 「バッチ処理」から「リアルタイム処理」へ これまでの会計事務所のビジネスモデルは完全に変わる─。 加速度をつけて進むクラウドによって、会計事務所のビジネスモデルに変化が起きている。旧態依然としたビジネスを続けていると、いつの間にか時代に取り残され、淘汰の波にさらわれてしまうだろう。 特集「会計事務所ビジネスモデルの変革」第2回のテーマは「記帳代行」。クラウドの普及によって、記帳代行の概念そのものが変わろうとしているのだ。 リアルタイムの「日次決算」で倒産を防げる クラウドの目まぐるしい進化で、記帳代行に対する概念やイメージが180度変わろうとしている。大きな違いは「バッチ処理」から「リアルタイム処理」への変化である。 ご存知の通り、バッチ処理とは一定期間のデータを集め、一括処理を行う方式。会計事務所なら、顧問先から預かった証憑をまとめて入力し、月に1回データのやり取りをすることになる。一方、リアルタイム処理では、会計事務所と顧問先の双方が対話的にデータを更新し、その場で内容を確認できる。まさに「日次決算」が実現するのだ。 たとえば、個人ならば銀行の預金残高やクレジットカードの支払い額など、現在ではパソコンやスマートフォンでリアルタイムに知ることが可能だ。どのくらいの収入があり、どのくらいの支出があるかは、簡単に把握することができる。 しかし、会社の場合どうだろうか。会社にどれくらいキャッシュがあるのかなどを知るのには一定の時間を要し、リアルタイムで知ることは、ほぼ不可能である。極端なことを言うと、会計事務所が来るまでの1ヵ月間、経営数字は闇の中に葬られ、会社は手探りで経営をしなければならないことになる。 「経営の見える化」という言葉が叫ばれるなか、会計に関しては、依然とブラックボックスに入ったままなのだ。 すでに米国ではクラウドを積極的に活用している会計事務所も目立つ。リアルタイムで処理された経営数値を、クライアントと会計事務所の双方が把握。経営者はダッシュボードに記された「日次決算」の数値を見て、瞬時に経営判断を下すことができ、本業に集中できる。これは中小企業にとって何物にも代えがたい価値ではないだろうか。 中小企業が自社の数字をリアルタイムで分かるようになるとどうなるか。キャッシュフローを把握でき、倒産リスクを小さくできる。企業は赤字になっても潰れないが、黒字でもキャッシュがなければ倒産する。中小企業の社長は、売上については頭の中で把握しているものの、支出の詳細までは意外と分からない場合が多い。だから、いつまでにどれだけ支出があるのか理解できず、目の前のキャッシュがなくなり、倒産へと追い込まれてしまう。 クラウドによるリアルタイムの「日次決算」は、企業を倒産から守るのに大いに役立つのだ。 また、経理サポートはクラウドでどうなるか。従来は会計事務所が月に一度、顧問先を訪問してチェックしていた。しかし、クラウドではリアルタイムでサポートが可能になる。 月次監査のやり方も変わってくる。従来は顧問先に訪問して照合作業を行い、紙ベースの帳票を渡す。これがクラウドによってどうなるか。クラウド上で伝票と仕訳の連動によるリアルタイムでの確認が可能。経営状況がダッシュボードで適時閲覧できるようになる。もはや「月次監査」という概念が過去の話になるのだ。 台帳管理の煩わしい作業から顧問先を解放させよう クラウドで大きく変わることといえば「台帳」も見逃せない。 もともと台帳管理は会計事務所の仕事領域ではない。しかし、顧問先企業は得意先台帳や仕入先台帳、預金台帳など、数々の台帳を持ち、個別に手作業で照合を行う。売掛金の消し込み作業などは煩雑で、担当者は日夜苦労している。 会計事務所は、顧問先が照合作業を終えたデータを基に試算表を作成する。よって、顧問先が台帳管理にさんざん苦労していることについて、あまり理解していないケースがあるという。 クラウドでは、この台帳管理までサポートできる。米国では売掛金等の消し込みをクラウド上にてゲーム感覚で行っている。担当者が移動中にスマートフォンで、ゲームをするかのように楽しみながら消し込み作業を行っているのだ。 日本でも近いうちに、通勤電車の中やカフェの店内などで、経理担当者がスマートフォンで消し込み作業をするという光景を目にするものと思われる。顧問先を台帳管理の苦労から解放させるため、会計事務所はいち早くクラウドを導入しなければならない。 |