会計事務所経営に役立つ情報
(2017年3月)

2020年ごろに「団塊経営者」の大量引退期が到来!
事業承継の提案は「きっかけ」が大事

 中小企業庁の「中小企業の事業承継に関するアンケート調査」によると、経営者の平均引退年齢は、中規模企業で67.7歳、小規模事業者では70.5歳となっている。東京五輪が開催される2020年には数十万人の「団塊経営者」が引退時期を迎える。まさに事業承継のピークを迎えるのだ。

なぜ、業績が良くて将来性があっても、廃業するのか?

 中小企業経営者にとって事業承継は、最後の一大プロジェクトであり、難易度は高い。だから、なかなか着手する気にならない。そして、「子供が継がない」「後継者が見つからない」「商売の先行きが不透明」などの理由をつけて、自分の代で断念しようとするケースは少なくない。

 それを裏付ける統計がある。60歳以上の経営者の企業は50%が廃業を予定している。特に個人事業者においては、約7割が「自分の代で事業をやめるつもり」と回答している。しかし、60歳以上の経営者の企業で廃業予定企業の業績は芳しくないが、それでも3割は良い業績を残しているのだ。

 グラフ3はグラフ2同様の母集団による「今後10年間の事業の将来性」について後継者の決定状況別に示している。こちらも廃業予定企業のうち4割は、今後10年間の事業について成長もしくは現状維持が可能と回答しているのだ。

 同業他社と比べて業績が良く、事業の将来性があっても、経営者が事業承継を選択せず、廃業を決断することは、雇用や技術、ノウハウの消失につながる。これは税理士としても見過ごすわけにはいかない。

 法政大学院中小企業研究所・エヌエヌ生命保険による「中堅・中小企業の事業承継に関する調査研究」(2015年4月)によると、後継者問題の相談相手(複数回答)として「顧問税理士・公認会計士」を挙げた回答は28.1%に上った。これは最多回答の「特に相談相手はいない」36.5%に次ぐもので、実質的には顧問の会計人が事業承継問題の相談相手と目されている。会計人こそが、事業承継問題の掘り起こしをする必要があるのだ。

事業承継問題の掘り起こしにはセミナー開催が効果的

 事業承継問題の掘り起こしには、セミナーが効果的。会計事務所が経営者向けに事業承継に関するセミナーを開催することで、事業承継対策の必要性への気づきを与えられる。しかし、経営者をその気にさせるには工夫が必要だ。その手法のひとつに、戦国大名の実際の事業承継事例を切り口にすることが挙げられる。

 事業承継が大変なことは、昔も今も変わらない。特に戦国大名の場合、事業承継の失敗で家の滅亡や縮小を強いられた例が多々あるものだ。歴史上の事業承継失敗事例が残した教訓は、現代の中小企業の事業承継にも十分に活用できる内容でもある。歴史上のエピソードを交えると、セミナー参加者は話を身近に感じ、事業承継に向けてやるべきこと、やってはいけないことがイメージできるのではないだろうか。


戦国大名に学ぶ相続・事業承継セミナー