(2016年1月)
「システマチックな評価」と「問診票によるアナログ面談」の ハイブリッド対応 会計事務所の商品とは、人材そのもの。どんなに潜在能力がある人材を採用できても、能力や実績に報いる給与・評価のシステムが整っていないと、定着しません。これからの時代、会計事務所が生き残るには、人材を引き付け、定着・成長させるための給与システムが不可欠です。今回は税理士法人斎藤会計事務所の事例を紹介します。 独自の給与・評価制度を活用している、松本税務会計事務所の事例を紹介します。 なぜ、あの会計事務所は良い人材が育つのか? ─御社の給与システムの概要を教えてください。 斎藤氏: 担当売上の労働分配率を計算したものと、事務所で定めた評価システムを合わせ、毎年6月の給与改定前に、社員に問診票を書いてもらい、その内容を踏まえた評価面談の結果を加味して、最終的に私が決めていきます。 当社の給与システムは「頑張った人が報われる」仕組みを心掛けております。そして、業績アップが前提にあります。なので、業務内容が固定化されていて、高い顧問料でルーチンワークになっている事務所さんには合わないと思いますね。 ─以前からこの方法だったのですか? 斎藤氏: 事務所をつくって、人数が3、4人体制までは自分が見て決めていました。10人体制くらいになると、リーダーの下のメンバーまで個人の仕事のスキルが見えにくくなり、評価に客観性が欲しくなりました。また、統一した評価基準がないと、格差が生じて不満が出てきそうだったので、10年ほど前から改善を続け、5、6年前に新しいルールで評価を行うようになりました。 ─新しい評価制度はどのような内容なのですか? 斎藤氏: 通常業務の評価基準として、入力業務、記帳業務、自計化指導、月次業務などの具体的業務内容について、できる場合に◯をつけ、具体例を面談でヒアリングします。そして、ステップアップ業務の評価基準として、会社設立、保険の提案、経営計画、節税診断など、ステップアップに必要な業務ができるか、シートに◯をつけてもらいます。さらに、定性分析の評価基準として、大きな声であいさつができる、責任感がある、みんなをまとめる力があるなど、定性面で評価をしてもらいます。これを本人、上司、私が評価します。 ─問診票(面談事前確認票)について、詳しく教えてください。 斎藤氏: 当社は6月に給与を改訂します。その前の4月あたりから、社員に問診票(面談事前確認票)の提出をお願いします。経営理念についてどう考えているか、担当数や担当先との関係、仕事の内容やモチベーション、残業時間、現在の待遇と仕事のバランス、給与体系の意見、事務所への要望などをしっかり書いてもらいます。 そして、問診票をベースにして私と個別に面談します。その結果を踏まえて、給与を決めていきます。 ─最後にメッセージをお願いします。 斎藤氏: 給与システムは、1回つくったら固定化していいものではありません。事務所の人数増加や方針転換、客層の変化などを勘案し、適合しない箇所があれば、工夫して変えていく必要があるでしょう。 しかし、改善するといっても、急激に違うシステムに変えてはいけません。社員が動揺してしまいますから。変化はあくまでもゆるく、いい方向に改善を重ねていくことが大切ではないのでしょうか。 |